☆コロナ禍の中で面会が制限され、在宅療養を選ばれる終末期の方は増えておられるように思います

当院でもできる限りの対応を行います

 

これは最期の時間を患者さんと過ごされることを選択されたご家族の希望に応えて、在宅医療を引き受けていただいたかかりつけ医の先生からのご返事です

 

高齢の男性患者さんでした

私たちの緩和ケア病棟を選んでいただき入院となりました

 

複数の臓器への転移

イレウスを合併

終末期のせん妄の出現

など多くの医療処置とケアが求められる状況でした

 

 

入院前の面談時には15分間だけでしたがご家族との面会が可能でした

しかし入院後には世の中での新型コロナウイルス感染のまん延のため

面会は完全にできない状況になってしまいました

 

ご家族にとっては大切なお父さんです

毎日の変化を確かめ、会話ができることで安心感をもたれていたことでしょう

 

さらにオンライン面会が不可能となり

患者さん、ご家族の悲しみに追い打ちをかけることになってしまいました

 

 

短時間でもいいから会いたい…

毎日のようにスタッフとのやり取りをくりかえされていました

 

看護師さんたちもご家族の気持ちは痛いほど理解できます

でも感染症対策は絶対に必要です

矛盾のなかでお互いに悩んでいました

 

 

患者さんの病状は日に日に悪化していきます

 

なんとか電話での会話ができました

―――お父さん、おうちに帰りたいの?

―――うん との返事

 

そのことでご家族の思いが強くなったのでしょう

もともと自宅で最期を迎えたいとの希望をもたれている方たちでした

しかし痛みをはじめとした苦痛が強くなり

やむを得ず入院となったという経過がありました

 

―――会うことが難しいのなら自宅に連れて帰ってあげたいです

なんとかできないでしょうか?

とご家族

 

このころには医療処置がさらに増えてきています

医師も看護師も在宅での療養は客観的には難しいとの意見です

 

ご家族はそれでもなんとかしたい

この気持ちが日に日に強まってきました

―――本人の意思や私たち家族の意思を尊重してほしい!

 

私たちの考えに対してご家族が感情的な反応をされたのは無理もないことです

これ以上関係の悪化が深刻にならないうちに手を打たなければいけない状況です

 

 

最善の方法を見出すために冷静に話し合える場を設定しました

医師・看護師とご家族たちとで話し合うことができました

 

 

 

※ご家族の思い

・面会がまったくできなくなったことがとても耐えられません

・余命は短いと聞いて、それなら私たちのもとで最期を迎えさせてあげたい

・本人も家で死にたいと言っています

・家に帰ることができず、父のぬくもりを感じずに最期を迎えるようなことがあれば一生後悔が残ります

・家族が交代で付き添い頑張ってみようと思っています

 

※私たちの判断

・医療的な処置がたくさんある

・帰る道中も含めて急変の可能性は高い

・介護される人はひとりでは難しいだろう 複数の関わりが求められる

・それらを含めてご家族の『覚悟』が必要

 

と具体的なやり取りを行い

ご家族の決意はゆるぎないものであることを確認しました

 

 

じつは話し合いの前に在宅医療をお願いすることになる先生と連絡をとりあい

往診は可能です

できる限りのことはさせていただきます

と快諾をいただいていたのです

 

帰ってからの医療や看護面での支援の約束は得ていました

 

 

話し合いからの5日間

退院に向けての様々な準備を行いました

看護師さんたちの努力に感謝です

 

 

退院されて数日後

ご家族の見守りのもと

穏やかに最期を迎えられました

 

そのときの医師の返書に記されていたのが

冒頭の文章です

 

在宅医の先生や訪問看護師さんたちに助けられました

 

 

 

以前のブログでも書いたかもしれませんが

在宅での看取りには4つのことが大事ではないかと考えています

それは

(1)介護をされる方の「覚悟」

ひとりでの介護は大変でありできれば1.5人、疲れたときに休むことができる体制がいるでしょう

当然患者さんご本人の意思確認も重要です

(2)在宅医療/看護/ケアに向けてのしっかりとしたプランニング

ケアマネジャーさんをはじめ集団でのカンファレンス

(3)医療や看護のバックアップ

具体的には24時間対応してくれる訪問診療と訪問看護

(4)さいごに経済的な保障

ふつう考えるよりも多くの出費がかさむことがあります

この点でのMSWなどからの援助が求められます

 

すべてが満たされることはなかなか難しいのですが

意識して持っておくことが大切でしょう

307-01

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もう一人、初老の男性のお話です

 

