家に帰ることを強く望まれた患者さんの思いと受け持ちの看護師さんの思い

・・・その1

 

以前にご自宅で最期の時をすごされたMさんのことを書きました

今回入院中にプライマリーナースとして受け持ってもらった看護師さんからの報告をいただきました

私の知らなかったこともあり、心に染みる内容となっています

 

2回に分けて掲載したいと思います

 


 

                                                   

症状のコントロールのために入院してこられたMさん

「症状が楽になったら家に帰りたい」

「お正月は家で過ごしたい」

という意向を示されていました

そしてご家族も同じ思いであることを確認しました

 

入院の当日から、ご病気の影響で蠕動痛が激しく強い様子で、睡眠剤で少し休息の時間を設けないと辛いほどの耐えがたい苦痛がありました

蠕動痛を緩和するために一時的に絶食へ

すぐに医療用麻薬の皮下注射を開始し、さっそく症状コントロールを始めました

 

 

≪楽になって家に帰りたい≫

 

その後、食事開始とともに症状が増悪

疼痛も嘔吐の頻度も増えました

食事をすることで症状が増強している可能性があること、また一時的に絶食にし食事形態を変更しませんか? と、主治医からMさんへ提案がありました

しかしMさんの食べたい思いは強く、そのまま食事形態を落とさずに3食食べたい思いは変わりませんでした

「食べること」がMさんにとってどういう意味を持っていたのか、直接は聞けませんでした

しかし、あれだけしんどい思いをしてでも食べることを継続する決断をされたのを見て、Mさんにとって「食べること」は症状が増強したとしても生きる上で大きな意味を持っていたのだと感じました

 

症状は落ち着いている時期もあれば増強している時期もあり、どのタイミングで退院の話を出してもいいのか迷いました

しかし、絶食の時は比較的症状が軽く、固形物を含む普通の食事を提供すると症状が増強することが分かりました

Mさんが食事形態を変えず食事を継続する意向なら、これ以上の症状緩和はのぞめないかもしれないと思い、このタイミングで退院について再度思いを聴くことになりました

 

――入院1週間後

 

「いつまでには帰りたいとかはないけど、もう少し体が元気になったら帰りたいかな」と、退院希望はあれども、倦怠感がネックになっていることを訴えられました

そして、急いで退院準備をするのではなく、あくまで「症状が軽減し、楽になったら退院したい」という部分も確認しました

 

痛みはある一定まで軽減できましたが、病状からこの時期の倦怠感の改善は難しいかもしれない……と思い、「病状から倦怠感はとれないかもしれないが帰りたいですか」という点も含めて退院について主治医から声かけしてもらうよう依頼しました

ただしMさんの体調は日によって違い症状にも波があるため、医師も言い出すタイミングを見計らっていました

 

――入院2週間後

 

「倦怠感が取れないなら帰りたい」

主治医からの説明を受け、Mさんの中で退院への思いが大きくなりました

しばらくしていよいよ退院方向で調整することになり、訪問看護師やケアマネジャーの方と合同カンファレンスを行う日が1週間後に決まりました

 

ご主人からお聞きしたのですが、Mさんは闘病生活を送る中で「意識がはっきりしている期間はいつまでか」を前の医師に聞きながらこれからの過ごし方を考えてこられたそうです

病状が悪いこともすべて自分で聞いて治療方法やこれからの人生を計画されてきました

そして、「最期は家で迎えたい」ということも以前からご家族で話し合われていたようです

Mさんに退院についての思いを聞いた時と同時期、ご家族に退院についての意向を伺いました

「本人が家で最期を迎えたいというなら支えたい」と言われました

自宅で最期を迎えられるかもしれないため、終末期に出現しやすい症状などをまとめたパンフレットを用いて、Mさんが今後どのような状態に変化していくことが予測されるかをご家族にお話しました

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