8/27 緩和ケア病棟で初めての夏祭りを開催しました。

患者さんやご家族さん、ボランティアさんなどたくさんの方の参加がありました。

看護師は浴衣を着てお祭り気分を盛り上げます。

 

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まず、ボランティアさんによるオカリナの演奏です。やわらかい音色が響きました。ほかには、インドネシアの楽器や鈴、カスタネット、太鼓などで曲に合わせてみんなで演奏したり、「神戸まつり」や「夏の思い出」を合唱したり。最後はみんなで手をつなぎ、「ふるさと」を歌いました。

 

つぎは、緩和ケア病棟で恒例のM先生のマジックショーです。みなさんに、プログラムをわたしたときから「先生が手品するの?」と興味津々。

今回は、スリルのあるマジックでした。先生の首に包帯を巻き、左右から看護師が思いっきりひっぱります。先生の首がしまらないか、ハラハラドキドキ・・・結果は成功?先生はもちろん無事。ホッとしました。

ほかには、タオルの上に置いた500円玉が一瞬のうちに消えてしまい、先生のズボンのポケットに移動したマジックもありました。患者さんからお借りした500円玉がきちんと戻ってきて、一安心。

 

「夏祭り」といえば、スイカ割り、金魚すくいです。

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大きいスイカを、みんなで割ってもらい、おやつに食べていただきました。「おいしかった」とみなさん笑顔でした。

金魚は、磁石をつけた釣竿で、たらいに泳いでいる、いろんな色の大きな金魚を釣り上げてもらいます。大物狙いの患者さんもおられました。みなさんが、釣り上げることができました。

 

オカリナ演奏では、ご家族の方が感動し涙されたり、金魚すくいでは、思わず身を乗り出して釣り上げたり。いつもは、ベットで休まれている患者さんが、車椅子に乗って参加されたり。夏の思い出のひとつとなったのではないでしょうか。

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これからも、患者さん、ご家族さんが季節感を感じていただき、楽しい思い出になる時間をすごしていただけるように、ボランティアさんとともに活動していきたいと思います。

 

 

――夏祭りを企画・運営してもらった看護師さんからの報告でした

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土曜日の静かな午後

待望のひなちゃんが面会にきてくれました!!

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最初はうれしくて興奮状態でした

ベッドの上を走り回ります

とっても愛らしい子です

患者さんも普段はしんどそうにされていますが、この日ばかりは笑顔

ご家族も笑顔

見に来た看護師さんも笑顔

…です

みんなのとってもいい顔の写真が撮れました

看護師さんが部屋に飾ってくれました

 

病棟がオープンしてペットの面会は今回で“ふたりめ”

さらにつぎの患者さんからの希望も聞いています

 

とてもかわいい姿を見て、看護師さんは「病棟でも飼いましょう」

つい「うん」と言いそうになりましたが、待て待て、そこはやはり・・・

 

また現在「アニマルセラピー」も検討されています

さてこれからどうなることやら

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でもほんとにかわいいですね

 

 

入院患者さんがお亡くなりになる時間は様々です

ときには真夜中ということも少なくありません

予測されていることもあれば、急な連絡がはいることもあります

できるだけ最期の看取りはさせていただきたいと思い、体の許す限り病院に出向くようにしているのですが、どうしても起きることが難しい日もあり、そのようなときには申し訳ないのですが当直の先生にお願いをしています

幸いといっていいのかわかりませんが、自宅は病院から自転車で7~8分のところにありますので駆けつけることはそれほど苦ではありません

深夜の街中を自転車で走っているといろんなことに気づかされます

少し不謹慎な話になるかもしれませんが感じたことを書いてみました

春の夜

どこからともなく沈丁花の香りが漂ってきます

そして、桜が咲き始めたころの雰囲気はなんともいえません

満開のときや散っていくときよりも大好きです

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時には酔っぱらいのおじさんにも出会います

日中は猛暑日でも、真夜中は風が吹くと意外と涼しいものだということに気が付きました

でも暑さは苦手です

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病院の屋上から花火が見えるのもこの季節のいいところです

途中に公園があるのですが、夏休みとあって中学生たちが10人ほど集まっている所に出会いました

深夜に何をしているんだろう・・・?

 

秋の夜長

好みの作家のミステリを遅くまで読んでしまい、寝付いたところに電話

一番睡眠不足になりやすい季節です

でも夜に自転車を走らせるには一番です

ときには台風の日ということもあります

そんなときには思い切って自動車ででかけます

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真冬の夜はとてもつらいです

マフラーを巻いて、手袋をして、コートを着込んで

ペダルを漕ぐ足も重くなります

付き添われているご家族も大変だろうなと思いを馳せながら急ぎます

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卒業して研修医として就職したころ

受け持ちの患者さんが悪くなったとき

家に帰ると心配で何日も病院に泊まり込むことがありました

そのときの初心にかえりながら… と思うのですが、いつの間にか年齢を重ねていき、20歳代のときのようなことはできなくなりました

でも気持ちだけはそのときにもどりながら、今日の早朝も自転車を走らせました

けれどあまりに急ぎすぎたため、とうとうチェーンが外れてしまい、結局は自転車を押しながら病院に到着です

仕事の帰りに修理に行かなければ……

 

 

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おいしそうなケーキです

「パパおたんじょうびおめでとう」の文字

そして“8”の数字がふたつ

 

