「患者さんが亡くなるの、怖い?」

「……怖いです」

「私も最初は怖いって思ってた。けど今は、私が受け持ちの日を選んでくれた

んだなと思ってるよ」

☞私の思い上がりかもしれませんが、同じようなことを考えるときがあります

出張の前にお亡くなりになった患者さん

朝の出勤まで待っていてくれた患者さん

たまたまだよと言われればそうなのですが、でもそう思いたい時もあるのです

 

「つらい生活を一緒に闘い、あるときふと共鳴して一緒に泣けてくる時って、看護師と患者という関係を越えて、人として関係性が築けていることの証拠でもあると思うのです」

☞最近もありました

一緒に受け持ちになってくれていた看護師さん

さいごの看取りのときこらえていた涙があふれてしまったようです

看護師さんと患者さんの関係はしっかりと(主治医以上に)築かれていました

 

「医療者はさ、患者さんと、その人を大事に想う人たちを、少しでも幸せにしなくちゃいけないんだ」

☞医師の言葉です

またつぎの言葉もありました

「明日が来ない人への、取り返せない後悔と不甲斐なさ」

何年経験を繰り返しても、毎回後悔はあります

お風呂につかりながら振り返っています

 

「着替えを手伝って、点滴を替えて、

ごはんを配って、歯磨きを手伝って。

それだけで時間はあっという間に過ぎていくけれど、

それだけじゃただの業務で、

(中略)

そうじゃなくって、些細な時間のなかでも、

患者さんの人となりを知っていくことを大事にしたい。

患者さんの思い、ご家族の願いをキャッチしたい。

そこまでやらなくちゃ、きっと看護師がいる意味はない。

それが積み重なっていけばいくほど、

きっといざという時、

確信をつかむ瞬間が降ってくる」

「私は意識的におしゃべりをして、病気とは関係なく患者さんが今までどん

なふうに生きてきたのかを知りたいと思っています。

(中略)

『病気』ではなく『人』と関わっていることを忘れないようにするため」

☞このように考えることができるってことはすごいなあ

看護師さんだけでなく、医師もその他の医療従事者みんなにも共通することなんでしょうね

 

「一日一日を前向きに、大切に生きる患者さんに出会えて、あたりまえだったことのありがたさに気づけることは、幸せなことだと実感するようになりました」

☞看護師として、医療者として仕事を続けていくことへの自信をすごく感じさせられる文章です

 

 

かってに抜き書きをさせていただきました

作者にしてみれば不本意かもしれません

でも、読みながら久しぶりに目頭が熱くなり

多くの人に知ってほしくなりました

 

 

本をご紹介します

 

「病院というヘンテコな場所が教えてくれたコト」という風変わりな題名です

作者は仲本りささんという看護師さん

看護師になって1~2年目のとき、苦しかったときの実話をもとにしたお話とのことです

素敵なイラストと文章です

 

お勧めの一冊です

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6月のさいごの日曜日

私たちの法人の総代会(生活協同組合なので毎年開催が義務付けられています)がありました

 

1年間の地域での取り組みや職員の活動が生き生きと報告されました

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新入職員の紹介の場面ではみんな準備をしっかりとされ、評判は上々でした

 

 

わが病棟の師長さんからは「緩和ケア病棟の3年間」というテーマでの報告がありました

豊富なスライドを駆使して、きちんと制限時間内に収められました

 

参加者からは「とてもよかった」「泣きそうになりました」という声が寄せられています

 

報告のさいごに3周年記念のつどいのお知らせをしてもらいました

 

ビラを載せておきます

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このブログをご覧になっていただいている方々のご参加をお待ちしています

何かしたいこと?

―とくにないなあ

車いすに乗って散歩?

―今はいいです

 

と看護師さんが色々と提案しても消極的な返事ばかり

 

病気が腰椎に転移したために痛みが強くなり入院してこられました

痛みのコントロールはなんとかできました

でも様々な事情からベッド上での生活となってしまいました

 

気分転換をかねて車いすでの散歩のお誘いをしても

「行きたくない」

と断られます

 

寝ながらテレビと新聞をみている毎日でした

 

ある日「この病院では天ぷらがでないのか」と言われました

その話を聞いて看護師さんたちがすぐに反応

栄養士さん、調理師さんと相談です

 

「ぜひ提供させていただきましょう」

と快く引き受けていただきました

 

 

そのことを患者さんに伝えると大喜び

予定されている日が待ち遠しいのか

「今日じゃなかったの?」

「天ぷらの日はまだ?」

と毎日のように催促されます

 

とうとうその日がやってきました!

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私は残念ながらその場に居合わせることができなかったのですが

看護師さんの話では

「患者さん、涙を流しながら食べておられましたよ」

「ほんとにうれしそうでした」

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準備をしていただいた栄養士さんと調理師さんです

ありがとうございました

 

☆無理をお願いして調理師さんからコメントをいただきました

 

 

病院の食事は全て“治療の一環としての食事”だと自負しています。

 僕は治療食に携わることを誇りに思っています。

 

 緩和ケアオープン時から、自分たちが提供している食事が患者さんにとって人生最後の食事になるかもしれないと思ってやってきました。

 

 僕は直接患者さんを治療することはできません。

 患者さんが“緩和ケアの治療食”に何を望んでいるか考え、食べたい気持ちを支えることが僕たちの仕事であり、やりがいです。

 

 天ぷらは“日清の黄金”

 花はかすみ草

 

 が僕のポリシーです。

 

(日清の天ぷら粉はからっと揚がるおススメの天ぷら粉、かすみ草は縁の下の力持ち、引き立て役というニュアンスだそうです)

 

 

☆後日患者さんにインタビューしました

 

○とても上出来です!

