神戸の中心街に用事があって出かけました

たくさんの人と夏の暑さに負けて

目の前にあった喫茶店に入りました

 

途端に空気が変わりました

 

そこは喫煙が可能なお店だったのです

 

入ってしまったかぎり、気の小さな私は出ていくこともできず

いちばん被害の少なそうな席を選んでカレーとコーヒーを注文しました

お腹もすいていたのです

210-01

まわりは男性も女性も煙の中でゆったりとされていました

 

私はたばこを吸わないので、患者さんにも禁煙を勧めることが多いのですが

この場所では余計なお世話なんでしょうね

とても職業意識を丸出しにすることはできません

 

喫煙されている方のほとんどは

おそらく

「たばこは体に良くない」

「肺癌などのリスクが増加する」

ということはご存じだと思います

 

それでもやめられない、あるいはあえてやめない理由は様々なのでしょう

 

 

そこで思い出したことがありました

「他人に迷惑がかからなければ、愚かな行為(喫煙者の皆様ごめんなさい! けっして非難しているわけではないのです)でもその人の自由にできる権利がある」

と何かの本で読んだことがありました

『愚行権』というのだそうです

 

 

そこからいくつかの場面が浮かびました

2105-02

 

 

☆食べると必ずといっていいほど誤嚥してしまい、呼吸が苦しくなる

でも好きなものを自由に食べたいとたこ焼きを食べてしまった

☆先生から勧められた治療、受ければよくなる可能性があるということは理解している

しかしわたしはあえて治療を受けないという選択をした

治療を受けることでやり遂げたいことができなくなるのがいやなのです

☆このまま何もしてあげられないことがとてもつらい

病気が重いということはわかっているけれど

家族でいっしょに旅に出て思い出を作ってあげたい

 

……少なくない患者さん、ご家族が悩まれています

 

 

購入したばかりの新書の一文を思い出しました

気になった文章はときにメモをとっています

ノートを開いて見つけました

「QOLってなんだろう」(小林亜津子さん著)から引用します

 

(カレーの味はまずまずでした。コーヒーは?)

 

“医療における「愚行」において重要なことは、治療を拒否する患者は、けっして「死にたい」わけではないということです。彼はただ、自分らしく「生きたい」だけなのです。医学的観点から見れば、「愚かなこと」に思えても、本人にとっては、QOLを熟慮した上での決断であり、自分の生きがいに直結した選択なのです”

 

「幸福追求権」(憲法13条)に関しても述べられていました

 

 

「愚行」というあまり印象のよくない表現ではあるのですが

患者さん、ご家族のQOLや幸せを第一に考えたときに忘れてはいけない視点だと心に留めておきたいと思います

 

 

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