終末期を迎えた癌の患者さんには『寄り添い』が

ご家族には『支え』が

と考えています

 

とくに『支え』に関して最近あった出来事をお話します

 

 

Aさんは70台の穏やかな女性でした

 

入院してこられたときは思ったよりもお元気で

Aさんもいちど家に帰りたい(退院したい)と望んでいました

 

そのための準備をしていましたが

急に病状が変化し

退院が難しくなってしまいました

291-01

 

それからは食欲がなくなり

気持ちの落ち込みがみられる日が続きました

 

 

Aさんはシングルマザーの娘さん、小学生のお孫さんといっしょに暮されています

 

娘さんはお仕事をしながら

毎日Aさんの面会に

ただ新型コロナウイルス予防のため時間に制限があります

母娘で話す時間は限られます

 

それでも頑張っている姿をみるたびに

頭が下がります

 

 

「きょうだいは男ばかりなので、私がいることで救われているよ って言ってくれるんです」

「弱っていく母を見るのはつらい、でもいかなければきっと後悔するんじゃないかと…」

面談のときには娘さんとお兄さんが時間をやりくりして来ていただいています

娘さんの存在は大きいなあと感じるときです

 

娘さんも病気を抱えています

友人からは

「それでもあなたはよく頑張っているよ」

と、励まされているそうです

 

この話は看護師さんの記録からです

続けて

「傾聴し、時にねぎらい、Aさんの状況をお伝えし、一緒に病室に入る」

「おふたりは手を取り合ってにこっと笑われた」

「面会ができないお孫さんの声をスマホで聴かせている」

とかかれていました

 

 

お孫さんは小学生です

働いている娘さんのかわりに

小さいときからAさんがお世話をされていたそうです

 

大好きなおばあちゃんに何とかして会いたい!

お孫さんのつよい希望

でも面会者には年齢制限が…

291-02

 

しだいに弱ってくるAさん

酸素が必要となりました

血圧が下がってきます

眠っている時間が長くなります

 

判断のしどころでした

短い時間だけれど

会える許可をいただきました

 

お孫さんの顔をみてほほ笑むAさん

「今までありがとうって伝えないと」と娘さん

「返事してくれないのがさみしい」とお孫さん

お互い言いたいことは山ほどあったと思われますが

声になりません

 

言葉を交わすことはあまりなかったけれど

おばあちゃんと離れたくないという気持ちは理解できます

――今夜はそばにいたい

 

しかしこれ以上の滞在は難しく

やむなく帰ることになりました

 

 

ふたたび看護師さんの記録です

「お孫さんが会いに来てくれたことがAさんにとっては何よりもかけがえのない時間となった。娘さんから〇〇(お孫さんの名前)くんが会いに来てくれたことがおばあちゃんにとって救いになったのだということ、ありがとうを〇〇くんに伝えてあげてくださいと娘さんにお願いした」

そして

「コロナウイルスの影響でAさんやご家族様に辛さを強いてしまっていることを謝罪した」

と書かれていました

 

お孫さんからのパワーをいただいたからでしょうか

Aさんはその後少し落ち着きをみせました

 

 

――外の風に触れさせてあげたい

 

ずっとベッド上での生活でした

看護師さんたち数人がかりで車いすへ移動

 

病室の窓から見えていた空を

こんどはベランダに出て眺めることができました

 

ご家族と看護師さんといっしょに

笑顔いっぱいの写真が残っています

 

 

「〇〇がもう一度おばあちゃんに会いたいと言ってます」

Aさんの姿をみて心が揺れ動いたのでしょう

 

学校で泣き出し

保健室の先生にたくさんの話を聴いてもらいました

先生もいっしょに泣いてくれたとのことです

 

 

――もう一度でいいから会いたい

そのときには話をいっぱいしたい

 

看護師さんからパソコンを使ったWEB面会を提案しました

 

この日、お孫さんは学校から早く帰ってきます

 

さらに看護師さんの記録

「他愛もない話をしながら、それでもたくさんの話ができている」

「Aさんは言葉がだんだんと増えてきた」

「みんな嬉しそうに話をされていた」

 

お孫さんの率直な思い

「卒業するまで元気でいてね」

 

でも

「覚悟はきまっている、ありがとう」 と

 

 

