新型コロナウイルス感染症に立ち向かった医療従事者のふたつの本(作品)があります
ひとつは医師(小説)、もう一つは看護師(コミック)です
共感するところが多く、ブログでご紹介します
★「臨床の砦」―夏川草介著から
新型コロナウイルス感染症が爆発的に増加した第三波の時期のお話です
全国多くの地域で「医療崩壊」が叫ばれていました
当院でもクラスターが発生したときです
作者は勤務先の病院でCOVID-19の診療にたずさわっていました
現場の厳しい出来事をリアルに描きながら、そこに働く医療従事者や患者さん・ご家族の思いを生々しく述べられています
自らも感染する恐れをいだきつつ、努力しても亡くなられる患者さんを目の前にして無力感をいだきながら、体力的にも限界に近づく状況でした
ある人のコメントです
――この小説は今何が起きているのかをまざまざと見せつけ、そして誰もが当事者であることを知らしめてくれる貴重な資料だ
作者は、
――現実そのままではないが、嘘は書いていない
と言い、また
――困難にぶつかったとき、人間はどうあってほしいかを書いた
と話されます
心に響いたフレーズを引用いたします
(新型コロナウイルスに感染した患者さんの入院を引き受けている地域の病院で、担当する医療従事者達は疲労困憊の状況でした)
「この現場には、誰もが満足する正解は存在しない」
「いつまで持ちこたえられるか」
「マスメディアは、(中略)うつむいたまま地面を見つめ、歯を食いしばっている人の存在には気づいていない。声を上げない人々は、すぐそばに当たり前のようにいる。苦しい毎日に静かに向き合い、黙々と日々を積み上げている」
(緊張感につつまれた現場で、みんな苛立ちや焦りに飲み込まれようとしていました)
「負の感情はあっというまにクラスター化する。現場の人間が無闇に感情をぶつけ合えば、クラスターはさらに拡大し、組織は統制がとれなくなり、本来の目的である医療どころではなくなってしまう」
「大切なことは、我々が同じような負の感情に飲まれないことでしょう。怒りに怒りで応じないこと。不安に不安で応えないこと。難しいかもしれませんが、できないことではありません」
(クラスターの発生した介護施設への誹謗中傷に対して)
「苦しんでいる人を匿名で誹謗中傷するなど、人間の行為の中でもっとも下劣なものです。いくら感染の恐怖が大きかったとしても正当化できるものではない」
(このような異常な環境の中での「死」に対して)
「『死』は別れです」
「人と人とが二度と会うことができなくなる最後の時に、誰もが切り離され、孤立してしまっている」
(このような医療の現状を前に、作者は主人公に語らせています)
「だから、変えなくてはなりません」
★「コロナ禍でもナース続けられますか」―あさひゆり著から
コロナ禍の最前線で働く看護師さんたちの物語です
作者は看護師さんであり
――コロナ禍での病院の様子や医療従事者の心の声を「見たまま、感じたまま」に描いた作品です
――あの時、病院の中で一体何が起こっていたのか
看護師達はどのような気持ちでコロナ禍を過ごしていたのか
と書いています
若いナースが涙を流して
「コロナ…
いつまで続くんですかね
私 毎日不安で眠れなくて…」
(みんな決して怖くないわけはない 防護用品の少ない中、自分たちで工夫しました
身近にあるものを使って…)
「だって私たち看護師は
患者さんに手を貸すのが仕事だから
いつでも準備万端にしておかないと」
(外来も入院も患者さんが減って、経営的に危なくなってきた現状をみて、院長からリストラの話が出されたとき師長さんは…)
「辞めてもいいスタッフなんて一人もいません
看護師たちが毎日どんな想いで働いているか…
いつも一番近くで患者に寄り添い
たとえそれがコロナ患者でも…
あの子達は
患者の前に行けば
変わらない笑顔で業務を全うしているんです」
(家族にたいして誹謗中傷がなされたとき)
「家族に医療従事者がいるという理由で
オフィスの中でデスクを離されていた
・・・
私達医療従事者とその家族は
血の通った人間ではなく
ウイルスとして扱われているようにも思えた
・・・
でもそんな私達を応援してくれる
仲間がちゃんといることも
忘れてはいけない」
(全国から多くの物資が届きました)
(医療従事者だけでなく、多くの人たちがコロナ禍での日常を必死に過ごしている)
「不安でいっぱいだったけど
・・・
たくさんの仲間や
応援して支えてくれる人たちがいることを知った
だから
この仕事を続けていられるんだと思う
・・・
今日もまた
必要としてくれる
人の為に…」
2冊とも機会があれば
ぜひ読んでいただきたいと思います