大学6年生になる医学生が2週間実習にきてくれました

内科病棟では3人の患者さんの担当になり、指導医とともに勉強しました

訪問診療に同行してもらったり、院内の褥瘡やNSTの回診に参加してもらったりと忙しい毎日でした

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なかでも緩和ケア病棟としては初めての医学生実習の受け入れであり、面談に参加したり、いっしょに回診したりと、色々と話ができました

さいごのご苦労さん会では、いずれは緩和ケアにもかかわってほしいなとエールを送りました

その彼から感想文をいただきましたのでここに掲載します

 

『緩和ケア病棟でとくに印象に残った点として、急性期の病棟以上に患者さんの容態の変化に敏感でなくてはならず、患者さんの時期の見極めが非常に重要であるといったことがあります。緩和という言葉は簡単ですが、中身はとても簡単とはいえないと感じました』

 

ほんとにその通りですね

しっかりと受け止めていただき有難うございました

これから1年間、素敵なお医者さんになるために頑張ってください!

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病棟で患者さんやご家族と接していると、ときにほほえましい場面に出会うことがあります

 

――その1

 

食事ができなくなり病状が悪化した患者さん

ご自分の病気を真正面から受け止めることが怖くて、不都合なことは無意識に頭から追い出していました

 

ところがある日のこと

看護師さんに「もうゴールだと思う 家族に会いたい」と一言

それを聞いて奥様をはじめご家族に連絡しました

 

少し前のお花見のときには奥様ととってもいい笑顔を見せてくださっていたのに、病状が急に進行したようです

 

倦怠感がつよくなりました

でもご家族がそばにいることで安心されるのか笑顔も見せてくれます

 

昼下がり、奥様と二人だけの時間がありました

そばで世話をしていた看護師さんの話です

「奥様はベッドの横の椅子に腰かけてご主人と手を握り合っていました。そして二人長く見つめ合っていたんです。患者さんは奥様の顔を見てニッコリとされていました。私はそっとその場を離れました。きっと1時間もそんな状態だったと思います」

 

とてもいい場面です

私もそこに居合わせたかったです

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――その2

 

腹水がたまってベッドから起き上がることもむずかしくなった患者さん

「なんとかよくなる方法はないものか」といつもあきらめずに頑張っておられました

 

しかし病気はだんだんと進み、時々意識も朦朧となってきます

ご家族は交代で付き添っていました

回診にうかがうといつも奥様がご主人の腫れた足をマッサージされている姿をみかけます

患者さんは気持ちよさそうに目を閉じられています

 

奥様と話す時間をとっていただきました

今の病状、今後起こりそうなこと、ケアの方針などについて話し合いました

そのときに奥様が話されたことがいつまでも心に残っています

 

私たちで何かできることはないでしょうかという話のときです

「1週間前くらいの時、お前がそばにいて、話をしているのが一番だって言ってくれました」と涙を流しながら話されるのです

できればベッドで一緒に寝てあげたいという希望もお持ちでしたが、それはなかなか難しく、病室のレイアウトを変えてベッドのすぐ横にソファーベッドを置くことで、絶えず奥様の顔が見れるようにしました

手の届く範囲でしたのでいつも仲良く手を握られていました

ベッドにかぶさるように患者さんを抱擁する奥様の姿もありました

 

この日一日は心があったかくなりました

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雨上がりのよく晴れたある日の午後

外泊中の患者さんのお宅を受け持ちの看護師さんとともに訪問しました

 

入院時の痛みやその他の困ったことも落ち着き、一度家に帰ってみることもいいのでは、と外泊をされました

いずれは往診をさせていただく可能性もあり、どのような生活をされているのかうかがわせていただきました

もう一つの目標はかわいがっておられるハムスターに会いにいくことです

 

病院から車で約20分

途中桜が満開でいい気分でした

 

道に迷いながらもなんとか探り当てたマンション

驚かされることがたくさんありました

プライバシーに関ることもあるので多くは書けませんが、ひとつだけ

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ここはお部屋の入口です

奥様「靴箱が玄関を占拠して車いすが通れなかったので、私が材料を買ってきてこのように組み立てて上に取り付けました」

おかげで車いすは楽に通れます

お部屋のあちこちに患者さんご夫婦の手作りのものがいっぱい

小さなものから大きなものまで作られていました

奥様の話を聞いている間、患者さんはニコニコ(^_^)v

そういえば患者さんの病室にも……(?)

 

さて、

肝心のハムスター

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このように可愛い子が6匹いました

手に載せようとすると怖がります(残念!)

 

患者さんは思っていた以上にお元気でした

 

患者さんやご家族のお話だけで生活を想像するよりも、ひと目見ることでたくさんのことがわかるものです

ずっと以前に研修医の先生に往診の同行をしてもらったとき彼はこんな感想を述べていました

「おうちに行ってみると何倍もの情報量があるものですね」

我が意を得たり! です

 

 

 

 

病棟の看護師さんにレポートをお願いしてつぎの文章をいただきました

ありがとうございます

 

ずっとまえから丁寧に準備もされ、当日も緊張したことと思います

ほんとにご苦労様でした

看護師さんたちの苦労が実ってとてもいい集まりとなりました

 

『緩和ケア病棟では3月25日、「第一回 家族会」を開催しました。

病棟開設当初の2015年6月から2016年3月の10か月の間に入院されていた患者様のご遺族で13家族18名の方が参してくださいました。

「家族会」=「遺族会」はグリーフケアを目的としています。悲嘆(グリーフ)は死別やその他重大な喪失に際して起こる心身の自然な反応をいい、誰にも起こりえるものです。

悲嘆が充分に表出できないと、残された遺族は日常生活にさえ支障をきたしてしまうほどの危機的な状態となってしまいます。家族や友人といった大切な人と死別し、その喪失や辛さを体験し、後悔や心残り、自責の念を抱えた遺族が悲しみと現実を受け入れ、自分の人生を歩んでいくために少しでも力になりたいと考え、家族会を開催しました。