Aさんはそれから1週間後に旅立たれました

 

 

『ご家族は第二の患者さん』

と言われます

 

Aさんのご家族にとっては多くの支えがありました

 

 

―娘さんにとって

きょうだい、友人、受け持ちを中心とした看護師さんたち、そしてお孫さん

―お孫さんには

なによりもお母さん、学校の先生、看護師さん

 

それから

おふたりにとってはAさんの存在そのものが支えであったことでしょう

291-03

いつも間にか6年目を迎えることになりました

5年間様々なことがありました

大きなことから小さな出来事まで記憶にとどめ

あとを引き継いでもらえる人たちのために

ちょっとずつブログを更新してきました

 

 

6年のスタートにあたり

何か取り組みをしましょうとみんなに提案していましたが

このたびの新型コロナウイルス感染症のため

実現は先送りとなってしまっています

 

 

その中でもブログだけはなんとか継続してきました

 

 

あるとき

「看護学生さんがブログを読んでくれていますよ」

とのうれしい話が伝わってきました

 

無理をお願いして

当の学生さんに感想を書いてもらいました

ご本人の承諾をいただいているということですので

ここに掲載させていただきました

290-01

 

 初めてブログを拝見させて頂いた時は医師が書いているものだとは思いませんでした。

 

それはきっと私の経験の中で医師と患者さんの距離がここまで近いものだという認識がなかったからだと思います。

 

私が貴院を志望した理由の一つに、誰もが平等に安心して医療を受けられるという環境に感銘を受けたということがあります。

 

ブログを拝見していて感じられる先生と患者さんとの関わり方は、その安心に繋がると深く感じました。

 

対等な立場で接しておられることがとても伝わってきました。

 

私が目指しているのは看護師ですが、先生がブログに綴られていることを日々意識しながら看護を深めていきたいと思いました。

 

 

ありがとうございます

この思いを大切にさせていただき

ともに働ける日を心待ちにしています

 

 

また患者さんのご家族からも

「時々見ています  次のブログまでの間が長いとどうされたのか心配していました」

とのお便りがありました

 

職員もたまには目を通してくれているようです

いつもありがたいと感謝しています

290-02

先日医療生協の総代会(毎年この時期に開催しています)が行われました

新型コロナウイルス感染対策から、今年は今までと異なり

参加者を絞って行われました

多くの総代は書面議決での参加でした

 

 

毎回あいさつをさせていただくのですが

今年は多くを新型コロナウイルス感染に関連したものとなりました

 

その部分だけ抜粋し

一部修正および資料の追加を行って載せました

 

 

 

※私は医療・社会保障は次の4つのことに規定されてくるのではと考えています

  • 科学や医療技術の水準
  • 社会政治経済情勢
  • 医療制度
  • マンパワー

の4つです

 

このたびの新型コロナウイルス感染症にてらして考えてみますと、

(1)感染症に対する医療システムの構築やPCRをはじめ抗体などの診断技術、ワクチンや治療薬の開発がすすめられ日々進歩しています

全世界的な協力体制が可能な時代です

 

https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/mext_00004.html

文部科学省のホームページです

 

(2)「自粛要請と一体の補償」の実行が求められてきました

「私権制限」につながる経済的な損失には公的保証が必要です

思い切った財源の確保とそれによる支援が隅々にまで急いで求められています

289-01

 

https://www.shii.gr.jp/pol/2020/2020_06/K2020_0612_1.html より引用しました

 

日本医師会の有識者会議は「PCR検査が進まなかった最大の理由は国から財源

がまったく投下されていないことだ」と指摘しています

289-02

https://www.shii.gr.jp/pol/2020/2020_06/K2020_0612_1.html より

 

「世直しの輪」の重要な課題でしょう

 

(3)長年にわたる低医療費政策

例えば「公的病院の統廃合」「急性期病床の減少」「保健所の統廃合」「医療従事者不足の放置」など、「医療崩壊にいたる危機的状況」をまねいています

医療現場が必要と判断してもPCR検査ができないという事例が相次いでいました

保健所が統廃合され(約30年で55%に減らされています)、職員が減らされてきた

ことも大きな要因です

289-03

https://www.shii.gr.jp/pol/2020/2020_06/K2020_0612_1.html より

 

