緊急事態宣言が発出されてから

入院患者さんの面会を原則お断りせざるを得なくなりました

 

患者さん、ご家族のつらいお気持ちをお察しいたします

 

私たちスタッフも悔しさでいっぱいです

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その中でも看護師さんたちは患者さんとご家族との間の橋渡し役として

奮闘してくれています

 

ご家族が病院の1階に来られたと連絡が入れば

すぐにかけつけ

差し入れを受けとり、患者さんに届け

毎日のご様子や病状をお伝えしています

ご家族からは大切な患者さんへのメッセージをお預かりして

患者さんにお伝えします

 

 

きびしい状況のなかで

みんながんばっています

 

 

そんな中

やさしい気持ちになれるお話があります

紹介いたします

☆初老の男性です

 

面会の制限が出てから

誕生日を迎えられました

 

ご家族のみなさんから

ラインでお祝いのメッセージが届きました

 

直接の電話もかかってきました

 

お孫さん:おじいちゃん、がんばってね!

患者さん:はい、がんばるよ!

 

それぞれのご家族から

お祝いの言葉をかけられ

とてもうれしそうでした

 

 

また別の日のこと

 

受け持ちのナースが準備して

スタッフみんなからの

お祝いメッセージの色紙をプレゼント

そして

みんなで

ハッピーバースデーの歌 (^^♪

 

とてもいい笑顔でした

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☆まだ若い男性の患者さん

 

奥様とふたりで仲良く暮らしておいででした

新型コロナウイルスが蔓延するまえに入院

 

毎日のように来られていた奥様が突然来れなくなりました

 

でもひんぱんにスマホで会話をされていました

 

奥様からの差し入れのたびに

ナースは間を取り持ちます

 

患者さんからは

「妻に愛していると伝えてください」

との伝言

 

スマホ越しでは

手をつなげない……

 

奥様とふたりで撮った写真を

いつも胸の上に抱いて

休まれていました

 

奥様からは

心のこもったお手紙を託されました

 

 

宣言の発出後

面会制限が開始となった日が

おふたりの結婚記念日でした

 

かねてからこの日には

奥様が泊まられる予定でしたが

それが叶わないとわかり

数日前に前倒しで実現されました

285-03

 

どのような会話がかわされたのでしょう…

 

 

本来なら外出や外泊

ご家族のお泊り

病室やデイルームでの誕生日パーティー

などなど

 

大いにご援助させていただくことなのですが

スタッフみんな

悔しい思いでいっぱいです

 

 

私たちのあたりまえの

日常の生活を

大きく変えることになった感染症

 

 

けっしてくじけるわけにはいきません

 

緩和ケア病棟としてできることは何か

見つけようと思っています

 

 

 

 

 

 

★大げさなことを言えば

医療者としての生き方に影響を与えた出来事が

ふたつあります

 

・阪神淡路大震災

・新型コロナウイルス感染症

です

 

患者さんへの向き合い方や生き方に

変化が生まれたように思います

 

PS:

前回のブログで書いた患者さんに向けたメッセージカードを載せます

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兵庫県は新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の対象県となりました

 

そのため入院患者さんの外出や外泊はもとより、ご家族の面会もこちらから来ていただく必要があるとき以外お断りせざるを得ない状況になりました

 

初回の緩和面談もできるだけ短時間で終えるように努力しています

 

 

入院患者さんたちのストレスはいかばかりかと心を痛めています

 

少しでもなにかできないものかと……

 

 

  • 毎年この時期にはみんなで近くの公園に桜の花見に出かけていました

外出禁止のため考えました

 

――満開の桜の写真だけでも見ていただこう

メッセージを添えてお一人ずつ送らせていただくことにしました

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  • もうひとつ

折り紙が得意な患者さん

 

たくさん折っていただきました

 

それを看護師さんが

“○○の水族館”

と称して

きれいに張り出してくれました

 

通りかかる人みんな

笑顔になります

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今のつらい状況が

早く改善することを願っています

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私たちの法人の機関誌「三つの輪」に

毎回いたやどクリニックの木村院長(小児科医)が

コラムを載せています

 

“カンガルーのポケット”

というコラムです

283-01

 

今回は新型コロナウイルスがテーマです

 

しかし発行されるのが4月になるので

木村院長の了解をいただき

緩和ケア病棟のブログに

先行して載せさせていただきました

 

ぜひ眼を通していただきたい文章です

 

 

カンガルーのポケット

 

こころへの感染を防ごう

 小児科医 木村彰宏

 

「今日は△人に、新たな感染が確認されました」。テレビをつけると、新型コロナウィルスのニュースが飛び込んできます。2019年11月に中国で確認された原因不明の肺炎は、世界中に不安を拡げています。 

 

