毎年この季節になるとそわそわしていました

病棟でのクリスマスの催しです

でも新型コロナウイルス感染が広がり静かな病棟になってしまいました

 

それでも今年はスタッフみなさんがんばりました

 

今回は写真中心のブログです

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クリスマスカード

受け持ちの看護師さんがそれぞれの思いを書き

患者さんのもとに届けます

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手作りのツリーとサンタさん

看護師さんの友人の手作りとお聞きしました

 

メッセージカードといっしょに

患者さんの手元へ

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得意な看護師さんが作ってくれました

ナースステーションの入り口に飾ってあります

ほっとする光景です

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これも同じ看護師さんの手作り

持っているのは師長さんです

 

 

きわめつけはこれです!

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クマに乗ったサンタさん

このクマ、顔が左右に動くんです

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大きさを実感してもらうために看護師さんにそばに立ってもらっています

 

 

ちなみにここに登場してもらった看護師さん

仕事終わりの夕刻に

受け持ちの患者さんとコーヒータイム…

 

翌日患者さんにたずねると

とっても喜んでいました

 

 

 

コロナ禍でも

工夫が可能だということ

つくづく感じています

 

元気づけられました!!

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今までたくさんのチーム医療のかたちを経験してきました

たとえば

・急性期医療では(当時循環器内科を志していました)、患者さんの命を救うために看護師さんや検査技師さん・放射線技師さんたちとチームを組みました

・診療所ではすべての職員だけでなく、地域の方々の力を借りることがたくさんありました

一人暮らしの高齢患者さんのフォローなどです

その後、

・在宅医療では訪問看護師さん、ケアマネジャーさん、介護職のみなさん、そしてご家族とチームを組み安心できる生活のお手伝いに取り組みました

・病院のリハビリ分野では看護師さん、PT/OT/STさんや医療ソーシャルワーカー(MSW)さんたちと熱心なカンファレンスや家庭訪問を行ってきました

 

 

私がそもそもチーム医療の大切さを実感したできごとがあります

 

元号が昭和と呼ばれていたころです

研修医2年目を中小の地域病院で送っていました

 

40歳代の患者さんが入院してこられ主治医となりました

病名は急性骨髄性白血病

当時この病院では初めての血液悪性腫瘍の受け入れだったと思います

 

指導医の行動は素早いものでした

 

呼びかけ一つでチームが招集されました

医師は主治医の私と指導医

病棟看護師

薬剤師

栄養士+調理師

医療事務

のチームが作られました

 

普通であれば専門病院に任せるのですが

患者さんとご家族のつよい希望があり

この病院で治療を開始することが決まったのです

 

まず市内で最も中心的に診ている専門医に相談をすることから始めました

快く相談に乗っていただくことができ一安心です

血液検査や骨髄所見、治療薬のアドバイスを頻繁にいただきました

何度か病院に通ったり、時には電話で相談をし、助けていただきました

 

チームとしては定期的(週1~2回程度)に話し合いを持ち、それぞれが自分の役割を果たす努力を行いました

 

 

化学療法が進むにつれて食欲が低下し吐き気に悩まされます

栄養科のメンバーは患者さんの好みに合わせた食事を準備しました

白血球が減り熱が出現

専門医からは新しい抗菌薬を紹介してもらいました

薬局は今まで使ったことのない薬剤の作用や副作用、使用方法などを調べてアドバイスしてくれます

医療事務は自己負担が多くなることへの対策を考えてくれました

忘れてならないのは

「無菌室」を急遽作ったことです

看護師さんたちは慣れない中での感染予防をしながら患者さんのケアにあたりました

その姿をみて私も励まされます

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当然いちばん頑張ったのは患者さん、そしてご家族

ついに寛解までこぎつけました

 

この時の経験が私のイメージするチーム医療の原型となっています

 

そして今

私たちのチームは緩和ケア病棟にあります

 

開設時の「3つのコンセプト」で述べました

 

“神戸協同病院が出発時から追求してきた「医療・看護の継続性」「切れ目のない医療・看護」のなかに緩和ケアをきちんと位置付けることでその 役割が一層明確になります。緩和ケア病棟はそこでの実践、技術、マインドなどが 他の分野に生かされるよう、センターとしての役割を果たすことになります。”