重症患者さんの受け入れをめぐってのたらいまわしという事態もその一つと考えていいと思います

私たち神戸医療生協の事業所など新型コロナウイルスに感染した患者さんを受け入れていない医療機関も今までにない経営難に陥っています

289-04

新型コロナウイルスの影響で非常に多くの病院が赤字経営に陥っていることが分かった(日病・全日病・医法協調査追加報告 200605)

 

(4)感染した患者さんを受け入れている病院の報道が多くなされていました

その中で頑張る医療者の姿は皆さんもご存じだと思います

民医連・医療生協にも医師不足・看護師不足など、医療従事者不足の中でも踏ん張っている仲間たちがいます

現場はこのような一人ひとりの頑張りで維持できているのが実態です

ここが崩れると医療崩壊にすぐさまつながってしまいます

コロナ以外の救急患者さんを受け入れる病院も同時に必要であり、すべての医療機関・介護事業所と医療・介護従事者への支援が求められています

神戸医療生協のいくつかの支部から励ましのメッセージをいただきました

また患者さんやご家族からもお手紙をいただいています

本当に感謝いたします

 

☆ある患者さんのご家族からいただいた手紙の一部をご紹介します(前後や途中を私の判断で省略しておりますがご容赦ください)

コロナ禍の中、日々大変な思いをされていると思います。

 感染者がでれば……

 その労苦は大変なものであり、緊張を強いられる日々は心身にかかる負担も重たいも

 のでしょう。

 そのような思いをされて、頑張っておられる医療従事者の方々に、敬意を表することは

 あっても、心ない差別や偏見等あってはならないことがあることを、報道等で目にする

 度、皆様方がそんな悲しく、辛い思いをされることがないよう願ってやみません。

 ご自身の為、大切なご家族の為、ご自愛くださいますように

 

 

※私たちの理念である三つの輪にもとづく取り組みの大切さを今あらためて感じています。

289-05

 

「新型コロナウイルスについての正しい知識をもとう」

「日常生活から感染対策を実践しよう」

と支部や班で学びましょう。

289-05

 

一人暮らしの組合員さん、高齢の組合員さんの困りごとに対して今まで以上に「助け合い」の精神で取り組みましょう

 

 

日本は皆保険制度があることがアメリカの状況との大きなちがいであるとの指摘があります

この制度をさらに充実させ、国民一人ひとりが安心して暮らせる社会にしていく努力を続けましょう

289-06

 

毎日が失敗の連続です

そのつど反省しながら、それでも繰り返してしまうのは

私の力不足だと思っています

 

最近の出来事からの教訓です

 

 

外来で診療をしていて気になる言葉があります

患者さんから返答が難しいことを投げかけられたとき

「それは年のせいですね」

「老化現象なのでしょうがないです」

などと返事をしてしまうことがあります

残念ながら他の先生からも聞こえてくることがあります

 

そう告げられた患者さんは何も言えなくなり

看護師さんに悲しそうな表情を向けながら

診察室を後にされます

ときには

「わたしはそんなに年寄りではありません!」と

怒って帰られる患者さんもいます

 

また

多くの症状を聞いたあと

「みんないっしょなんですよ(あなただけじゃないんです)」と

返してしまうことがあります

私の体験では

阪神淡路大震災のときに同様の言葉をたくさん聞きました

 

 

そんなとき患者さんは

この医師には何を言っても聞いてもらえないんだ

きっと私には関心がないんだ

 

と、それ以上話すことをあきらめたり

いつの間にか

医師や病院をかわっていかれることになります

そして私たちはあとになって気づくのです

 

 

入院の現場では簡単ではありません

反論される患者さんもいますが

多くは何も言わなくなってしまいます

そして

看護師さんたちに

不満をいっぱいぶつけられるのです

 

 

何度も同じ経験をしてきました

 

あるときつぎの言葉を知りました

 

『怒っているひとは傷つけられているんです』

 

 

★高齢の患者さんでした

 

だんだんと病状が進み

身体的な苦痛とともに精神的な苦痛が増えてきました

ご自分の病気は生易しいものではなく、これ以上よくならないことは

十分に理解をされていました

でも聞いてほしいことはたくさんあります

 

医師からはその都度

病気が進行しているのでしかたがない

と説明をされます

 

思いが伝わらないと

感じられてからは

これ以上の訴えをしなくなりました

 

