このたび緩和ケア病棟開設の準備段階からかかわってくれていましたひとりの事務職員さんが職場を移動となりました

 

約5年間のご苦労と努力を労いたいと思います

 

この機会に「緩和ケア病棟における事務職員の役割」ってなんだろうと考えてみました

 

緩和ケアにおけるチームということで検索すると、おおむね次のような図が見られます

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https://www.juntendo.ac.jp/hospital_nerima/clinic/cancer/activity/kanwa_care.html

 

この中にはボランティアさんも欠けておりますが、「医療事務職員」の位置づけもはっきりしていません

医療ソーシャルワーカーはありますが、資格をもった専門職としての位置づけのようです

 

私は研修医時代から多くの職種の人たちとともに医療を担うことに恵まれてきました

医療事務や一般事務を担当する職員もその例外ではありませんでした

 

 

とくに頻繁に変更される診療報酬や様々な難しい制度に関して教えてもらったり、患者会では事務局的な役割を担ってもらいいっしょに取り組んできました

その中で医師として何が求められているのかを示唆してもらったりもしました

ともに悩み成長してきたと言っても過言ではありません

 

 

今医療の分野でもITなどの進歩に影響を受けながら、実務の多様化や複雑化が進んでいます

ますます多くなった医療・介護関連職種の連携はよりバージョンアップが求められ、その際の事務職員の努力に頼ることが増えてきました

 

 

☆私たちの病院が加盟している全日本民主医療機関連合会の文章から引用します(若干の改変をしていますが主旨は変わらないと思います)

『事務集団の役割』というテーマです

3点指摘されています

 

#1.正確な実務と統計・情報管理を担い、それを通して全職員参加の医療・介護事業と経営に貢献する

#2.無差別平等の医療と介護の深化・発展のために、多職種協働(多職種連携と言いかえてもいいでしょう)と人づくりをささえる

#3.憲法の立場で安心して住み続けられるまちづくりの活動の推進者とな

る(地域包括ケアのなかで)

 

そのためには一人ひとりが担当する分野で必要な知識を身につけることを強調しています

 

とても大事な役割であり、仕事です

だから他の職種からの信頼もここにあるのでしょう

 

 

さて医療事務と緩和ケア病棟とのかかわりなのですが

開設以降にはたくさんのことが前進しました

 

  • 面談の依頼⇒面談予約⇒面談⇒「登録」あるいは「入院のベッド調整」⇒入院、そして退院後の返信など

一連の事務作業は膨大です

このかたちができあがったのは成果でした

面談後の紹介元への連絡や入院依頼時のベッド調整も重要な役割です

上記#1に相当するでしょう

  • 私たちの病棟は年1回まとめの会議を行なっています

1年間の患者さんの統計を詳細にまとめてもらうことで、次の1年の課題を明らかにする議論の参考としたり経営の大切な資料となっています

この点も#1になるでしょう

  • 私たち医師や看護師が気づかなかった患者さんの経済的な面での困難を指摘されたこともあります

#2の課題です

  • 地域連携担当看護師と協力しながら他の医療機関との連携を進める窓口であり、医療生協の組合員さんが最初に相談にこられる窓口でもあります

#3と考えていいと思います

 

まだまだ書ききれないくらいたくさんの仕事をこなしてもらいました

この役割をつぎの人に引き継ぎながら

新たな任務でがんばられることを大いに期待して

送り出します

 

お疲れ様でした!

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梅雨が明けたはずなのに

湿気が多く寝苦しい夜のこと

 

病棟からの電話で気持ちが引き締まりました

 

――患者さんが急変されました

 

すぐに駆け付けたところ…

 

――ごきょうだいは来られました

でも奥様に何度も電話をしているのですが応答がありません

 

と、看護師さんもごきょうだいも戸惑い気味です

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ひとりで自宅で倒れているようならどうしよう?

耳が遠いとうかがっていたのできっと電話の音が聞こえないのでは?

夜が明けるまで待ちましょうか?

やっぱりなんとか連絡がとれないものでしょうか?

 

 

住所を調べました

患者さんと奥様が暮らしている住宅は

同じ建物に入っている老人ホームが見守りを引き受けてくれていることがわかりました

 

さっそく連絡です

深夜にもかかわらずご自宅を訪ねてくれました

 

――チャイムを押しても返事がありません

 

もういちどみんなで相談

「たしか玄関のあそこにカギを置いていると聞いたことがあります」

とごきょうだい

ホームの方にも伝えました

 

奥様は超高齢でした

患者さんの状態を伝えると動揺することが予測されます

お一人で病院まで無事に来てもらえるか心配です

 

 

――私が運転します

いっしょに迎えにいきましょう

 

とごきょうだいに提案しました

幸いにご自宅は普段から往診に行っている地域にあります

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だいじょうぶ

奥様は熟睡中でした

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やっとのことで起きていただき

焦らせずに準備を整え

ともに病院へ

 