これは入院されている患者さんのご主人の誕生日をお祝いするケーキです

 

サプライズで準備しました! とご家族

私たちもお祝いに参加です

お父さんの驚く写真をと頼まれました

 

ご夫婦仲良く顔をくっつけて写真におさまります

ご家族もごいっしょに

 

残念ながら「顔出しはご法度」ということで、ケーキだけの登場です

 

患者さんは何度も悪くなられては持ち直されるという状態を繰り返しています

でも、この日はいつにも増して特別の笑顔でした

 

カルテから最近のご主人の言葉を拾い上げてみました

 

「結婚記念日に家族から写真を撮ってもらってうれしかった。記念日に離れて過ごすことは人生で初めてのこと。家にいても話し相手がいなくて寂しい」

「これまでの生活色々とあったけど、二人で相談しながらやってきました」

「ママは前向きの性格で、そのことに救われました」

「自分も年を取り、できないことが増えて息子たちに頼りっぱなしです」

・・・ご家族間ではメールでやり取りをされているとのことでした

 

―家族関係をしっかりと築いてこられ、患者さんのことも大切にされていることがひしひしと伝わってきました

でも寂しさもポリポツリと話されました―(臨床心理士の記録から)

 

・・・病状が悪くなってきたときの面談にて

「富士山で言うと5合目というところでしょうか?」

 

「寝ていることが多くなって、息の仕方もしんどそうです」

・・・そばにいていただくだけでも安心されてますよ(Ns)

 

患者さん「お父さんが優しいの…」

 

「今日はしんどいらしい。食事もあまり食べてくれない。家族には食べないと衰弱するだけだって言ってるんです」

「大丈夫かな?…心配だけど帰ります」

 

・・・一緒に食事をされている

パンやケーキ、卵豆腐、お寿司、果物 などいつも持ってこられます

 

「いつも朗らかな女性がこんなにしんどそうだったらびっくりします」

 

・・・息子さんたちのこと、政治のこと、奥様とのなれ初めのこと、子育てのこと……Nsにいっぱい話をされました

 

カルテにはこのほかにもご主人のことがたくさん記録されています

奥様のことを大切にされ、仲良く過ごされてきたんだなあとうらやましく思いました

 

バースデイの写真をもういちど見ました

おふたりの笑顔

大切にしていきます

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あるときひとりの医師と話をすることがありました

その医師は「ぼくは患者さんから無理に『したいことはないですか?』と聞きだしたり、それをなんとか叶えようと一生懸命にこだわることには反対なんです。きっとこのままそっとしておいてほしいと願っている患者さんもいるはずなんです」と言われました

 

「希望」とそれを支える「援助」

私もずっと考え、ときには現実とぶつかりながら悩んできたことです

 

「急な入院になってしまって、自宅でやり残したことがあります。家族のためにどうしてもやり遂げたいのです」

「入院して痛みは楽になりました。歩ける間に○○さんのコンサートに行きたい」

「娘の出産が近いのです。初孫の顔をみるまではこの世とさよならはできません」

など、ほんとになんとか実現できたらなあと思うことを話されることがたくさんあります

このような方々の希望を叶えるお手伝いはぜひとも必要です

 

一方では何を聞いてもこのままでいいんですとおっしゃる患者さんがいます

残された時間はそう長くないのに本当にそれでいいのかしらとみんなは思いますが、誰が聞いてもいつも同じ答えが返ってくるだけ

さいごにはうっとうしそうな顔をされることもあります

 

最近読んだ本につぎのような文章がありました

勝手に引用させていただきます

 

“「無力でかわいそうな患者さんに、健康で力のある私たち医療者が何かできることをしてあげる」ことだけが希望を叶えることだと勘違いしてはいけません。「何かしたいこと」を考える余裕もなく、ただ今このときを生きることだけで精一杯の患者さんにとっては、とにかく目の前の苦痛がこれ以上悪くならず、「今」の時間を過ごせることが一番の希望という方もいるのです。何か新しいものを手に入れることや、やり残したことをやり遂げること、生きている時間を延ばすといった「手に入れる」系のことだけが希望を叶えることなのではなく、いまその人の手の中にある小さな希望が失われないようにすることだって、れっきとした「希望を叶えること」なのです” (西 智弘 医師)

 

重い文章です

 

持ち時間がわずかであることを告げること

しておきたいことは何かないですか と聞き出すこと

病状が悪化して入院してこられ、やっとコントロールができた患者さん

今から苦痛が強くなることが確実に予測される患者さん

やっとこの病院にたどり着いた患者さん

に、短いお付き合いの中でどこまでお話ができるのか……

 

縁があり緩和ケアの世界に飛び込んで、目の前に出現した悩みのひとつです

最大の悩みといってもいいくらいです

 

患者さんにとってみれば、言いたいことがあっても言い出せないことは少なくないでしょう

「こんなこといってもいいんだろうか」

「きっとむりだろうな」

「みんなにめいわくをかけるから」

「じぶんががまんすればいいんだ」

などなど、様々な思いがあることでしょう

 

あるスタッフは

「そのために緩和ケア病棟ではたっぷりと時間があるんだよ」

と言いました

ある人は

「とても話ができなくて…」

とも言っていました

 

何がよくて、何がわるいということではなく

こうするべきだ、こうしないといけない でもなくて

毎日、毎日考えながら、悩みながら、相談しながら、目の前の患者さんの人生とお付き合いしていくことだと今は思っています