東京から東海道線を経由して、二日目の訪問先へ

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日野原記念ピースハウス病院です

ホームページの表紙から拝借いたしました

 

朝から雨☂

玄関について、晴れていればもっとすばらしい景色がみれたのになあというのが第一印象です

 

電話でお願いをしていた事務部長さんとお会いしました

そのあと院長先生も来られて、「何をお知りになりたいのですか?」と

 

独立型のホスピスということで、うかがいたいことを前もってメモしていましたが、その場の雰囲気での会話となってしまいました

 

22床を3人の先生方で診られており、院長先生も週に何度か当直に入っておられるとのこと

頭が下がります

 

治療のことや薬の使い方などからお話をお聞きしましたが、それよりも刺激的だったのは「考え方」や「姿勢」です

 

――入院相談の場面(事務部長さんに教えていただきました)

患者さんやご家族が何を求めているのかをじーっと聴かれている姿

患者さんにまず「今、何にお困りですか?」と質問される姿

 

――「鎮静」に関して

「鎮静」という言葉が一人歩きしているようです

ミダゾラム=鎮静と受け取るスタッフがいます

現実には痛みを和らげるためにミダゾラムを使う場面があります

 

――今後在宅にむけて

その場合に備えて最小限の薬にするように工夫をしています

最近の新しい薬(メ○○○やタ○○○など)は使っていません

 

地域の病院との連携がますます重要になっています

在宅医療への移行を考えたときに、緊急入院の受け入れをどうするかが課題です

 

――その他、院長先生の言葉から

「目標設定は医療者の立場からじゃなく、患者・家族の立場で」

「相手に直接聞くことだけでなく、思いを察する感性が大切でしょう」

「時には自分たちが行なっていることを見直してみる心構え―別のところから自分を眺めているというような心構えも持って…」

などなど

うなづきながら聞き入りました

 

 

独立型ホスピスとしての課題もあるようです

当院では緊急入院を直接緩和ケア病棟でお受けすることはまだできていませんが、急性期病棟にお願いをして(担当医は緩和ケアに従事する医師)、そこからの転科としています

また理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などリハビリスタッフのかかわりも多く、そのことが特徴ともなっており、独立型でない有利な点をもっと生かせればと感じました

 

 

看護師長さんとも少しだけお話ができました

「夜勤は二人体制で大変ですが、看護助手さんの力を借りています」

「院長先生からは『6割でいいんだよ』と言っていただいて心強いです」

 

 

180-02以上の一つひとつの言葉ややり取りの内容・表現に関しては私個人の受け止め方や思いに修飾されており、不正確な部分があるかと思います

記載内容のすべての責任は私にあることをここにお断りしておきます

誤解のないようにお願いします

 

その後の時間は施設の中を案内していただきました

専門家がきれいな写真をとられていますのでそれをブログに転載させてもらうことを了承していただきました

以下にご紹介します

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正面から

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中庭です

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富士山が望めます

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ここは食堂

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談話室

ボランティアさんが淹れてくれたおいしいコーヒーをいただきました

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室内とそこから眺められる庭

 

感激しながら、ここでもやはり役割の違いを感じ、しかし課題には共通することもたくさんあることを認識しました

 

10月の末になつやすみをもらいました

同僚の先生たちに患者さんをお願いし、患者さんやご家族さんにはすみませんとお詫びをして…

 

目的はホスピスめぐりと温泉につかること

聞く人によれば贅沢な旅と思われるようです

 

午前4時半起床

新幹線に乗りました

行先は、東京

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降り立った駅がこちらです

緑の多いまちです

 

これは玄関の写真です

「ケアタウン小平クリニック」

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ある日思い立ち、突然の電話をしました

――見学をお願いしたいのですが…

折り返しの電話をいただきました

そのお相手が緩和ケアの分野のみでなく世の中でも有名な山崎章郎先生でした

――いいですよ

午後から来られれば一緒に訪問診療にいきましょう!

 

とてもありがたいことです

まったくの初対面でしたが、気軽に引き受けていただきました

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ここが入り口

 

さっそく訪問に同行させていただきました

 

驚いたことがあります

○訪問診療の依頼を受けての面談にかなりの時間をかけられていること

○訪問は医師一人で行っていること(常勤の医師は3人です)

○訪問前に医師自らが患者さん宅に電話をかけていること

○初回の訪問は3人の医師が揃って行かれること

など

患者さん一人あたりにかける時間は、車の移動も含めて1時間たっぷりととられています

 

この日は3件の訪問でした

「ちょうど続けてお亡くなりになったので減っています」とのこと

 

訪問先ではじっくりと患者さんやご家族のお話を伺います

お一人は神戸の出身の方、それも私たちの病院の近くにかつてお住まいでした

関西弁で色々とお話を聞かせていただきました

 

 

だいたい月に7~8人の看取りをされています

私たちが行なっている訪問診療の10倍以上です!