○おいしくて最高でした

○今まで入院した病院では食べたことはなかった

○エビも大きく、天ぷらは大好きです

○こんどは天ぷらうどんが食べたいなあ

○頑張ろうという気持ちが湧いてきました

 

と話されました

 

 

緩和ケア病棟は色んなスタッフに支えられているんだということを、改めて認識した出来事でした

「体が温かいうちにハグしてあげたいんです!」

大粒の涙を流しながら看護師にお願いをされました

 

患者さんは40歳台

病気が見つかって1年余り

考えられるかぎりの治療を続けてこられました

そのための経済的な負担も想像できないくらいです

私たちが面談依頼を受けたのは

これが最後の治療法かもしれないと言われたときです

奥様が相談に見えられました

 

それから数か月たって…

合併症のため寝たきりとなり、コミュニケーションが不十分な状態

入院していただきました

 

「家族といっしょに最期のときをゆっくりとすごしたいのです」

と、奥様

 

広めの病室にご案内しました

ご家族が交代で、ときには全員でお泊りをされていました

 

「告知されたときはみんな受け止めることができず、時間がかかりましたが、現状はみんなわかっています」

「夫もしたいことはすべてしてきたと思います。だからもう心残りはないっていっていました」

「治療もぎりぎりの限界まで私たち家族のために受けてくれました」

「子どもたちにもすべて伝えています。父親が頑張ってきたことは知ってくれていて、取り乱すこともありません」

「……それでも少しでも長く生きていてほしいです」

 

 

前医で告げられていた寿命が訪れてきました

 

意識状態が低下しはじめ

手足のチアノーゼがあらわれ

呼吸が努力様呼吸から下顎呼吸にかわり

 

そして

…しずかに

…旅立たれました

 

 

「まだ体が温かいうちにハグしたいんです」

と奥様

「おとうさんありがとう…」

ご家族が順番に抱きしめられました

 

患者さん、ご家族は私の到着をまってくれていました

のちに最期のときのお話を看護師さんから聞いて

自然とつぎのフレーズが浮かんできました

 

さよならが迎えに来ることを

最初からわかっていたとしたって

もう一回もう一回

もう一回もう一回

何度でも君に逢いたい

めぐり逢えたことでこんなに

世界が美しく見えるなんて

想像さえもしていない 単純だって笑うかい?

君に心からありがとうを言うよ

 

ご存じ、Mr.Childrenの『HANABI』のサビの部分です

 

ご家族は(そして患者さんも)

ハグすることで、大切な人のことを心に、体に刻み付けたい

って思われたのではないでしょうか?

そして

もう一回でいいから逢いたい とも…

 

私の勝手な解釈なのかもしれませんが

でもそう思えました

 

短いお付き合いでしたが

みなさん方の姿は決して忘れることはないでしょう

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https://prcm.jp/album/1d5120ec057c4/pic/72158259

 

 

60代の女性のお話です

 

病気が見つかったときには治療が困難な状態でした

吐気や腹痛、食欲不振などおなかの症状が続いていました

 

始めてお会いしたとき

ご本人は治る気持ちを持たれていましたので

なぜここに入院しないといけないのかと思われていたようです

優しいご主人は厳しい話をすることにためらいをもたれていました

 

緩和ケア病棟に入院してこられる患者さんは

みなさん「悟りを開いた」方ばかりではないのです

「覚悟はしています」

と言われながらも

「まだ何かいい方法が見つかるのじゃないかしら」

と期待を持たれている患者さんやご家族は少なくありません

私たちはその気持ちを支えながら毎日のケアにあたっています

 

しかし病気はそのような配慮はしてくれません

毎日のように吐気や痛みが襲います

 

身体症状の緩和方法の基本に忠実に内服薬や注射で対応し

ある程度の効果がありました

 

しだいに食事がとれなくなって

時々食べた後に嘔吐されることも増えてきました

それでも「食べないと元気にならない」と

無理をしながら口に含みます

 

ご自分の思いと現実の矛盾にイライラされることが多くなりました

ご主人にもつよく当たることがあります

ご主人は私たちには涙をみせることがありながらも

奥様の前では笑顔で要求に応えられていました

 

不安症状が身体の症状に加わるようになってきました

それがさらにこれまでにない身体の症状となって表れます

そのつどナースコールが鳴ります

 

形のあるものは食べられない状態になり

氷や水分がかろうじて喉の満足感を満たしてくれるので

頻繁に要求されました

ご主人もそばに付きっきりです

 

 

ところがある日

ナースコールが減りました

 

申し送りの時の看護師さんたちの会話

――○○さん、編み物を始められてからコールが減ったわね

一日中編み物をされているようですよ

 

 

ご主人にお話を伺うと

「もともと一つのことにこだわる人でした」

とのこと

 

それからは身体の訴えや不安感も減り

穏やかな日々を過ごされることが多くなりました

嘔吐されることがときに見られても……

209-01

編み物に没頭することで

心理的な安定がもたらされ

あわせて身体の苦痛も和らげる効果が

うまれたようです

 

徐々に病状が進行し

眠っている時間が増え

呼吸が浅くなり

 

ご主人はじめ、ご家族に見守られながら

静かに旅立たれました

 

 

しばらくたってからの「デスカンファレンス」の場

 

かかわったスタッフからは

「編み物が患者さんを穏やかにさせてくれたのね」…と

 

薬を使っての症状緩和よりも

一時的であれ、編み物のほうが効果的であったこと

を思い返し

緩和ケアの奥深さをあらためて認識することができました

 

カンファレンスのさいごに

看護師さんが

「みなさん、趣味をもちましょう」

と締めくくってくれました

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