「体が温かいうちにハグしてあげたいんです!」

大粒の涙を流しながら看護師にお願いをされました

 

患者さんは40歳台

病気が見つかって1年余り

考えられるかぎりの治療を続けてこられました

そのための経済的な負担も想像できないくらいです

私たちが面談依頼を受けたのは

これが最後の治療法かもしれないと言われたときです

奥様が相談に見えられました

 

それから数か月たって…

合併症のため寝たきりとなり、コミュニケーションが不十分な状態

入院していただきました

 

「家族といっしょに最期のときをゆっくりとすごしたいのです」

と、奥様

 

広めの病室にご案内しました

ご家族が交代で、ときには全員でお泊りをされていました

 

「告知されたときはみんな受け止めることができず、時間がかかりましたが、現状はみんなわかっています」

「夫もしたいことはすべてしてきたと思います。だからもう心残りはないっていっていました」

「治療もぎりぎりの限界まで私たち家族のために受けてくれました」

「子どもたちにもすべて伝えています。父親が頑張ってきたことは知ってくれていて、取り乱すこともありません」

「……それでも少しでも長く生きていてほしいです」

 

 

前医で告げられていた寿命が訪れてきました

 

意識状態が低下しはじめ

手足のチアノーゼがあらわれ

呼吸が努力様呼吸から下顎呼吸にかわり

 

そして

…しずかに

…旅立たれました

 

 

「まだ体が温かいうちにハグしたいんです」

と奥様

「おとうさんありがとう…」

ご家族が順番に抱きしめられました

 

患者さん、ご家族は私の到着をまってくれていました

のちに最期のときのお話を看護師さんから聞いて

自然とつぎのフレーズが浮かんできました

 

さよならが迎えに来ることを

最初からわかっていたとしたって

もう一回もう一回

もう一回もう一回

何度でも君に逢いたい

めぐり逢えたことでこんなに

世界が美しく見えるなんて

想像さえもしていない 単純だって笑うかい?

君に心からありがとうを言うよ

 

ご存じ、Mr.Childrenの『HANABI』のサビの部分です

 

ご家族は(そして患者さんも)

ハグすることで、大切な人のことを心に、体に刻み付けたい

って思われたのではないでしょうか?

そして

もう一回でいいから逢いたい とも…

 

私の勝手な解釈なのかもしれませんが

でもそう思えました

 

短いお付き合いでしたが

みなさん方の姿は決して忘れることはないでしょう

210-01

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