 

 

夕方にクリニックにもどってから3人の医師でその日の情報共有の話し合いをされます

たくさんの刺激的なお話をうかがうことができました

 

――在宅では医療用麻薬の持続皮下注射はどうされていますか?

「これまでほとんど持続皮下注射はしていません」

「できないというわけではなく、必要がなかったのです」

――じっさいにはどうされているのですか?

「貼付剤と座薬(オピオイド、安定剤)があれば十分でした」

「意外と患者さんは最期までお薬を飲めるものです」

――鎮静に関しても訊ねました

「在宅では鎮静の場面は多くないですね」

「ご家族がいることで落ち着かれるということもあるのでしょう」

――若い医師への注文も聞きました

「ホスピスで経験を積まれて開業、在宅医療に臨まれる先生方には『病院での緩和医療をそのまま在宅ケアに持ち込むこと』はつつしんでもらえればと思っています」とやんわりと話されました

病院と在宅、それぞれの役割の違いも大きいのでしょう

 

山崎先生のご案内で施設も見せていただきました

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右手は入口です

中庭の向こう側は「アパート」ですとのこと

サービス付き高齢者住宅ですか?との質問には「いえ、アパートです」

「いっぷく荘」というワンルームの住宅です

 

全体のオーナーさんがいて、そこにクリニックや訪問看護ステーション、デイサービスセンター、ケアマネジメントセンターなどが賃貸ではいっているとのこと

 

「これが私たちの考える地域包括ケアなんです」と話されました

とても刺激的な取り組みです!

 

 

“ケアタウン小平だより”の一節をご紹介します

ホスピスケア…

―――「尊厳と自律ある生=自分らしく生きたい」を求めた人々の話を真摯に聴き、その求めの中で実践と活発な変化を続けてきたケア

―――在宅ホスピスケアを通じた地域づくり(の実践)

地域にホスピスケアをとどけよう

 

 

その中で山崎先生はつぎのように述べられています

―――ケアタウン小平にとって、制度は全てあとからついてきたことになりま

世の中の課題を解決していく制度は、現場の実践から産まれるのだ、ということを実感するばかりです

 

ケアタウン小平クリニック=「在宅緩和ケア充実診療所」は私たちの道しるべとなってくれているのだと感じました

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http://caretownkodaira.net/clinic/index.html より

 

 

緩和ケア病棟が満床のときに急性期病棟に入院をお願いすることがあります

そのとき看護師さんが戸惑われることがあり、きちんと緩和ケアに関する学習会をもとうということになりました

現場の要望や意見を聞きながら、まずは「癌性疼痛とその評価」「鎮痛薬―とくにオピオイドに関して」「オピオイド使用時の注意点と患者・家族への指導」などをテーマに第一回目を開催しました

参加者は30人弱です

講師はY先生とO認定看護師さん

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それぞれ30分ずつの講義、残り30分を質疑に当てました

 

参考にそれぞれの講師の内容(話のポイント)を掲載します

<医師>

・痛みの病態生理

・鎮痛の目標、薬の使用原則

・非オピオイド鎮痛薬

・オピオイド

・オピオイドスイッチング

・使用の具体例

<看護師>

・痛みのアセスメント、看護師の役割

・痛みの分類と性状、評価法

・オピオイド使用の注意点、副作用と対策、看護師の役割

 

超具体的な質問や意見が出され、お二人からの適切な答えに感心しました

さいごに持続皮下注射のポンプの使用上の注意にはみんなの関心が一気に高まったようです

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参加された看護師さんも1年目の人から10年以上の方まで様々で、感想文を読ませてもらうとまずまずの評価だったと思います

 

「痛みの評価が学べた」

「患者・家族との関係を築くことが大切だと感じた」

「看護師は患者の代弁者であることを意識したい」

「癌性疼痛の評価に『自制内』という表現はできるだけ使わないことが大事」

「次回も別のテーマでの学習会に期待」

「看護記録の内容を深めてアセスメントしやすいようにしようと思った」

「困ったときはメールで相談します!」

などの感想が寄せられました。

今後も希望を聞きながら学習会を継続していきたいと考えています。

急に寒くなってきた土曜日の午後です

病棟のスタッフと組合員さん、ボランティアさんたちにより音楽会が開かれました

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これはお知らせの手紙です

いよいよ始まりました

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デイルームに入れきれない患者さんはベッドの上から参加されました

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今回は三味線と小唄、踊りです

演目は

“花笠音頭(踊りつき)”

“斉太郎節”

“松の木小唄”

“マリと殿様”

“祇園小唄”

でした

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みなさん笑顔で手をたたいたり、一緒に歌ったりされていました

短い時間でしたが少しでも潤いを実感していただけたでしょうか?

