つよい腹痛で緊急入院された60台前半の男性
以前に面談を済まされており、病状が進めば入院しましょうということになっていました
「自宅で苦しんでいた時はこれで最期かと思いました」
と、症状が改善してから話されていました
入院後は腹痛も嘘のように治まり、食欲もでてきました
でも血液検査やCTをみると喜ばしい結果ではありません
病名や病状の進行についての告知はされており、ご本人もある程度の覚悟はされていました
「しておきたいことがあればできるだけのお手伝いをしますよ」と予後があまり長くないことを前提にお話をしました
「やっておきたいことはいっぱいあるけど、もう少し落ち着いてから…」
体が楽になったことで、ご自分の病状を正確にとらえきれないのではとみんなで話し合っていました
「いっぱいあるって具体的にはどのようなことでしょうか?」
何度かのやり取りの末に
「息子に会いに行きたい」
「釣りに行きたい」
「時々は自宅に外泊をしたい」
などの希望が出てきました
「でも今すぐではないんです」
とおっしゃいます
ご家族にも同席していただき、担当の看護師さんとともにあらためて病気のことを説明させていただきました
現在の状態を説明したのち
「先日やっておきたいことを聞かせていただきましたね。○○さんの病状を考えると、『今日がいちばんいい日』なのだと思います。明日になればまたその日が最高の日だと考えてください」
今日できたことが明日にはできなくなることだってあるのだということを知っていただきたいとの思いから話をしました
しばらく考えてみますとの返事
数日後
それまではもっと先にと考えていたことを忘れたかのように色々なご希望を話されました
ご本人、ご家族といっしょに一つひとつ実現に向けて計画をたて、実行してきました
さいごに
「墓参りに行きたい」
その望みを実現された翌々日
みんなが見守るなか
静かに息をひきとりました
次の絵本をご紹介します
題名は『最後だとわかっていたなら』(ノーマ・コーネット・マレック作、佐川睦(訳))
これはイラスト版のほうです
1ページ、1ページが優しくて貴重な言葉でつづられています
「たしかにいつも明日はやってくる
でももしそれがわたしの勘違いで
今日で全てが終わるのだとしたら、」
「わたしは 今日
どんなにあなたを愛しているか 伝えたい」
「愛する人を抱きしめられるのは
今日が最後になるかもしれないことを」
http://darapic.net/tomorrow-never-comes/ より
この絵本を開くたびに
これからも多くの患者さんの顔が浮かぶでしょう