先日私たちの法人の4つ目の歯科診療所の10周年記念の集まりがあり、そこでご挨拶をさせていただきました。

緩和ケアに触れたこともあり、ここに再掲しておきます。

 

――歯科医療への期待――

 

生協なでしこ歯科開設10周年、おめでとうございます。

この10年間多くの苦労があったことと思います。

しかし、地域組合員、職員の皆様の奮闘が現在の発展の基礎となっており、そのご努力に神戸医療生協を代表して感謝いたします。

 

一般には歯科は「虫歯ができて痛む」「入れ歯を作りたい、調整したい」というときに受診するところという認識がまだまだ多いのではないでしょうか?

生協なでしこ歯科は「成人歯科・歯科往診」「小児・障がい者歯科」「矯正歯科」と幅広い分野を担い、その一つひとつが大きな成果をあげております。

これは神戸医療生協4つの歯科診療所の医療活動に共通しており、先輩たちが作り上げ、皆さん方が受け継いできた歯科医療の伝統でしょう。

治療のみでなく健診、予防、健康づくりにいたるまでの切れ目のない歯科医療活動を最初の歯科診療所である協同歯科の時代から当たり前のようにおこなってこられました。医療界全体からみるとそれは画期的で先進的な医療であり、私たちの大切な宝物であります。同じことが私たち医科の分野にも言えることだと思っております。

 

協同歯科、きたすま歯科、いたやど歯科につづく4番目の歯科建設が私たちの課題となり、土地探しに苦労をしたことを思い出します。

10年前、西神戸の地での歯科建設を総代会で決定して以後、まだ医療生協の組合員も班も他と比べて多くない地域での開設をめざし、組合員と職員の協同で地域をくまなく歩いて宣伝し、組合員を増やし、出資金のお願いに回りました。私も微力ながら参加したことが懐かしいです。

 

さて今は「連携」が強調される時代です。

私たちのなかではとりわけ歯科と医科の連携は大切です。そのことは患者様も職員も望んでいることでありますが、なかなか専門分野が異なると難しい面があることも指摘されていました。

しかし過去には脳卒中などの病気のために食事がうまく食べることができない、呑み込めない患者様のために、歯科と医科が協力して勉強会をもち、リハビリを進める基準づくりを行ったことがありました。その時に参加したのが医師、歯科医師、看護師、歯科衛生士、栄養士、理学療法士、作業療法士、介護士などの多彩な職種で、中でも大きな力を発揮してくれたのが歯科衛生士さんたちでした。現在神戸協同病院の入院患者様の口のケアにもきてもらっております。

 

またこの場をお借りしてお話をさせていただかないといけないのが6月にオープンする神戸協同病院の緩和ケア病棟のことです。

病棟の責任医師として私が勤めさていただくことになっております。

今までに幾人かの患者様、ご家族の入院の相談を受けており、期待されていることを実感しています。

私たちの緩和ケア病棟の大きな特徴は、「19床の全室が個室であること」「差額ベッド代はいただかかないこと」です。

緩和ケア病棟に入院される患者様の多くはこれまで治療を受けていた医療機関で「あなたはもう何も治療法がありません、あとは緩和ケアです」と言われ、一種の“見捨てられ感”を抱かれています。

私たちのケアはそこからのスタートです。決して「何もすることがない」とは思いません。「きっと何かすることがあるはず」です。

たとえば、多くの方は体が衰弱して思うように動けなくなっても、「トイレは自分で行きたい」「食事は少しでも好きなものを食べたい」と望まれており、私たちはその望みを決して押し付けにならずにかなえるお手伝いをすることが役割です。緩和ケアの本質は“おもてなしの心”だと言われています。

そのときに歯科の皆さん方との連携、協力が必要になってくるのです。「最後まで口から食べたい」という患者様のささやかな希望をともに実現していきたいのです。そのために先日衛生士さんとも意見交換をさせていただきました。

まだこれからですが、神戸医療生協の特徴のひとつとして育てていきたいと思っております。

 

このように歯科医療の発展が医科医療の発展に密接に関連しており、生協なでしこ歯科がその牽引車となってますます力を発揮されることを大いに期待しております。

 

次の10年に向かい、組合員の活動が活発に行われているこの地域で、生協なでしこ歯科を中心に協同が一層発展することを願っています。

 

おめでとうございます。

 

“uproad”

 

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