強い痛みで入院してこられました

 

もし本人が望むなら退院をさせてほしいと

ご家族が話されていました

でもひとり暮らしです

いったん退院が可能となっても悪くなれば再度の入院を望まれています

 

検査結果から思ったよりも病状がよくないことがわかり

急な病状の変化が予測される状態でした

 

血液検査のたびに悪化のサイン

何度かご家族と面談を行いました

 

娘さんから

―――父は帰りたいと言ってました

私もできればそうしてあげたい……

 

悩んだとき、困ったときは

いつもみんなで話し合いです―――大事なことなのです

 

 

じつはある事情から患者さんと娘さんは長く会われていませんでした

―――最期の時くらいはいっしょにいてあげたい

思いが強くなってきました

 

 

最初にご家族の気持ちの確認をさせてもらいました

―――覚悟はできています

と心に決めたつよい表情で臨まれています

 

退院までには何があるかわからない

家につくまでに急変されることもある

帰ったとたんに急変ということがあるかもしれない

 

こちらもたくさんの予防線を張らせていただきました

 

それでも決意は固いようです

ひとり暮らしの生活からご家族のいる場所に帰ることになります

 

翌日が退院と決まり

大急ぎで家族による介護の指導

ここでも看護師さんたちは奮闘しました

患者さんは退院できることがわかりもうろうとしながらも笑顔を見せてくれました

 

介護タクシーの手配

ベッドの準備

多くの医療器具がついている状況での指導

などなど

 

 

看護師さんが付き添うことになりました

無事に到着されたとの報告

 

帰られてすぐに訪問看護師さんの訪問

私も仕事を終えてその日のうちに往診

落ち着いた様子でひと安心

 

 

明日もまた来ますねと

挨拶をして病院にもどりました

 

 

つぎの日

直前まで飲み物を口にされ

そのあと

静かに息を引き取られました

冬にしては比較的おだやかな朝でした

 

一晩中つきそわれた娘さんが涙を流しながら話してくれました

 

家に帰ったとき

「ここは家なのか ありがとう」

と言ってくれたんです

 

家族ってすてきだなあ…

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退院をめぐってはすべてが満足のいくものではありません

 

悔しい思いをすることの方がもっといっぱいあります

 

退院の希望を持ちながらも

様々な理由から叶えられずに

私たちの病棟で最期のときを過ごされる患者さん

 

本来なら

そのような方々に対して

家庭の雰囲気を感じていただくことも

私たちの目的ではあったはずなのですが

 

コロナ禍のために

たくさんの取り組みができず

また

ご家族やご友人との面会がかなわず

過ごされている患者さんがたくさんいます

 

 

できることは何でもしたい

何か私たちにできることはないでしょうか と

みんなが毎日のように努力しています

 

 

きっと、もっと

あるはず……

 

いま、私たちは模索しています

 

307-02

緩和ケア関連の資料を探しているときにみつけました

“シトラスリボンプロジェクト”というそうです

 

愛媛県発祥です

 

ホームページから引用します

https://citrus-ribbon.com/

 

 

――コロナ禍で生まれた差別、偏見を耳にした愛媛の有志がつくったプロジェクトです。 愛媛特産の柑橘にちなみ、シトラス色のリボンや専用ロゴを身につけて、「ただいま」「おかえり」の気持ちを表す活動を広めています。 リボンやロゴで表現する3つの輪は、地域と家庭と職場(もしくは学校)です。 「ただいま」「おかえり」と言いあえるまちなら、安心して検査を受けることができ、ひいては感染拡大を防ぐことにつながります。 また、感染者への差別や偏見が広がることで生まれる弊害も防ぐことができます。感染者が「出た」「出ない」ということ自体よりも、感染が確認された“その後”に的確な対応ができるかどうかで、その地域のイメージが左右されると、考えます。 コロナ禍のなかに居ても居なくても、みんなが心から暮らしやすいまちを今こそ。 コロナ禍の“その後”も見すえ、暮らしやすい社会をめざしませんか?―――

 

306-01

 

感染した人や医療従事者に対する偏見など悲しい話を耳にするにつけ、クラスターを経験した私たちにとって身近なものと感じています

 

そんなときこの運動が長野県や静岡県、千葉県、岩手県などをはじめ全国に広がっていると聞きました

 

冬の風にさらされて冷えきった手に暖かい息を吹きかけてくれるような、ひとのぬくもりを感じる運動です

 

もっともっと広がればいいなあと思います

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