コロナウィルスは、1万分の1㎜の小さな球形RNAウィルスで、風邪の原因の10~15%を占めるといわれます。自力で生きることができないために、ヒトやイヌ・ネコ・スズメなどお気に入りの動物を居場所として生活しています。ウィルスの立場から考えると、居場所を提供してくれる動物に過度のダメージを与えて殺してしまうのは愚かな選択です。風邪ひき程度に軽く感染させた動物が次の動物に出合い、自分を拡げてくれるとラッキーです。コロナウィルスは種の壁を超えて他の動物に感染することは稀とされていますが、はじめて出会う動物に感染し暴走することがあります。2002年のSARS、2012年のMERS、そして今回のCOVID-19がそれにあたります。

 

◇流行の終息はいつなの

 

2009年に大流行した新型インフルエンザは、今では季節性のインフルエンザとして定着しています。ウィルスからすればヒトと共存可能なタイプに変異する方がお得でしょうし、ヒトからすれば適度な免疫力を獲得し、風邪のひとつとして対応できるようになるでしょう。共存可能な関係ができるまで、迅速検査法や治療薬の研究、ワクチンの開発が急がれます。

 

◇こころへの感染を防ごう

 

<ご高齢の方へのお願い>

  • 手洗い、うがい、マスクは感染対策の基本です。
  • 人がたくさん集まる狭い場所に出かけるのは避けましょう。
  • 身体を動かすなら公園でのラジオ体操や、人通りが少ない通りでのお散歩がお勧めです。
  • 基礎疾患の治療を続けましょう。病院に通うことが難しければ電話を使って診察を受けて、お近くの薬局に処方せんをFAXしてもらえる方法もあります。
  • 親しい方と連絡を取り合いましょう。電話やスマホを使って、声を聞くだけでも元気がでますよ。

感染を避けられないのなら、できる限りあとでかかるようにしましょう。時間が経てば、世界中の研究者からより適切な治療法が提案されるはずです。

 

<子どもたちへのお願い>  

  • 早寝、早起き、しっかり食べて、生活のリズムを大切にしようね。
  • お天気の日は、公園で身体を動かして遊ぼう。
  • ゲームをするならテーブルゲームがお勧めです。オセロやトランプ、将棋や人生ゲームなど、おうちの人や友だちと一緒に楽しめるゲームがたくさんあるよ。何かひとつ名人になって、みんなを驚かそうね。
  • テレビゲームは時間を決めて。これがなかなか難しいんだなあ。おうちの人と一緒にできるソフトなら時間を守れるかも。
  • スマホを見るなら、科学番組がお勧め。学校で習わなかったことを勉強して博士になろう。
  • 今まで手にしなかった種類の本を読んでみよう。マンガで描かれた歴史の本や、鉄道やお城、宝石の図鑑、手芸の雑誌など、おとなになってからの楽しみにつながるかもよ。
  • 一日一回は大笑いをしよう。流行のお笑い番組だけでなく、落語にも挑戦してみよう。
  • 子どもシェフをめざそう。おにぎりや玉子焼き、野菜炒めからはじめて、おとうさんやおかあさんを驚かそうね。

君たちが笑顔をみせて元気で過していると、おとなも元気でがんばれます。

 

一生の間に一度経験するかしないかの大変な毎日が続きますが、こころの中まで感染しないように乗りきりましょう。

カンガルーも、マスクをはずして笑いあえる日が来ることを、楽しみに待っています。

 283-02

 

ある本(コミック)に出会いました

緩和ケア病棟の看護師さんたちにも読んでいただきたくて

プレゼントしました

 

何人かの人に読んでいただいています

とてもよくわかりますという声が聞かれました

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水谷緑さんの『大切な人が死ぬとき』

というコミックです

 

ご家族を亡くされ

「もっとできることがあったんじゃ…」

と後悔と罪悪感から

緩和ケアナースに相談をしてわかったことが描かれています

 

 

共感できる言葉が多く

紹介したいので抜き書きをさせてもらいました:青字のところです

(順不同です)

 

☆生きたい

 

死ぬ瞬間まで

生きたい

 

毎日家で

していたことをしたい

 

特別なことじゃない

 

父はただ

「日常生活」を

したかったのか

 

終末期と言われる状態になったお父さんが

主治医に対して突然望みを話されました

ご家族は戸惑われ

無理を言うお父さんを

恥ずかしく感じられました

 

患者さんが

今まで送ってこられた日常の生活を望まれる場面に

少なからず出会うことがあります

 

何かしたいことがありますか?

とたずねると

ちょっとでいいから家に帰ってみたい

と望まれます

 

中にはこのまま家で過ごしたい

とも…

 

ご家族の想いを聞きながら

条件がそろえば

その希望を支えるために

病棟のスタッフたちは努力をしています

 

可能なかぎり

私も往診を引き受けたい

でも遠くに帰られる人には

信頼できるお医者さんを紹介して

 

けれどその希望が叶えられないときも

たくさんあります

理由は様々です

 

そんなとき

私たちにできることは……?