 

さらには「7つの指針(案)」でも直接の言及はありませんがチームでの取り組みの重要性を強調してきたつもりです

 

“頻繁なカンファレンス(話し合い)で患者様・ご家族様の揺れ動く気持ちを受け止められるよう意思統一を行っています

「できることはきっとあるはず」のこころで…”

 

毎日のカンファレンスにはじまり

患者さんの変化に応じたこまめな話し合いや鎮静のカンファレンス

途切れていますがデスカンファレンス

週1回はリハビリスタッフの参加があり症状の緩和に一役買ってくれています

必要に応じて薬剤師さんの参加があり薬の選択など助けられています

ご自宅への退院や転院、経済的な困難の解決をめぐってはMSWさんの力が大いに発揮されています

歯科衛生士さんのラウンドや歯科医師の往診もあります

 

退院が決まれば関係者が集まっての退院前カンファレンス

そして生活などの課題を抱えている患者さんの場合にはご自宅への訪問を行い安心して療養できる準備を行っています

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まだ発展途上ですが

これからも私たちならではのチーム医療を追求していきます

 

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「とっても美しいね」

「心が洗われるようです」

との声が…

 

入院中のEさんに何か趣味をお持ちですか?

とたずねたときに

このような写真を見せていただきました

 

趣味で作られているとのことです

“糸かけ曼荼羅”と言います

糸かけ曼荼羅は木製の土台に小さな釘を打って糸をかけて作ります

美しい幾何学模様の完成です

心のセラピーになると言われています

 

 

現在もベッドの上で次の作品作りに勤しんでおられます

こんどはどんなものができるのか回診のときの楽しみのひとつです

 

 

折り紙教室や塗り絵など

これまではボランティアさんたちの力も借りながら行ってきましたが

コロナ禍以降患者さんたちの癒しの取り組みが少なくなっています

 

その中で

Eさんはお一人で楽しまれてきた趣味を

私たちに与えてくださいました

 

もうひとつ紹介します

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こちらも素敵な作品です

 

他の患者さんたちにもぜひみていただきたいなと思っています

Dさんは超高齢の患者さんです

癌はだんだんと進行していますが目立った症状は現れていません

 

ある日のこと

それまではご自分の脚でしっかりと歩いていましたが

急に一人で起き上がることがむずかしくなりました

やっとのことでデイサービスには参加

食事は摂れましたが以前と比べると減っています

 

数日後には寝たきりとなってしまいました

心配したご家族が外来に連れてこられました

 

意識ははっきりとしています

手足に麻痺は見られません

笑顔で受け答えもできています

微熱があったのでコロナの検査を至急行いましたが陰性

肺炎もなし

 

尿検査と血液検査の結果尿路感染+脱水と診断され入院となりました

 

 

入院後はベッドの上で食事を全部食べました

けれどもリハビリは拒否されます

ご自分でできると思われたのでしょうか?

 

高齢であるしじっくりと構えていこうと考えました

 

ところが数日後の夜間不穏が出現

突然の発症であり

リハビリなど意に沿わないことを急かされ

急な環境の変化に戸惑われ

私は一時的なせん妄状態と考えました

 

翌日にうかがうといつものように笑顔で迎えてくれます

当面の夜間の対応の指示を出しました

 

 

それから数日が経過

ADLはなかなか改善しません

食事は全介助となりました

 

次の見通しが十分に立たない状況で頭を悩ましていたところ

看護師さんから声がかかりました

「Dさんの左手がなんとなくおかしいように見えます」

 

急いでベッドサイドへ

たしかにわずかですが右と比べて左上肢に力が入りにくくなっているようです

左手がおかしいという意識でみないとわかりにくい程度のわずかな変化でした

麻痺があるというわけでもなさそうでしっかりと左手で握り返してくれます

下肢は左右差もなく動いています

毎日患者さんの元を訪れていたのですが看護師さんたちの観察力にはかないません

 

 

最初は経過観察という言葉が浮かびましたが

患者さんや看護師さんの顔を見て

脳梗塞や脳転移という最悪の状況が頭をかすめ

急いで頭部CTをお願いしました

 

看護師さんから電話です

「CT室から出血があると連絡がきました」

硬膜下血種でした

 

 