診察時に訴えることをやめたため

病状を受け入れたのだろうと

医師には思われていました

 

一方では

看護師さんたちに

たくさんの思いを吐露され

ときには涙を流す場面もありました

みんなが時間をかけながら

患者さんの思いに寄り添っていました

 

 

緩和ケアでは

病気の進行は多くの場合避けられません

しかし

受け入れるのは患者さんであり

説得や一方通行の説明などで

外から持ち込むものではありません

 

私たちは

「それでも何かできることはないだろうか」

と日々悩むことが

役割だと思っています

 

 

 

もうひとつ私が大いに反省した出来事がありました

 

 

★患者さんは毎日のように苦痛に悩み

心も体も疲弊していました

 

近い時期に急な変化がおこるだろうと予測されたので

まずご家族と話をしました

 

そのことを知った患者さんは憤慨され

私とのあいだの関係が危うくなりました

 

※苦しんでいる患者さんをさらに不安にさせたくない

※ご家族には急変時にあわてないように準備をお願いする

ことを目的にした話し合いだったのですが…

 

この行動が仇になりました

 

 

患者さんはこれまですべてのことを

ご自分で聞き

判断し

決定してこられたことを

私は知っていたのに・・・です

 

患者さんの努力をないがしろにし

気持ちを裏切ることになってしまったのです

病状の変化に対しての私の焦りがありました

 

―――先生の言うことは聞かない!

 

患者さんとはコミュニケーションがとれているという油断がありました

 

すぐさま患者さんに頭を下げ

お詫びしました

そして

改めて約束をしました

患者さんの意思を大切にすること

重要なことはみんなで一緒に決めていこうと

 

知らず知らずに患者さんや取り巻く人たちを

傷つけてしまうことがあります

患者さんだけでなく

ともに働くスタッフに対しても同様です

 

のちに気づき

自分も落ち込むことの繰り返しです

 

さらに精進が必要です

 

 

『知らぬ間に傷つくのは

 心の柔らかい場所』

288-01

 

(これはある歌詞の一節です)

 

 

 

 

 

 

病院との往復、食料の買い出し以外には

自宅で過ごすことが多くなりました

 

今まで買いだめしていた本を

片っ端から読破しています

 

その中に次のコミックがありました

気なりながら手を付けずにいましたが

この機会にじっくりと目を通すことができました

287-01

 

こちらは作者の2冊目のコミックです

 

 

日頃近くにいて

でもなぜか「遠い存在」であった

看護師さんたちのお仕事を

理解する手助けになっています

 

 

緩和ケア病棟で働いて約5年

今まで以上に看護師さんたちとの距離は近くなったように

感じています

 

日常のコミュニケーション

患者さんやご家族のことをめぐってのカンファレンス

 

頻繁に意思統一を行ってきました

ときには叱られながらも

 

 

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いろんなお話が出てきます

 

“看護師は普段どんな仕事をしているのか”

のくだりは

看護師さんの日常を知る入門編として

ともに働くほかの職種の方々に

読んでいただきたい内容です

 

 

2冊目の本への

出版社からのコメントを引用します

 

『ある老人ホームで起きた入所者の食事中の医療事故。担当した看護師さんの責任が問われ、なんと有罪判決が出てしまう。この判決に対する思いをツイッターにあげたところ、大変な反響を呼んだ著者のぷろぺらさん。「大変な仕事」という一言でくくられがちな看護・介護の実態を、大いに笑いながら、でもちょっとまじめな問題提起も受けとめながら、お楽しみください。』

 

それが「特別描き下ろし」として載っています

 

一部だけ引用させていただきました(ご容赦ください)

287-02

 

引用:https://www.kango-roo.com/comic/6645/

 

「『こんな仕事』に

プライドをもっている人たちが

今もどこかで踏ん張っています」

 

「『全員が満足できる生活』

の『全員』の中に入れてもらう

ことができるようになるには」

 

「私に何ができるのか

あなたになにができるのか」

 

と作者は問いかけています

 

 

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新型コロナウイルス感染の現場で踏ん張っているスタッフ

その他の

様々な医療や介護の現場で働いているひとたち

 

みんなへのエールのように受け止めました

 

 

 

何度でも読み返したくなるような

1冊です

287-03