いつもの休日の朝

いつものK-珈琲のモーニング

 

若い店員さんの声、子供たちの歓声、仲のよさそうな高齢者の集団の話し声…

その喧噪のなか、一気に自分の世界にダイブするときの心地よさ…

 

「痛み」

「呼吸困難」

「眠気」

・・・・・

「くすり」

コーヒーカップをどけて空いたスペースにノートパソコンを置く

いつの間にかいくつかの文字が並ぶ

 

そして

“ミッシングリンク”の言葉が浮かぶ

 

腫瘍により気管支が閉塞しかけている患者さん

痛みと呼吸困難が毎日のようにあり、苦しんでいました

 

ともにモルヒネが効果的ということはわかっています

しかし病状が進行してもある一定以上のくすりの増量には同意されませんでした

 

症状はつよい

くすりの効果は自覚されている

 

このふたつから考えられる結論は、「モルヒネの増量」でした

 

しかし頑ななまでに今のままでいいですと言われます

 

ふたつの間にいったい何があるんだろう?

疑問でした

 

ご本人に尋ねても「今はこのままでいいです」の繰り返しです

 

過去にいちどだけ呼吸困難が強くなりくすりを増やしたことがありました

そのときに体がだるくなる、眠気がつよくなる、と、もとの量にもどすことを希望されました

 

今回もそれが理由だろうと考えていました

何度増やすことを提案してもいっしょの返事です

 

ある日気分がよさそうな時を選んでもういちどお話を聞きました

モルヒネがよく効くことは分かっています

「眠くなったり、体がしんどくなるのでお薬を増やすことを躊躇されているのですか?」

しばらくどのように答えようかと考えられているようです

 

「くすりを飲むと楽になることはよくわかっています。でもくすりが増えるとしだいに効かなくなるのではないかということがとても心配で我慢していました」

 

これがこの方の“ミッシングリンク”だったようです

(それほど大げさなものではないのかもしれませんが…)

 

その後モルヒネの説明をきちんとさせていただき、よく考えてみますとの返事をいただきました

 

 

ミッシングリンクとは「連続性が期待されている事象に対して、非連続性が観察される場合、その間隙を指す」と述べられています

生物学の用語でした

しかし私の好きなミステリの世界でもよく出てきます

「失われた連環」「見えないつながり」などとも言われるようです

 

患者さんに正面から向き合うことで医療での“ミッシングリンク”が明らかになることをこれまでも時々経験していました

 

 

そのために、ゆとりを持って仕事をしたいと思う毎日です