 

参加してくださったご遺族の中には、当時を思い出し、辛くてやっとの思いで病院までの道のりを歩かれた方もおられたと思います。看護師を見ると涙ぐまれるご遺族もいました。

 

家族会は現在の病棟師長であるO師長の司会のもと、病棟開設当初の師長であったN師長の挨拶で始まりました。次にご遺族に簡単な自己紹介をお願いしたところ、事前にお願いしていなかったにも関わらず、お一人お一人が入院中の故人の思い出やご自身の思いを時に涙ぐまれ話してくださいました。20分という枠では収まらないほどの貴重なお話でした。話を聴き、涙ぐんでいるスタッフもいました。

茶話会ではコーヒーや紅茶・お菓子を囲みながら医師や看護師と故人との思い出やご遺族の近況など、短い時間ではありましたが、たくさんのお話を聞かせていただきました。中には「亡くなった時に泣けなかった。どうしてかしら?私に怒っていると思う。もっとして欲しいことがあったと思う。」など自責の念を話される方もいました。そういった思いを溜め込まず、話してもらうことがグリーフケアの第一歩だと感じました。

ある医師が、「亡くなられた人の身体はなくなっても魂は生き続けることができる。誰かがその人のことを思い出すだけで、その人の魂は生き続けている」と言われていたことを思い出しました。

その後はボランティアさんによるフルート演奏があり、素晴らしい音色に癒されました。

最期にY医師・M医師の挨拶があり、終了となりました。

 

2時間のプログラムでご高齢のご遺族には疲労もあったと思います。

参加してくださったご遺族の皆様にスタッフ一同心より感謝いたします。

ご遺族からいただいた感謝のお言葉は私達の何よりの励みになりました。今後のケアに生かしていくように努めなければなりません。

ボランティアの皆さんにもたくさん協力をしてもらいました。初めての家族会で不手際もあったと思います。振り返りをして、次回の開催に繋げていきたいと思います。』

 

緩和ケア病棟 N看護師さんより

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昔からいろんな書物を読むことが好きで、手当たり次第に買ってきては読んでいました

直接緩和ケアに関係しないことから、専門書まで気になったものはどんどん目を通しています

そのときにちょっとしたことで気にかかることばというものに出会うことがあります

 

「予後1~2か月と予想されます」と言われて入院された女性患者さん

ご家族が一生懸命に介護されていました

毎日病院に来られ、朝早くから消灯時間まで付き添われていました

たまにご自分の病気で受診され、そのときには顔を見ないことがあり、「今日はどうされたのかな?」と気になってしまいます

残された時間、どのように過ごしていただこうかと考えました

気分のいいときには外出はどうだろうか?

どなたか会いたい人はいないのだろうか?

食欲がないときには、何かたべたいものは…?

などなど

でも患者さんはいつも「とくにありません」と答えられます

 

ご家族とも相談しました

「急な入院になったので家のことが気になっているようです」とのこと

それならとご自宅への外出を勧めましたが、「今はいいです」との返事

 

時々痛みが強くなり医療用麻薬を飲むことで改善します

今ならまだできることはあるのにねと、思いましたが、患者さんはやはり「とくにありません」と同じような返事です

 

だんだんと病状が進み、意識状態が混濁してきました

でも痛みのコントロールはまずまずで穏やかな表情をされています

最期はご家族に見守られながら静かに旅立たれました

 

お見送りの際にご家族は「本人は満足していました」と話されました

 

また在宅でのことです

高齢のお母さんを二人の娘さんが交代で介護されていました

せん妄状態が現れても娘さんたちはあわてる様子もなく

「お母さんそばにいるからね」

と優しく声をかけています

娘さんの声を聞くと患者さんは落ち着かれます

「優しい母親でした。私たちは今その恩返しをしています」と娘さん

いつも穏やかな態度で付き添われていました

 

「何かご希望は言われていませんか?」と尋ねても

「このままがいいようです」との返事が返ってきます

 

徐々に呼吸が弱くなり、日付が変わろうとするころに永眠されました

ふたりの娘さんたちはほっとした顔をされ、それでも満足されていました

 

私たちは終末期の患者さんに対して、「今のうちにできること、したいこと、やり残したことをしていただこう」と努力します

多くの患者さんは「○○さんに会いたい」「□□が食べたい」「一度自宅に帰りたい」などご希望を話され、その実現に向けてスタッフとご家族とで相談し、なんとかご希望が叶えられるようにと計画をします

 

でも上記の二人のように「何もありません」とおっしゃる方も少なからずいます

そのことは本心なんだろうか、私たちやご家族に気を使っているんじゃないだろうかなどと考えてしまうこともありました

 

そのようなときある本に次のようなことが書かれていました

『何かを一緒にする人は、他にもいる。ただ、一緒に何もしない、という人は、他に誰もいない』

アメリカの有名な先生の言葉だそうです

 

一人目の患者さんのご家族は毎日病院に来られても、お部屋の椅子に座られ、患者さんと一緒の時間を静かに過ごされていました

二人目の娘さんたちも時々話しかけたり、体を拭いたりされることで一日を過ごされていました

 

このような寄り添い方もあるんだなあと考えさせられました

 

最期の過ごし方は、人それぞれ、決して私たちが押し付けるものではないことに改めて気づかされています

けっして「何もしない」というわけではないのですが…

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