緩和ケアプログラム『家族会』の取り組みから見えてきたもの
緩和ケア病棟 T師長
緩和ケア病棟開設から4年を迎え、この間に開催してきた当科の『家族会』の取り組みは、先日の7/13に6回目を迎え無事開催できました。
緩和ケアプログラムは、世界的に、患者様とあわせてご家族のケアを行うことが基本となっています。家族ケアは、患者様の生前はもちろん、死別後に遺族となった家族に対して、遺族ケア・死別ケアとしても行うことになっています。 大切な人を亡くしたとき、残された家族は、生きる意味を失い、強い悲しみを感じ、新しい人生を歩み始めることが困難な状態に陥ることがあります。このような強い悲嘆(グリーフ)を抱えることは正常であると言えますが、遺族がその苦しみを乗り越えるためには、周りの人々の適切な援助が必要であると考えられています。
当科では、入院から死別後約1年を迎えられるご家族を対象に、『家族会』の案内~開催を遺族グループ中心に取り組んできました。会の目的は、ご家族とスタッフ、ボランティアさんたちと、故人をしのび思い出を語り合い、この間のご家族の様子をきかせていただくなかで、ご家族のそれぞれの悲嘆の程度がどのような状況にあるのか、また、この会を通して協同病院とのつながりを意識してもらい、ご家族があらたな一歩を踏み出せるような機会にしてもらいたいとの強い思いと同時に、参加によって私たちスタッフの思いも救われており、故人とご家族との出会いからつながりに感謝の思いも込めて取り組んでいます。
会の案内は、毎回50~60家族の方を対象に案内はがきを送り、参加されるのは10~15家族前後です。プログラムは、土曜の午後2時から4時まで、「開催挨拶」から「スタッフ紹介」、「ご家族お一人ずつに思いのたけを語ってもらい」、「スライドショー」のあとは「茶話会」、「スタッフによるピアノやフルートの生演奏やボランティアさんによる朗読」など、毎回、開催プログラムを試行錯誤し工夫を凝らしています。
実際に参加いただいたご家族からのアンケートより、『同じ悲しみやさみしさを持っているご家族の話を聞いて、自分も前向きに頑張っていこうと思いました』『思い出話をする中でほんとにいろいろなことを覚えてくださっていて、うれしさでいっぱいでした』『改めて先生はじめ素晴らしいスタッフに恵まれていたと再認識いたしました。有意義な時間を過ごせたかと感謝しています。次回の開催を楽しみにしています』『みなさんにお会いしてお礼を申し上げたいとずっと思っておりました。その機会を与えてくださり感謝しております。またひとつ、心の区切りがつきました』『緩和ケア病棟のスタッフ皆様の温かい思いのこもった家族会、参加できたこと良かったです。次回もぜひ参加したいです。私も頑張って元気に毎日過ごしていきたいと思います』『遺族の皆様の気持ちや、われわれ家族を知ってくださってる先生、看護師さんの助言を大切に残りの人生を生きていこうと思っています。写真は人生の1ページになりました』『一年だけでなく、子供たちもつれてまたお会いしに行ってもよいでしょうか?またこのような機会があれば是非参加したいです。感謝の気持ちでいっぱいです』と、このような私たちのケアも肯定してくださり、元気にさせてくださる、もったいないくらいの大切にしたいお言葉をいくつも頂いています。ご家族が悲しみの中でも、後退や前進を繰り返し、少しずつ前に向かわれている様子を知ることができる機会は、私たちスタッフのグリーフケアにもなっています。そして、故人が伝えきれなかった、ご家族への思いをお伝えすることができたり、ご家族もご本人と一緒に病気と闘い、ご家族が確かに支えてこられたことを私たちスタッフが認め、ねぎらうことで、ご家族が自分たちの存在意義を肯定でき、ご家族自身が一つの思いに踏ん切りをつける作業(グリーワーク)を行っていくことの支えになっているのだと、確信が持てます。
家族会の開催は、大変な作業でありますが、このように大切な取り組みを、私たちはほこりをもって今後も継続していきたいと思っています。
しかし、開催当初より、家族会に参加されなかったご家族の中には、正常ではない複雑性の悲嘆にさいなまれていないかがスタッフの気がかりであり、どうケアをしていくべきか、答えが出せずにいましたが、4年目を迎え、ある一つの答えを導き出しました。それは今年度の遺族ケアグループで、あらたにこれまでの全ご家族に家族会の案内を行い、近い将来、「遺族主体の家族会の開催」をしていくことが必要ではないかと考え、現在取り組みの真っ最中です。前回の案内には参加できなかったご家族も、日が過ぎれば参加ができる方がおられるかもしれないと考えると、不安もありますが、初回(来春)を是非形にしていきたいと思いますので、その際には皆様のご理解とご協力をお願い致します。5年目へ向け、まだまだ当緩和ケア病棟はみんなで力を合わせて、精進していく所存です。
病床数の増加もあり今年度は年に3回に分けての家族会開催となり、次回は11月を予定にしています。