最期のときを見守っていただくことができました

 

よくない状態であるとお話はしていましたが

急に変化があるとは予測していませんでした

 

奥様の驚きと悲しみはどれほどだったでしょう

 

お一人になられ

これからの生活が気がかりです

 

老人ホームの見守りにお願いせざるをえませんが

そのような環境にあることが唯一の救いになります

 

同じような高齢のご夫婦に出会うことが何度かあります

そのたびにおひとりになられるご主人あるいは奥様

これからの人生をどのように過ごされるのか

支える人はいるのだろうか

いつも気になっています

 

 

できるなら

私たちの病院が

少しでもお役にたつことができればなあ

と思っています

 

残されたご家族が通院されたり

往診をさせていただいたり

と、なんらかの関わりを継続していることがありますが

そうでなければ

今どうされているんだろうと気にかかる方々が少なくありません

 

残された人たちが

安心して生活できるような環境が

しっかりと整えられること

 

これも「地域包括ケア」の役割りだと強調したいと思います

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緩和ケアプログラム『家族会』の取り組みから見えてきたもの

緩和ケア病棟 T師長

 

緩和ケア病棟開設から4年を迎え、この間に開催してきた当科の『家族会』の取り組みは、先日の7/13に6回目を迎え無事開催できました。

 

緩和ケアプログラムは、世界的に、患者様とあわせてご家族のケアを行うことが基本となっています。家族ケアは、患者様の生前はもちろん、死別後に遺族となった家族に対して、遺族ケア・死別ケアとしても行うことになっています。 大切な人を亡くしたとき、残された家族は、生きる意味を失い、強い悲しみを感じ、新しい人生を歩み始めることが困難な状態に陥ることがあります。このような強い悲嘆(グリーフ)を抱えることは正常であると言えますが、遺族がその苦しみを乗り越えるためには、周りの人々の適切な援助が必要であると考えられています。

当科では、入院から死別後約1年を迎えられるご家族を対象に、『家族会』の案内~開催を遺族グループ中心に取り組んできました。会の目的は、ご家族とスタッフ、ボランティアさんたちと、故人をしのび思い出を語り合い、この間のご家族の様子をきかせていただくなかで、ご家族のそれぞれの悲嘆の程度がどのような状況にあるのか、また、この会を通して協同病院とのつながりを意識してもらい、ご家族があらたな一歩を踏み出せるような機会にしてもらいたいとの強い思いと同時に、参加によって私たちスタッフの思いも救われており、故人とご家族との出会いからつながりに感謝の思いも込めて取り組んでいます。

会の案内は、毎回50~60家族の方を対象に案内はがきを送り、参加されるのは10~15家族前後です。プログラムは、土曜の午後2時から4時まで、「開催挨拶」から「スタッフ紹介」、「ご家族お一人ずつに思いのたけを語ってもらい」、「スライドショー」のあとは「茶話会」、「スタッフによるピアノやフルートの生演奏やボランティアさんによる朗読」など、毎回、開催プログラムを試行錯誤し工夫を凝らしています。

 

実際に参加いただいたご家族からのアンケートより、『同じ悲しみやさみしさを持っているご家族の話を聞いて、自分も前向きに頑張っていこうと思いました』『思い出話をする中でほんとにいろいろなことを覚えてくださっていて、うれしさでいっぱいでした』『改めて先生はじめ素晴らしいスタッフに恵まれていたと再認識いたしました。有意義な時間を過ごせたかと感謝しています。次回の開催を楽しみにしています』『みなさんにお会いしてお礼を申し上げたいとずっと思っておりました。その機会を与えてくださり感謝しております。またひとつ、心の区切りがつきました』『緩和ケア病棟のスタッフ皆様の温かい思いのこもった家族会、参加できたこと良かったです。次回もぜひ参加したいです。私も頑張って元気に毎日過ごしていきたいと思います』『遺族の皆様の気持ちや、われわれ家族を知ってくださってる先生、看護師さんの助言を大切に残りの人生を生きていこうと思っています。写真は人生の1ページになりました』『一年だけでなく、子供たちもつれてまたお会いしに行ってもよいでしょうか?またこのような機会があれば是非参加したいです。感謝の気持ちでいっぱいです』と、このような私たちのケアも肯定してくださり、元気にさせてくださる、もったいないくらいの大切にしたいお言葉をいくつも頂いています。ご家族が悲しみの中でも、後退や前進を繰り返し、少しずつ前に向かわれている様子を知ることができる機会は、私たちスタッフのグリーフケアにもなっています。そして、故人が伝えきれなかった、ご家族への思いをお伝えすることができたり、ご家族もご本人と一緒に病気と闘い、ご家族が確かに支えてこられたことを私たちスタッフが認め、ねぎらうことで、ご家族が自分たちの存在意義を肯定でき、ご家族自身が一つの思いに踏ん切りをつける作業(グリーワーク)を行っていくことの支えになっているのだと、確信が持てます。

