患者さんとご家族のあたたかなふれあいが病棟で見られています

忙しい中無理を承知で、受け持ちの看護師さんにお願いしました

 

コロナ禍で感動的な出来事を目にすることができたのも

緩和ケア病棟ならではのことだと思います

 

 

 

・・・以下に原文のまま載せさせていただきます

 

 

「いつも感謝の気持ちで過ごしています」

そう語ってくれたのは、私が受け持たせていただいているKさんです。

当たり前にできていたことが、できなくなったこの1年。

私達、緩和ケア病棟のスタッフも、様々な葛藤を抱えながら、日々のケアにあたっています。

思うようにいかない状況に、心乱されることもありますが、一番つらいのは患者様、ご家族様であることを忘れずに…。

そんな時に、出会ったのがK様とそのご家族様でした。

できないことを嘆くより、今、できることは何か?ということを考えさせていただくきっかけになった出会いでもありました。

そして、心が狭くなっていた私の心に一筋の光を与えてくださいました。

皆様にも少しばかり温かい気持ちになっていただけたら…と思い、筆をとらせて頂きました。

 

K様との出会いは、コロナ禍の渦中でした。

お声をかけるとにっこり微笑まれ、私達に笑顔を見せてくださいます。

病気の影響で思うようにコミュニケーションがとりにくい中でも、一生懸命会話をしてくださいます。

時に、何度も聞き返すこともあります。

また、筆談でコミュニケーションをとることもあります。

一度で伝わらないこともありながら、何度も私達に想いを伝えてくださいます。

私達も真剣です。

そのようなK様とのやりとりの中で、冒頭の言葉をゆっくりと穏やかに、様々なことを思い出すかのように話されました。

K様のお人柄に触れさせていただいた瞬間であり、忘れていた大切なものを思い出させていただいた瞬間でもありました。

 

ここからは、K様と息子様との心の触れ合いについてご紹介させていただきたいと思います。

入院されてすぐに、私は、コミュニケーションがとりづらいK様にとって、電話でのやりとりが難しく、面会制限がある中、ご家族様との橋渡しの方法について考えていましたが、よい方法が思いつかないままでした。

そんなとき、息子様がK様へ当てた直筆の手紙を持参されるようになりました。

一部ですが手紙の一節をご紹介させていただきたいと思います。

「4月並みの暖かい一日、寒い間が出来なかった池の浄水器を掃除。踏ん張りがきかなくなってきた。長い間きれいにしてくれてありがとう。」

「『お母さん』という響きが恥ずかしくなって、友達と同じように『母ちゃん』と言い始めました。四十年ぶりに昔の呼び名に戻します。お母さん、お母さん、お母さん 〇〇はここにいます。」

「お母さんが長い間頑張ってくれたお陰で、私もたくさんの教えを聞かせて頂きました。本当に有難う。」

ここでは紹介しきれないほどのたくさんの想いが込められた手紙は、ほぼ毎日届き、K様は心待ちにされるようになりました。

そして、その手紙をK様のそばで読ませていただくことが、私達のかかわりの一つになりました。

浮かない表情をされていたり、寝つけそうにない時に、息子様からの手紙を読ませていただくと、穏やかな表情になられる姿を見て、たとえ離れていても、心は傍にあることを感じました。

いつも息子様に見守られて、身近に感じていただけるよう、大切な手紙はK様が常に目に触れることができる場所に貼らせていただきました。いつしか、その手紙はお部屋いっぱいになりました。

ときには、ご自身で手紙を読んでほしいとおっしゃられることもあります。

その時にはたくさんある中でどの手紙を読ませていただこうかと、K様と一緒に考えながら読ませていただいています。

 

ある日、K様に息子様のお手紙はどのような存在ですか?と尋ねると「ありがたいね。うれしいです。」とお部屋に貼っている手紙を眺めながらおっしゃられました。

その姿にK様の心の支えになっていることを感じました。

お手紙の内容は私達にはとても難しいことが書いていることも多く、K様に教えていただきながら読ませていただいています。

時に息子様の心の叫びのような言葉に、感謝の言葉に私達が涙してしまうこともあります。

K様と涙しながら読ませていただくお手紙は私達とK様をもつないでくれているように思います。

そして、K様も息子様への思いを震える手で一生懸命したためられます。

離れていてもお互いがお互いを思いやる心。

私はK様と息子様の手紙のやりとりから学ばせていただきました。

息子様からK様へ、そしてK様と私達をもつないでくださり、目に見えないものにこそ、大切なものがあることに気がつかせていただきました。

 

振り返れば、私達が携わっている看護ケアもできないことを補いながら、できることを支援することです。

このコロナ禍で思うようにできないことにもどかしさを感じていた自身を振り返り、当たり前にできることのありがたさを感じました。

「できていたことが、できなくなることとは?」この言葉の意味の重さを痛感しました。

そして、様々な思いを抱えている患者様の心に触れながらケアすることの大切さをあらためて感じました。

K様と息子様の心の触れ合いは、狭くなっていた私の心の琴線に触れ、優しさと温かさを感じさせてくれました。

これからもK様と息子様のストーリーは紡がれることでしょう。

私もこれからも続くお二人のストーリーを楽しみにしながら、見守らせていただきたいと思います。

「いつも感謝の気持ちで過ごしています」

K様のこの言葉を胸に抱きながら、一日一日大切に過ごしていきたいと思います。

310-01

こちらはK様がお好きだと教えてくださった蝋梅です

蝋梅の花言葉は「慈愛」

まだ、寒い冬にひっそりと花を咲かせて、癒やしてくれる蝋梅はまさにK様の心を表しているように感じます

 

(担当の看護師さんが撮影された写真と文章を添えます)

 

 

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