 

 

☆「悲しみ」は波のよう

 

猛烈に押し寄せたと思っても引いていく

そのくりかえし

 

時間とともに

その間隔が開いていく

 

「死」は乗り越えるものでなく

慣れるもの

 

「死ぬ」ということは

ただ「絶対に会えない」

ということだった

 

――絶対に会えない

それはとても重い言葉です

 

しかし

私たちには

大切な人の

記憶があります

 

時間とともに慣れていくことはありますが

記憶も少しずつ薄れていくことがありますが

 

大事なことは

けっして忘れることはないと

私じしんの経験から

言うことができます

そのとき

多少の美化は許されるのではないでしょうか

 

 

☆そうだ…

「残したもの」が

「続き」をやるんだ

 

この先どう考えればいいのか

道筋が見えたような気もした

 

亡くなった人がやり残したこと

それを引き継いでいく

 

大好きな奥様を亡くされたご主人

家の掃除や洗濯

その他たくさんのことを

知人に教えてもらいながら

がんばっています

 

これも日常を引き継ぐということなのでしょう

 

ある人は

ご主人の叶えたかった仕事

後輩を育て上げることを

引き継がれたと

お聞きしました

 

色んなかたちがあっていいのです

 

 

以下は医療者 とくに看護師さんに向けた言葉です

あらためてコメントは不要と思います

 

 

☆自分の悲しみと

 

患者さんや

家族の悲しみは

別のもの

 

同じように

わかるわけがない

 

悲しみを

代わってあげることは

できない

 

悲しみは

患者さんと家族が

引き受けなければ

いけない

 

☆「他人の悲しみは

わからない」ことを

前提にするのは

誠実だと思う

 

「他人事でいい」

と考えるように

なってから

らくになったの

 

私がやることは

 

安心して

悲しめる場を

つくることだと

思ってる

 

 

☆「どう生きたいか」

患者さん自身も

気づいてないことが

多いから

 

時間をかけて

すくっていくしか

ないんだ

 

対話の中にしか

答えはないから

 

 

☆そこに

「いて」

 

「触れる」ことは

 

言葉より

ダイレクトに

伝わるものがある

 

☆本人が

(病気にむかって)抵抗しようと

することを

 

一緒にやるのも

看護だ

 

 

さいごに作者はこのように結んでいます

 

緩和ケアナースに話を聞いてわかったこと

 

それは

“大切な人が 残された時間を『どう生きたいか』を知ること”

282-02

一気に読み終えました

緩和ケア病棟で仕事をしてきて

共感することがたくさんありました

 

一方で

かってに引用して

私のかってな解釈を加えたこと

お許しください

 

 

 

ふたつめのお手紙を掲載します

 

 

B様のご家族の皆様へ

 

拝啓

花曇りの候 皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

 

私達は今もB様が入院されていた時の事を思い出します。

 

苺が大好きで

娘様や妹様が持参された宝石のような苺を

一粒一粒大切そうに味わっていらっしゃいました。

 

「今度娘に会ったら 苺が美味しかったと伝えて下さい。急がなくてもええよ」

 

最初に苺を持参された際は

娘様にて

むせないように潰してお口に運ばれた苺を味わって居られ

娘様が帰られた後でそのように言われました。

 

○月後半では

娘様ご持参の苺を

フォークでカットして一口ずつ介助すると

ゆっくり噛んで味わっていらっしゃいました。

一パック召し上がられた時のB様の満足された表情が忘れられません。

 

お誕生日にはりんごが食べたいと言われ

娘様にてすりおろされたりんごを

美味しそうに召し上がっていらっしゃったのですね。

 

お二人の娘様ご一家が集われ

素敵な笑顔を見せて下さいました。

 

撮影させていただいた写真の皆様の笑顔に

スタッフ一同癒されました。

 

「声が出るようになって嬉しいです。ありがとう」

「お風呂がとても気持ち良かった」

「看護師さん昨日はゆっくり休めましたか」

「ハンドクリームと指輪を持ってきてもらえるよう娘に伝えてもらえませんか」

 

発声できるようになり

B様は沢山お喋りをして下さいました。

 

一言一言ゆっくりお伝えされました。

 

私達にとって

B様との触れ合いのひと時は

とても楽しく 幸せな

そして大切な時間でした。

 

B様からはいつも何か温かいものが

言葉なくても伝わってくるように感じ

B様にお会い出来る事を私達は毎日

とても楽しみにしていました。

 

ご家族の皆様の献身的な愛情に支えられたからこそ

B様は旅立ちの時が訪れても

穏やかに 優しく 

B様らしく過ごされていらっしゃったのだと思います。

 

B様の人生の旅立ちという時間を共に過ごさせていただいた事は

私達にとって

とても大切な思い出となっております。

 

ご家族の皆様にとりましても

B様の思い出がこれからも大きな支えとなりますよう

お祈りしています。

 

季節の変わり目 体調を崩しやすい時候です。

皆様どうぞお身体ご自愛下さい。

敬具

 

 

                       緩和ケア病棟スタッフ一同

看護師○○

280-02

それぞれのレターに対して

たくさんのご家族からお返事をいただきました

様々な心の変化や生活の様子など

書かれています

 

 

いただいたお返事にはいつも

感謝しています

 

この病棟にかかわることができて

幸せを感じるひと時です