彼女はある大病院で抗がん剤治療を受けていました。
あるとき主治医から「薬の副作用がつよく、効果も見られないので、治療はこれ以上は無理です」と言われました。
しかし納得ができず、まだ治療をあきらめるわけにはいきません。
私は相談をうけ、セカンドオピニオン外来受診をお勧めしました。
その後彼女は主治医から別の病院を紹介され、そこで数か月治療を継続することになりました。
病気は薬の効果以上に進行し、そこでも「これ以上の治療は難しい。あとは緩和ケアです」と告げられました。
再度相談です。
患者さん:これまでの治療は無駄だったということなのでしょうか?
私:今まで頑張れたということは治療の成果だったと思いますよ。決して努力は無駄だったとは思いません。
いずれは入院が必要だろうと予測していたところ、ある日訪問看護師さんから「痛みと食欲低下が続き、入院を望まれています。先生にはなかなか言い出せなかったようです」と報告をうけました。
「なんでも話してもらえていると思っていたけど、やはり遠慮があったのかなあ。入院してもらいましょう」
入院後薬の調整を行うとともに、話をじっくりと聴くことができました。
「大きな病院で2度も『治療法がない』と言われショックでした」
「痛みが続き、不安で食事ものどを通らなかったのです」
入院され安心したのか痛みも和らぎ、食欲も出てきました。
桜が咲けば花見に行きたいねという希望も出されています。
医療者の話す言葉一つひとつの大切さを痛感しました。