 

さいごに少し格調高く

―――音楽は人間が言葉で言えないことで、しかも黙ってはいられない事柄を表現する―――

ヴィクトル・ユゴーの言葉だとある本で知りました

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かねてから依頼をしていたお話が届きました!

私たちの法人の訪問看護ステーションでも終末期の緩和ケアでしっかりとした取り組みが行われています

ぜひブログに載せたいのでとお願いしていました

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以下に掲載させていただきます

「家族との思い出が詰まった、住み慣れた自宅で最期の時を迎えたい…」

これは私(Ns)が在宅医療に携わるようになり、2年が経過したころの経験談です。

 

【患者さんの紹介】

N氏 80歳代 女性

□年4月 膵体・尾部がんにて膵体・尾部切除+大網・小腸間膜切除施行後、同年6月より化学療法受けていました。約1年後に増悪(腹膜播種、肺転移)あり、化学療法は中止し、BSC方向となる。十二指腸の狭窄のためステント留置し在宅療養を続けていたが全身状態悪化傾向で医師より入院を勧められましたが、N氏は在宅を希望されました。訪問看護を導入し在宅緩和ケアがスタートしました。高齢の夫・長女と同居だが長女は仕事をされており、日中は夫との二人生活。

 

【経過と看護師としての関わり】

食事・水分は徐々に摂取困難となり、程無くして経口摂取は出来なくなりました。癌性疼痛もひどくなり、適宜主治医のH医師と連携し、鎮痛剤の調整を行っていきました。また、点滴開始に伴い毎日2回以上の訪問となり、1ヶ月の訪問回数は50回近くになりました。

N氏はとても気丈でしっかりされている方で、もともと様々なボランティア活動や民生員活動などをされており、ご自身が辛い状況であるにもかかわらず、気遣いをして下さり、明るく心優しい方でした。告知内容もしっかりと受け止め、子育ての話や実父を在宅で看取った(H医師により)経験談、死生観についても語ってくださり、「家族との思い出が詰まった、住み慣れた自宅で最期の時を迎えたい…」「父親の時から信頼していたH先生に死ぬまで見届けて欲しい」「点滴は続けたい」とハッキリと希望を伝えて下さいました。病気から逃げず、泣き言も言わず、最期まで自分らしく生きようとされる姿に感動し、多くの事を学ばされ、訪看チームでその思いを支えたいと、一丸となりサポートさせて頂きました。お亡くなりになられるその直前まで、私たちに対して、「○○さん、ありがとう!だいすき!」と手を握り、抱きしめてくださいました。最期は遠方のご家族も駆けつけ、皆に見守られながら、長年過ごされたご自宅で、眠るように天国へと旅立たれました。訪問看護開始から1.5ヶ月間の関わりでした。

 

【死ぬまで生きること死に方は選べること…】

この1.5ヶ月という短い期間ではあったが濃密であったN氏との関わりを通して、当たり前なのですが、改めて「人は死ぬまでちゃんと生きるんだ」と再認識しました。生まれる時、自分ではその状況の選択ができませんが、最期の時はできます。死に方ではなく、息を引き取る最期の瞬間までご本人らしく「生きる」状況の選択です。

「死」とは、その方の人生の最期で最大の出来事、ご家族の心にも深く深く刻み込まれる出来事であり、その大切な最期の時に関わらせて頂き、N氏の願う「最期の生き方」のご意向に出来る限り沿えるようにチームで一丸となり、ケアに当たりました。在宅医療の限界を伝えられ、当初は不安に思っていらしたご家族様も、最後は心から感謝して下さいました。

これからも、N氏から学ばせて頂いた多くの事を胸に秘め、在宅療養される方々への支援につなげていきたいと思いました。

 

訪問看護は外来――入院――在宅と切れ目のない医療/看護/介護をめざす私たちにとって、心強い存在です

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