毎日が失敗の連続です

そのつど反省しながら、それでも繰り返してしまうのは

私の力不足だと思っています

 

最近の出来事からの教訓です

 

 

外来で診療をしていて気になる言葉があります

患者さんから返答が難しいことを投げかけられたとき

「それは年のせいですね」

「老化現象なのでしょうがないです」

などと返事をしてしまうことがあります

残念ながら他の先生からも聞こえてくることがあります

 

そう告げられた患者さんは何も言えなくなり

看護師さんに悲しそうな表情を向けながら

診察室を後にされます

ときには

「わたしはそんなに年寄りではありません!」と

怒って帰られる患者さんもいます

 

また

多くの症状を聞いたあと

「みんないっしょなんですよ(あなただけじゃないんです)」と

返してしまうことがあります

私の体験では

阪神淡路大震災のときに同様の言葉をたくさん聞きました

 

 

そんなとき患者さんは

この医師には何を言っても聞いてもらえないんだ

きっと私には関心がないんだ

 

と、それ以上話すことをあきらめたり

いつの間にか

医師や病院をかわっていかれることになります

そして私たちはあとになって気づくのです

 

 

入院の現場では簡単ではありません

反論される患者さんもいますが

多くは何も言わなくなってしまいます

そして

看護師さんたちに

不満をいっぱいぶつけられるのです

 

 

何度も同じ経験をしてきました

 

あるときつぎの言葉を知りました

 

『怒っているひとは傷つけられているんです』

 

 

★高齢の患者さんでした

 

だんだんと病状が進み

身体的な苦痛とともに精神的な苦痛が増えてきました

ご自分の病気は生易しいものではなく、これ以上よくならないことは

十分に理解をされていました

でも聞いてほしいことはたくさんあります

 

医師からはその都度

病気が進行しているのでしかたがない

と説明をされます

 

思いが伝わらないと

感じられてからは

これ以上の訴えをしなくなりました

 

診察時に訴えることをやめたため

病状を受け入れたのだろうと

医師には思われていました

 

一方では

看護師さんたちに

たくさんの思いを吐露され

ときには涙を流す場面もありました

みんなが時間をかけながら

患者さんの思いに寄り添っていました

 

 

緩和ケアでは

病気の進行は多くの場合避けられません

しかし

受け入れるのは患者さんであり

説得や一方通行の説明などで

外から持ち込むものではありません

 

私たちは

「それでも何かできることはないだろうか」

と日々悩むことが

役割だと思っています

 

 

 

もうひとつ私が大いに反省した出来事がありました

 

 

★患者さんは毎日のように苦痛に悩み

心も体も疲弊していました

 

近い時期に急な変化がおこるだろうと予測されたので

まずご家族と話をしました

 

そのことを知った患者さんは憤慨され

私とのあいだの関係が危うくなりました

 

※苦しんでいる患者さんをさらに不安にさせたくない

※ご家族には急変時にあわてないように準備をお願いする

ことを目的にした話し合いだったのですが…

 

この行動が仇になりました

 

 

患者さんはこれまですべてのことを

ご自分で聞き

判断し

決定してこられたことを

私は知っていたのに・・・です

 

患者さんの努力をないがしろにし

気持ちを裏切ることになってしまったのです

病状の変化に対しての私の焦りがありました

 

―――先生の言うことは聞かない!

 

患者さんとはコミュニケーションがとれているという油断がありました

 

すぐさま患者さんに頭を下げ

お詫びしました

そして

改めて約束をしました

患者さんの意思を大切にすること

重要なことはみんなで一緒に決めていこうと

 

知らず知らずに患者さんや取り巻く人たちを

傷つけてしまうことがあります

患者さんだけでなく

ともに働くスタッフに対しても同様です

 

のちに気づき

自分も落ち込むことの繰り返しです

 

さらに精進が必要です

 

 

『知らぬ間に傷つくのは

 心の柔らかい場所』

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(これはある歌詞の一節です)

 

 

 

 

 

 

病院との往復、食料の買い出し以外には

自宅で過ごすことが多くなりました

 

今まで買いだめしていた本を

片っ端から読破しています

 

その中に次のコミックがありました

気なりながら手を付けずにいましたが

この機会にじっくりと目を通すことができました

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こちらは作者の2冊目のコミックです

 

 

日頃近くにいて

でもなぜか「遠い存在」であった

看護師さんたちのお仕事を

理解する手助けになっています

 

 

緩和ケア病棟で働いて約5年

今まで以上に看護師さんたちとの距離は近くなったように

感じています

 

日常のコミュニケーション

患者さんやご家族のことをめぐってのカンファレンス

 

頻繁に意思統一を行ってきました

ときには叱られながらも

 

 

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いろんなお話が出てきます

 

“看護師は普段どんな仕事をしているのか”

のくだりは

看護師さんの日常を知る入門編として

ともに働くほかの職種の方々に

読んでいただきたい内容です

 

 

2冊目の本への

出版社からのコメントを引用します

 

『ある老人ホームで起きた入所者の食事中の医療事故。担当した看護師さんの責任が問われ、なんと有罪判決が出てしまう。この判決に対する思いをツイッターにあげたところ、大変な反響を呼んだ著者のぷろぺらさん。「大変な仕事」という一言でくくられがちな看護・介護の実態を、大いに笑いながら、でもちょっとまじめな問題提起も受けとめながら、お楽しみください。』

 