家族会の開催は、大変な作業でありますが、このように大切な取り組みを、私たちはほこりをもって今後も継続していきたいと思っています。

 

しかし、開催当初より、家族会に参加されなかったご家族の中には、正常ではない複雑性の悲嘆にさいなまれていないかがスタッフの気がかりであり、どうケアをしていくべきか、答えが出せずにいましたが、4年目を迎え、ある一つの答えを導き出しました。それは今年度の遺族ケアグループで、あらたにこれまでの全ご家族に家族会の案内を行い、近い将来、「遺族主体の家族会の開催」をしていくことが必要ではないかと考え、現在取り組みの真っ最中です。前回の案内には参加できなかったご家族も、日が過ぎれば参加ができる方がおられるかもしれないと考えると、不安もありますが、初回(来春)を是非形にしていきたいと思いますので、その際には皆様のご理解とご協力をお願い致します。5年目へ向け、まだまだ当緩和ケア病棟はみんなで力を合わせて、精進していく所存です。

病床数の増加もあり今年度は年に3回に分けての家族会開催となり、次回は11月を予定にしています。

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今年も病棟にセラピー犬がやってきました

患者さんたちは心待ちにされています

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今回はふたり(?)です

 

各お部屋を訪問されます

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患者さん、ご家族は「かわいいね」「おとなしいな」

と笑顔がはじけています

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中には

顔をいっぱい舐められて

うれしそうにされた患者さんも

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「日本アニマルセラピー協会」のホームページにはつぎのように書かれています

 

セラピー犬になるためには認定試験に合格しなければなりません

「合格の目安」という項目がありました

 

・誰にでもなつくこと

・他の犬と仲良くできること

・座れ・待てが出来ること(出来れば伏せも)

・無駄吠えが無いこと

・飛びつかないこと

 

とあります

 

人間にとっても難しいことを

要求されるんだなあと思いました

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またこのような記載もあります

 

「心臓疾患の患者さんに対する調査では、ペットを飼っている人は1年後に53人中3人死亡、飼っていない人は1年後に39人中11人死亡という、死亡率に大きな差が生じています」

 

 

患者さんたちの笑顔をみたり

感想を聞いたりすると

間違いなく心が癒され

体調も良くなる

という効果があるようです

 

これからも

時間が許せば

何度でも訪問してもらえることを

期待します

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元気でいてくださいね!

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Aさんは長くひとりぐらしをされていました

Aさんにとっては地域に暮らす友人や仲間とのつながりが生きていく上での元気の源であったようです

 

ある日のことです

みんなで約束をしていた行事がありました

 

「Aさんはどうしたんだろう」

「いつもまっさきにやってくる人なのにね」

 

みんなは口々におかしいなと言い合っています

 

電話にも出てくれません

親しい人たちでAさんのご自宅を訪ねました

 

玄関で呼びかけても返事がありません

その日の朝刊が差し込まれたままです

早起きのAさんにしてはおかしいことでした

 

 

「あんしんすこやかセンター(神戸市の高齢者の介護相談窓口)」に連絡しました

 

センターの職員は連絡を受け

すぐに警察に届けました

 

 

……Aさんは、ご自宅で倒れていました

 

すぐに救急車を呼び

病院に運ばれ

一命を取り留めたと

 

あとになって仲間たちは報告を受けました

 

1日遅ければ

間に合わなかったそうです・・・

 

 

……Aさんは今

病院でリハビリを頑張っておられます

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このお話

私は先日の医療生協の総代会のとき

組合員さんの報告の中で知りました

 

 

とても感銘をうけたので

後日当事者の組合員さんたちから

詳しいお話をお聞きしたのです

 

 

組合員さんは次のように報告を結ばれています

(そのまま掲載させていただきます)

 

 

『日頃から(医療生協の)班活動など地域の主体的なイベントにお誘いの声をかけ、ともに過ごす時間をつくることが安否確認にも関わる大切なことなのだということを実感をもって体験し、今年の組合員集会ではあんしんすこやかセンターのスタッフを迎え、話してもらったところ質問もかなり出ました。高齢者の地域見守り活動に高齢者が増える中、互いの見守り合いが大事だと思いました』

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私たち神戸医療生協は

理念として「三つの輪」をかかげています

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「助け合いの輪」がいま地域で広がりを見せています

 

 

このお話も「助け合いの輪」のひとつですが

私は組合員さんからお聞きして

つぎのようなことを思いました

 

 

☆このなかには“だれかのために”という熱意がある

☆一方的な見守りではなく、“見守り合う”という考えが斬新だ

 

と感じた次第です

 

 

私たちの住む地域には

このような取り組みがたくさん行われています

 

 

それが

私たちにとって

たとえ一人暮らしとなっても

年をとっても

「安心な暮らしの保障」

となっているのでしょう

 

けっして上から押し付けられたものではありません