Sさんは多彩な趣味をもった方でした

 

「何かしたいことはないですか?」

看護師が尋ねます

「将棋をしたいけど、相手をしてくれる人がねえ…」

 

さっそく対戦相手さがしです

 

すぐに見つかりました

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お相手は元職員のIさん

 

「結果はどうでした?」

「全勝です」

物足りなさを感じているようなので、今度はもっと強い人をさがします

 

ありがたいことに医療生協の組合員さんにいました

さすがは医療生協です

 

今度は完敗です

 

悔しがるSさん

でも顔はとても嬉しそうでした

 

若い頃から手先が器用でした

手作りの秀作をご家族が持ってこられました

 

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“ひょうたん”で作ったお雛様(写真だけでした)

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看護師さんが廊下の柱に絵を飾ってくれました

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夏らしい彫り物です

ナースステーションのカウンターに並んでいます

実習に来た高校生さんたちの注目を浴びました

 

このようにたくさんのものを作ってこられました

診察にうかがうと、病気の話よりも先に「せんせい、あそこに飾ってあるのがわかりましたか?」と聞かれます

 

知らないってことがわかると不機嫌になるので

「ああ、あれですよね、とても評判ですよ」と私

 

そんなSさんが、前の病院から移ってこられるとき、いちばん大切にしていたものがこちらの絵でした

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とてもいとおしそうに抱えていました

わけを聞くと

「これが私の最後の作品です。これから先はもう描かないと決めました」

 

いつもSさんから見えるところに飾ってあります

 

「みんなのためにもう一枚、描いていただけないですか?」

とお願いしても、とうとう最後まで描いていただくことはできませんでした

 

 

もう一つ驚かされたのが

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娘さんの結納のために準備したすべてSさんの作品です

魚が乗った船も、刺身も…

 

 

「あれも見てくれた? こっちは?」

Sさんの誇らしげな顔を思い出しながら、ちょっとはおもいでを共有させていただくことができたのかなあと思っています

 

*写真を掲載させていただくことについては生前のSさんから了解をいただいています

*つぎは、「おもいで、その二 『思い出づくり』」 です   (つづく)