病棟での勤務も2年以上が経つといろんな意味で油断がでてきます

つい見過ごしてしまうようなことであっても、患者さんに対してはとてもつらい気持ちにさせてしまうことがたくさんあります

 

次の出来事もそのうちのひとつでした

 

 

Aさんは私たちの病棟に入院されてから、痛みなどの症状は軽快していました

しかし長いベッド上の生活のために立ち上がったりすることができなくなってきました

 

ある日かねてからの望みであった外泊から帰られたときのことです

懐かしい人たちに会うことができてうれしかった半面、自分が思うように動けなくなっていることに大きなショックを受けて帰ってこられました

 

私は「望みが叶えられてよかったですね。今度もまた行けるといいですね」とお話をさせてもらいました

 

その後看護師さんに言われたことです

「先生は『また行ければいいね』と言ったけど、私は立てなくなったというのに『行っていいよ』と言われたということは、もうこれ以上はダメだということなのでしょうか?」

 

以前からご家族との間でもお墓詣りや行きたいところに連れていってあげたいねと話をしていたので軽い気持ちで告げてしまいました

 

 

今回のことではありませんが、私たちは良かれと思って「何を食べていただいてもいいですよ」とか「何をしてもかまいません」と言うことがよくあります

そんなときに悲しそうな表情をされる患者さんがいることに気づいていました

 

きっと「私には何の手立てもないので先生たちはそのようなことを言うのかしら」「何をしてもむだだから心残りのないようにという意味だろうか」と思われているのではないでしょうか?

 

患者さんたちは決してすべてをあきらめたり、悟りを開いたりされているわけではありません

「少しでも望みがあるならそのことに賭けてみたい」とはっきりと言われたこともありました

 

良かれと思ったひとことが患者さんを傷つけてしまったことを大いに反省しています

 

さて、先ほどのAさんですが

まずは「それまでできていたのに、立てなくなってつらかった(あるいは悔しかった)のですね」と声をかけさせていただくべきだったと振り返っています

 

 

もっともっと勉強をし、経験を重ねながら、丁寧な対話ができるようになりたいと思います

そして患者さんの体験や思いをよく知り、共有できるように努力をしていくことが務めだと考えています

167-01