そこからはご家族と話し合い

救急で脳神経外科の病院に搬送し対応していただくことができました

 

 

 

すべての対応を終えてから反省しきりです

看護師さんたちには「皆さん方のおかげです」とお礼を述べさせてもらいました

毎日の患者さんの変化を見ていないと気づけないことでした

 

 

ちょうどその前後のことです

ある看護師さんの書かれた本を読んでいました

 

――最も大切なのは「気づく力」です

患者さんの気持ちに気づき、体調の変化に気づき、本人も気づいていないちょっとした異常に気づく

そのことが早期の発見につながる

何かいつもと違うなと気づき、情報を共有することが大切

 

という趣旨のことが書かれていました

 

ほんとにその通りです

 

一人の気づきが

チームに共有され

主治医にもすぐに伝わる

この連携がとても大事だと改めて確信しています

 

そのためには医師も素直な心で報告を受け止めることが前提ですが…

 

 

最近大切なことに気づかされることが増えています

これからも多職種のチームを大切にしていきたいと思います

 

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三つめのテーマについて考えてみました

 

(1)Cさんの身に起こったこと:複数の患者さんのエピソードを組み合わせて書いています

 

 

Cさんが私たちの病棟に移ってこられたとき、率直に言って「難しそうな方だなあ」と思いました

入院の初日から

「さみしくてしかたがない。家族に付き添ってもらえないのですか?」

「不安なため眠れません。眠ろうとすると怖い夢ばかり見ます」

「あちこちの痛みがありますが、私はできるだけ薬に頼りたくないのです」

その他ノートにはたくさんの困っていることや気がかりなことが書かれています

 

強い痛みは癌性疼痛と考えて医療用麻薬を提案するのですが、簡単には受け入れていただけません

不安でいっぱいな様子で抗不安薬を勧めてみても「今はいいです」と拒まれます

 

医師も看護師も困り果てました

ご家族の協力を得ようにもコロナ禍のため面会制限があります

考えられることを試そうとするのですが成功しません

 

一方では

痛い所をマッサージしてほしい

眠れるまでそばにいてほしい

など要求はたくさん出されます

ひとたびベッドサイドに伺うとなかなか離してくれません

 

 

行き詰まりを感じかけたある日のカンファレンスで

ゆっくりとCさんの話を聴いてみよう

ということになりました

 

業務が比較的落ち着いていた日の午後のことです

Cさんの思いをたずねた看護師さんからの報告です

 

私たちの病棟に来られる前には積極的治療を頑張ってこられたCさん

「あとは緩和ケアです」と言われてきました

 

「前の先生は検査の結果は丁寧に説明してくれました

でも私が何か言おうとすると最後まで聞いてもらえずに一方的に話をされるのです

よく理解できないことを訪ねても、『それはさっきお話したでしょ』と言われます」

「毎日ベッドに来てくださるのですが、お腹を出しても触ってくれることがありません

言葉でやり取りするだけでした」

「抗癌剤の副作用で苦しんでいるときもそうです

症状をやわらげる薬を点滴すればたしかに楽になるのですが、体に異常が出ていないか不安なんです

看護師さんにお願いしましたが、先生に伝えてくださったのかお返事がないことがありました」

 

――そしていよいよ治療の効果が見られなくなったときのこと

「薬の効果がなくなったとたんに私のことに関心がなくなったように見えました

回診も減ってきたのです」

 

――ときに涙しながらたくさんのことを話されました

そして

「私のことをこんなにたくさん聴いていただいたのは初めてです

ほんとにありがたい、感謝しています」

 

と言われました

 

他の患者さんたちの病状によって十分な時間が取れない日もありますが

許されるかぎりCさんのそばで座ってお話を聴こうということで意思統一しました

 

 

病状がさらに進行しいよいよとなったとき

Cさんはご自分の余命を自覚されていました

 

「みなさん方は私のことを面倒な患者だときっと思われていたのでしょうね

私もわかっております」

「けれどここに来れてほんとうによかった

こんな扱いにくい私のために忙しいみなさんが時間をとってくださいました

いままで勝手なことばかり言ってごめんね

とっても感謝してます」

 

苦しそうな呼吸をしながらも

力を振り絞って伝えてくれました

 

