ご家族のケアにグループで取り組んでいる看護師Sさんにメッセージをお願いしたところ
心のこもった文章をいただきました
私は緩和ケア病棟で遺族グループとして活動をさせてもらっています。
緩和ケア病棟では患者様が旅立たれてから1年が経過された方の家族様を対象に「家族会」を開催しています。私自身も何度か参加させていただいたり回らせていただいたこともあります。
家族会では家族様と、医師・看護師(以前はボランティアスタッフさんも一緒に参加されていました。)で患者様との入院中の過ごされ方や、患者様が旅立たれてからの家族様の過ごされ方などを話させていただいたり、聞かせていただく中で様々な思いに触れ、同じ時間を過ごすことのできる大切なひとときでした。
私が初めて家族会に参加させていただいたのは、入職して2か月後のことでした。
先輩スタッフから「一度見てきたらいいよ。雰囲気も知っていてほしいしね。」と言われたことがきっかけです。どんな雰囲気か見せていただくといっても、とても緊張しながら参加していたことを昨日のように思い出します。家族様とM先生やY先生、病棟スタッフが話をされている場面を眺めながら、笑顔の方、泣き顔の方と様々な方がいましたが、皆様穏やかで優しい時間を過ごされていることは分かりました。
そうしていると、突然Y先生に呼んでいただき、参加されているお一人とお話しさせていただきました。先ほどもお伝えしたように、対象となっている方は患者様が旅立たれて1年が経過されている方なので、面識のない方でした。その時にできる精一杯の言葉をもち、お話を聞かせていただき、患者様の事を教えていただきました。その瞬間にただの見学者から参加者になれた気がしました。とても温かく特別な時間を過ごすことが出来ました。
家族会準備も慣れないうちはとても大変でした。病棟全体を巻き込んで協力してもらい、徐々に当日が近づき、家族会が終了してやっとほっとできて、家族さんと会えた喜びを感じながら過ごせました。普段の日常的なケアや関りとはまた違った家族様とのつながりを感じることができとても嬉しかったです。
しかしコロナ禍になり、一気に状況が変化しました。病院へ来ていただくことも、家族会を開催することも出来なくなったからです。コロナ禍で患者様、家族様、ボランティアスタッフ、病棟スタッフそれぞれを守るためには必要なことだと分かっていても、とても残念で悔しい思いでした。病棟では遺族グループを中心に家族会の在り方について話し合いをしました。そしてコロナ禍でも出来ることとして、家族様へのお手紙、写真入りメッセージカードを送ることを考えました。こんな時だからこそ家族様との繋がりを持ち続けることが大切だと感じました。患者様に向き合われていた時間や思いをねぎらい、共感し、これからを過ごしていかれる家族様が次のステップへ一歩を踏み出すお手伝いになればと思っています。
以前もこれからも課題となってくるのは、患者様との思い出や時間に向き合うことが難しく、周囲との関りをもつこともしんどく感じてしまうほど強い悲嘆の中で過ごされている方がいるということです。病棟スタッフの多くがそんな方達にこそ目を向けるべき、支えになりたい、1人でないことを知っていてほしいと思っています。嬉しかった時や楽しい時はもちろん、辛くて苦しい時や困った時にこそ協同病院で過ごされた日々を通して、あの人達になら話してみたい、頼ってみようかなと思い出していただけるきっかけになればと思っています。そのために最近ではアンケート(負担にならないよう少数の項目に絞り、フリーコメント欄を作成、悲嘆の強い方もピックアップし今後につなげていけるようなもの)も同封し家族様の反応をみながら、プライマリーナースを中心に電話かけを行ったり、フォローが出来る体制を整えている最中です。アンケートの返信をみていると、家族会の時のように様々な反応をいただくことが出来ました。お返事をいただけることはやはりとてもうれしいなと感じました。しかし全ての方にお返事がいただけるわけではありません。辛い気持ちの中で過ごされているのかと思うと心配な気持ちもあります。電話かけやアンケート内容、家族様との関わり方どれをとっても、まだまだ改善していかなければならない課題が残っています。私たちの思いや真心が1人でも多くの方々に届くことを願っています。
コロナが落ち着けばしてみたいことがあります。家族会はもちろんなのですが、以前から行っていた季節ごとのイベントです。イベントも人と人との繋がりが感じられ、普段では見ることのできない表情を見ることが出来ます。イベントでの患者様、家族様をみることも私の癒しの時間です。四季、におい、風、温度といった様々なことを感じ、日常の中にある非日常を一緒に楽しんでいきたいです。患者様、家族様に残されている時間を支えていくうえで「その人らしさ」を知り「患者様や家族様が大切にされてきたこと」を知り寄り添いながら同じ時間と場所を共有出来ることに感謝しながら日々関わらせていただいています。私は緩和ケア病棟の雰囲気や温かさ、患者様、家族様、スタッフが好きです。そんな空間や人達と一緒に作り上げていける家族会や、イベント、日常を大切にしていきたいと思っています。
またコロナ禍で面会制限がある中でも取り入れられそうな事としては、家族様の協力が必要となりますが、思いを形にできればと思っています。他の病院でも取り入れている事で素敵だと思ったことがありそれを応用できればと思っています。サイズ等もまだ悩み中ですが、木の土台と葉っぱや果物の形をしたメッセージカードを準備します。メッセージカードには伝えたい思いを言葉にして書くかシールを貼り付けてデコレーションしてもらったりし、それを木の土台に貼り付けることで1つの作品になります。
日々の連絡や、10分面会で思いを伝えられている方もいると思いますが全ての人がそう出来るとは限りません。年齢や住んでいる場所、体調と様々な理由で会いたくても会えない方もいます。思いを言葉にすることが苦手な方もいるかもしれません。家族様の存在そのものが患者様の支えとなっていて、安らぎに繋がると思います。逆もしかりです。言葉にすることだけが全てだと思ってはいませんが目に見える形にすることや、それまでの時間が思い出の1つとして残ればと考えています。参加されるか、しないかも自由ですし、完成までのペース、何を書くか、誰が書くかも自由ななかで、いろいろな形の思いが繋がれば素敵だなと思います。
今後コロナの状況がどう変化していくのかはわかりません。しかし1日でも早くコロナが落ち着き患者様、家族様にとってより良い日々が過ごせるように、また病院にも足を運んでいただき、一緒に家族会やイベントが開催出来ることを楽しみにしています。
Sさんありがとうございました
これからもみんなの取り組みに期待しています