それが「特別描き下ろし」として載っています

 

一部だけ引用させていただきました(ご容赦ください)

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引用:https://www.kango-roo.com/comic/6645/

 

「『こんな仕事』に

プライドをもっている人たちが

今もどこかで踏ん張っています」

 

「『全員が満足できる生活』

の『全員』の中に入れてもらう

ことができるようになるには」

 

「私に何ができるのか

あなたになにができるのか」

 

と作者は問いかけています

 

 

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新型コロナウイルス感染の現場で踏ん張っているスタッフ

その他の

様々な医療や介護の現場で働いているひとたち

 

みんなへのエールのように受け止めました

 

 

 

何度でも読み返したくなるような

1冊です

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いまだに面会制限がつづいており

患者さんとご家族にご不便をおかけしています

 

私はIT機器には弱いのですが

師長さんから有力な手段を紹介してもらいました

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“Zoom”です

多くの場面で活用されています

 

さっそく患者さんとご家族との間でお話をしていただきました

 

顔を見るなり

泣き出す患者さん

 

画面の向こう側では

ご家族がニコニコされています

 

しばらくお互いの状況を話しあわれていました

 

その姿を写真に撮らせていただき

双方にプレゼント

 

そのときの1枚です

個人情報となるので笑顔の写真の掲載は控えさせていただきました

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それからも

何人かの患者さんに使ってもらっています

 

なかには長時間その場を離れがたかった方もいたそうな…

 

工夫をすればいろんな方法があるものですね

 

 

 

緊急事態宣言が発出されてから

入院患者さんの面会を原則お断りせざるを得なくなりました

 

患者さん、ご家族のつらいお気持ちをお察しいたします

 

私たちスタッフも悔しさでいっぱいです

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その中でも看護師さんたちは患者さんとご家族との間の橋渡し役として

奮闘してくれています

 

ご家族が病院の1階に来られたと連絡が入れば

すぐにかけつけ

差し入れを受けとり、患者さんに届け

毎日のご様子や病状をお伝えしています

ご家族からは大切な患者さんへのメッセージをお預かりして

患者さんにお伝えします

 

 

きびしい状況のなかで

みんながんばっています

 

 

そんな中

やさしい気持ちになれるお話があります

紹介いたします

☆初老の男性です

 

面会の制限が出てから

誕生日を迎えられました

 

ご家族のみなさんから

ラインでお祝いのメッセージが届きました

 

直接の電話もかかってきました

 

お孫さん:おじいちゃん、がんばってね!

患者さん:はい、がんばるよ!

 

それぞれのご家族から

お祝いの言葉をかけられ

とてもうれしそうでした

 

 

また別の日のこと

 

受け持ちのナースが準備して

スタッフみんなからの

お祝いメッセージの色紙をプレゼント

そして

みんなで

ハッピーバースデーの歌 (^^♪

 

とてもいい笑顔でした

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☆まだ若い男性の患者さん

 

奥様とふたりで仲良く暮らしておいででした

新型コロナウイルスが蔓延するまえに入院

 

毎日のように来られていた奥様が突然来れなくなりました

 

でもひんぱんにスマホで会話をされていました

 

奥様からの差し入れのたびに

ナースは間を取り持ちます

 

患者さんからは

「妻に愛していると伝えてください」

との伝言

 

スマホ越しでは

手をつなげない……

 

奥様とふたりで撮った写真を

いつも胸の上に抱いて

休まれていました

 

奥様からは

心のこもったお手紙を託されました

 

 

宣言の発出後

面会制限が開始となった日が

おふたりの結婚記念日でした

 

かねてからこの日には

奥様が泊まられる予定でしたが

それが叶わないとわかり

数日前に前倒しで実現されました

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どのような会話がかわされたのでしょう…

 

 

本来なら外出や外泊

ご家族のお泊り

病室やデイルームでの誕生日パーティー

などなど

 

大いにご援助させていただくことなのですが

スタッフみんな

悔しい思いでいっぱいです

 

 

私たちのあたりまえの

日常の生活を

大きく変えることになった感染症

 

 

けっしてくじけるわけにはいきません

 

緩和ケア病棟としてできることは何か

見つけようと思っています

 

 

 

 

 

 

★大げさなことを言えば

医療者としての生き方に影響を与えた出来事が

ふたつあります

 

・阪神淡路大震災

・新型コロナウイルス感染症

です

 

患者さんへの向き合い方や生き方に

変化が生まれたように思います

 

PS:

前回のブログで書いた患者さんに向けたメッセージカードを載せます

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兵庫県は新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の対象県となりました

 

そのため入院患者さんの外出や外泊はもとより、ご家族の面会もこちらから来ていただく必要があるとき以外お断りせざるを得ない状況になりました

 

初回の緩和面談もできるだけ短時間で終えるように努力しています

 

 

入院患者さんたちのストレスはいかばかりかと心を痛めています

 

少しでもなにかできないものかと……

 

 

  • 毎年この時期にはみんなで近くの公園に桜の花見に出かけていました

外出禁止のため考えました

 

――満開の桜の写真だけでも見ていただこう

メッセージを添えてお一人ずつ送らせていただくことにしました

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  • もうひとつ

折り紙が得意な患者さん

 

たくさん折っていただきました

 

それを看護師さんが

“○○の水族館”

と称して

きれいに張り出してくれました

 

通りかかる人みんな

笑顔になります

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今のつらい状況が

早く改善することを願っています

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