(2)研修医時代の反省はたくさんあります・・・たとえば

 

*1年目のとき

 

最初に受け持った患者さんに進行癌が見つかりました

病気のことはわかっても

何をしてあげればいいのかわからない

日に日に苦痛が増えてきます

病室から自然と足が遠のきました

何か聞かれても答えられない

患者さんの辛そうな顔を正面から見ることができない自分がいました

私の病気は何ですか? よくなるのですか? と尋ねられて

ごまかしの返事しかできない毎日でした

ベッドサイドに立っても足は自然とドアの方を向き、患者さんのそばに留まる時間が少なくなってきました

 

*脳梗塞の患者さんを担当していたとき

 

麻痺がつよくリハビリを頑張っているのですが効果が感じられない様子

私はいつよくなるのでしょうか? と尋ねられ

「今の状態を受け入れていただかないとしかたがないですね」としか答えられません

患者さんは少しでもよくなりたいと努力され

脚がわずかでも前に出れば喜ばれ

思うように動くことができない日には落ち込み

一喜一憂の毎日でした

中途半端に知った『障害の受容』

無意識に患者さんに押し付けてしまうこともありました

いっしょに喜んだり悲しんだりする時間をとる努力ができていれば……

 

*外来でのこと

 

たくさんの患者さんを短時間で診ることが自慢と考えていた時期がありました

当然おざなりな応え方しかできません

「仕方がないです」

「年だから・・・」

「みんな同じですよ」

など

ときには患者さんに叱られながら

無責任な返答をしている自分に気づきました

ゆっくりと患者さんとのコミュニケーションをとっている指導医の姿がまぶしく見えました

 

 

(3)私たちが「時間をつくる」こと

 

 

緩和ケア病棟をつくろうとみんなで決め

そのために研修に出ました

そのときのことです

 

*研修先の病棟で面談に同席しました

 

じっくりと患者さんやご家族の話を聴いている姿

「いちばん困っていることはなんですか?」

「そのことをどのように思われていますか?」

など患者さんやご家族の思いや希望を丁寧に受け止めていました

決して一方的に会話を進めることなく

ときにはじっくりと腰を落ちつけて、あるときはいっしょにコーヒーを飲みながら

 

その時に指導医が言われた言葉が耳に残っています

――緩和ケアは医療の基本だと思いませんか?――

 

*またあるときはこちらから望んで訪問診療に同行させていただきました

関西と関東の著明な診療所を訪ねて参加しました

共通していたのは

・一人ひとりに時間をかけていること

・世間話の中にも重要なやり取りを交えてゆっくりと話をしていること

・患者さんやご家族の顔が安心で満たされていること

でした

 

 

残念ながら同じ行動はとれていないのですが

このときの経験が2021年の1月に書いた「7つの指針」に生かせるように努力しました

https://kobekyodo-hp.jp/kanwablog/archives/1925

 

 

たくさんの反省を思い出し

先輩たちの声を聞きながら考えました

 

 

※患者さんは忙しそうにしているスタッフには声をかけない

※ゆとりは時間があいているから作れるものではなく、忙しくても必要な時その人のために時間をつくることで生まれるもの

患者さんは忙しくない人に声をかけるのではなく、忙しくてもそのように見せていない人に話しかけています

そうありたいと思っています

 

※自分に関心を持ってくれている人を患者さんは知っている

※「自分は大切にされている」と感じることができれば「自分はここにいていいんだ。価値のある人間だ」と思えるのではないだろうか?

自分の病気や苦痛のことだけでなく、自分という人間に対して関心を抱いてほしいと

きっと思っているのでしょう

 

 

医療の基本です

私たちはその日の体調がいいときもよくないときもあり、患者さんへの対応が左右されがちです(大いに反省しています)

あなたはプロだからと言われてもできないときはあります

 

「あ~やってしまった」とあとで後悔し、振り返るのですが後の祭り

 

けれどその時に思うのです

心の平静を保つ努力はできるのでは?

理想かもしれないけれどそれを求める姿勢をもつことは可能では?

 

その結果

「時間を生み出す」ときが増えてくれば… と

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☆9月~10月と3回連続で一連の関心ごとを中心に書いてきました

どれも中途半端であることを否めませんが、引き続き追求するべきテーマとなっています