病棟の夜は様々な顔をしてくれます
患者さんたちが落ち着いている日はスタッフの顔も穏やか
ときに大きな声で看護師さんを呼ぶ声が聞こえます
私たちが緊張するのは最期のときを迎えようとされている患者さんがいる夜
この日も意識がなくなり呼吸状態も悪くなってこられた患者さんがいました
今までの家族関係を象徴するかのようにたくさんのご家族が集まってきます
小さな子供たちも数人いました
患者さんのそばでは神妙な面持ちでいる子供たちも、しだいに退屈してくるのか家族室で待ってもらいました
近くを通りかかるとにぎやかな声
私もついその雰囲気に呑まれて、一つふたつと覚えたての手品を披露しました
――残念ながら患者さんはその夜お亡くなりになりました
翌日のナースステーションでの申し送り
夜勤の看護師さんからの報告です
「若いお母さんがやってきて、『子供たちとかくれんぼをしています。隠れるところがないのでここに隠れさせてください』と頼まれました」
「えー!?」
「私はいちどだけですよとOKしました……」
これまで30数年病院で働いてきて、病棟での“かくれんぼ”は初めてです!
でも報告を聞いてとってもあったかい気持ちになりました
患者さんも子供たちの声を聞きながら安心して天国に旅立たれたのではないでしょうか
看護師さんに『あっぱれ!』をひとつ
追伸;
亡くなられたとき、お孫さんは「おじいちゃんとはもうお話ができないの?」と号泣していたそうです
今までにぎやかにしていた子がおじいちゃんのために泣いてくれた
もういちど暖かな気持ちをいただきました