ご高齢の患者さんの最期を看取らせていただいたあと、息子さんと話をしました
息子さんはひとこと、「老衰ですね」
――ほんとは○○がんなんだけれど・・・
その時少しだけ違和感を感じていました
幾日かたったある日
購入したばかりの本を読んでいたときのことです
書籍の題名は『看取りの技術』(平方眞 著)
そこには「がん患者の看取りは『老衰』を目指そう」とありました
以前に感じた違和感がふたたび湧いてきました
しかし読み進めるうちに腑に落ちることがたくさんあることに気づいたのです
平方医師は次の条件がそろったときに「老衰」と考えていいでしょうと述べられています
① 本人・家族が「十分に長生きした」と実感できている
② 穏やかに、眠るように、自然に、亡くなった
③ 明らかに「この病気によって死んだ」という原因がない
④ 明らかに「この臓器が特に弱くて死んだ」という原因がない、つまり「各臓器がバランスを保ったまま弱って死んだ」状態
⑤ 無理に命を延ばそうとしてもほとんど効果がないか、むしろ逆効果
なるほどと思いました
患者さんの息子さんにとってみれば、きっと「老衰」のように思えたのでしょう
今もそのような経過をたどりつつある入院患者さんがいらっしゃいます
往診をしているとき、徐々に弱っていかれる患者さんの看取りをさせていただくことが少なからずあります
老人ホームで最期を迎えられるお年寄りもたくさん見てきました
みなさん穏やかなお顔をされていました
「がんは急速に年を取り寿命を迎える病気」と平方医師は述べています
「緩和ケアをしっかり行ったうえで、患者さん・家族が理解可能でかつ納得できる説明を十分に行うことが、自然な死に近づけていくために医療者に求められるスキル」とも述べられていました
その状態を目標に・・・と言えるほどには力量がまだまだ足りていませんが、結果として「老衰と同じですね」とご家族とお話しできることがあれば、それはまたひとつの迎え方ではあるのだろうと思うようになりました
緩和ケアは奥が深いです