Sさんは住み慣れた町の病院からご家族が近所にある私たちの緩和ケア病棟に引っ越してこられました
高齢ですが判断力と記憶力はしっかりとされた女性です
「センセイ、今日は4回来てくれたね」
「夜にも来てくれると言ったのに、まだ・・・」
Sさんにはとっても大きな困りごとがあります
それはいつ襲ってくるのかわからない頭痛でした
日によっても変わります
天気の影響か気圧の変化なのかは誰にもわかりません
1日のなかでも大きく症状は変化します
でも娘さんがいらっしゃるときには落ち着かれていることが多いようにも感じていました
「……いつもありがとうございます、でも頭が痛い、どうしてなんやろう?」
あれこれとお薬を試してみるのですが、最初はいいこともありますが、すぐに「あれは効かない」とおっしゃいます
「どうしてなんでしょうね? だけどいろいろと方法をいっしょに考えましょう」
ある日のこと、
看護師さんから、「Sさんの誕生日がもうすぐです、お誕生会をご家族と考えています」と報告を受けました
「それはすばらしい! ぜひみんなでお祝いをしましょう」
それからはSさんには内緒で準備にとりかかります
仕事の合間(?)も、仕事が終わってからも
ご家族も計画があるようです
食事量が少ないSさん
誕生日には大好物を食べていただこうと栄養士さんと調理師さんが知恵を絞りました
当日のお昼ご飯の内容です
・ミキサー粥
・うなぎのかば焼き
・根菜の盛り合わせ
・とろろゼリー
・ゼリー、牛乳、のりの佃煮、梅びしお
「うなぎ」と「とろろ」はSさんの希望でした
この日はいつになくたくさん食べていただきました
ベッドサイドには看護師さん手作りの飾りつけ
折り紙で作った花束もあります
Sさんは三角の帽子をかぶって(かぶらされて?)います
お孫さん、ひ孫さんの参加もありました
みんな笑顔で写真をとりました
「みなさんありがとうございます。でも頭が痛い・・・」
目の前には大きなケーキ
♫ ハッピーバースデイ Sさん ♫
みんなで合唱しました
つらいことにはまだ十分にお応えすることができていませんが、これからも穏やかな生活が送れるように努力をしていきます