高齢のご夫婦がいました
奥様が入院され、ご主人がずっと泊まり込みで付き添われています
痛みが強くなり、徐々にモルヒネの持続皮下注射の量が増えてきました
それでも夜は眠られています
…ご主人がそばにいて安心なのかもしれません
日に日に弱ってこられているのがだれの目にも明らかになってきました
ご主人を含めたご家族と話し合いました
病状は厳しくなってきていること
薬の量が増えていること
今後起こりうると思われること
などをお話しました
いくつかのやり取りの後、沈黙が続きます
しばらくしてご主人が恥ずかしそうに口を開きました
「実は、この前嫁さんに聞いたんや。俺と一緒になって幸せだったか?って」
「そしたら嫁さんは『よかったよ』って言ってくれた」
私も看護師さんもそれはそれはという感じでうなづきます
娘さんがそのあとを引き継ぎました
「父は母と一緒になれたことで幸せをすべて使い果たしたと言っていました。それくらい幸せなのでしょう」
申しわけないのですが、聞いていてとてもこちらが恥ずかしくなるような微笑ましい関係のご夫婦です
思わず「奥様にも直接話されたのですか?」
「話したよ」とご主人
10代で所帯をもたれたお二人
長い年月いろんなことがあったことと思われます
患者さんは付き添われているご主人の姿が見えなくなると、途端に不安な表情になります
ほんとに大好きなふたりなんだと実感しました
私たちは患者さんの病状と同時にご主人の体調にも心を配りながらお二人のケアを続けています