救急隊の病院研修があるということで、緩和ケアに関しての事前の質問がありました
☞緩和ケアとはガンの終末期に受けるケアと思いがちなのですが、ガン治療と同時に始めると聞いたのですがどのようなことを行うのでしょうか。またどのようなメリットがあるのかご教授下さい。
という内容です
私の方で次のようにお答えをしましたので、ここに掲載をしておきます
“まずWHO(世界保健機関)による「緩和ケアの定義」が一般に知られていますので記載します。
「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」
ここでは病気は癌に限定していませんし、まして癌の終末期にも限定はされていません。
あくまで「生命を脅かす病」とされています。
苦痛は「トータルペイン」と言われ、「身体的苦痛」「心理的・精神的苦痛」「社会的苦痛」「スピリチュアルペイン」など多彩にあり、単に身体の痛みだけを対象にはしておりません。
そして緩和ケアの究極の目標は「QOLの向上」です。
ではどうして日本の緩和ケアの対象が癌と世間では思われているかというと、日本の医療制度―診療報酬制度で「緩和ケア病棟に入院できる疾患は癌とエイズである」と指定されているからです。
近年心不全や呼吸不全の終末期の緩和ケアが注目されるようにはなってきましたが、まだ一般化はされていません。
本来の緩和ケアは癌やエイズに限らず、認知症や神経難病なども対象になるべきではないかと思っておりますが、いかんせん保険制度がまだそれに追いついていないのが現状です。
さらに「癌の積極的治療(手術や抗癌剤治療、免疫療法、放射線治療など)」と同時に苦痛の緩和をめざして「早期からの緩和ケア」が注目されるようになってきています。
私たちの病院では癌の積極的治療は行っておらず(一部を除いて)、主には先進医療を受け持っている基幹となる医療機関で行われるというのが現状です。
そこでは緩和ケア内科や緩和ケアチームがその任に当たられています。
メリットとしては痛みや吐き気などの苦痛の緩和ができれば、積極的治療も受けやすく、また生命予後も改善すると言われています。
以上簡単ですがお答えいたします。”
救急隊の方々はきっといろんな場面に遭遇されているのでしょうね
緩和ケアに対して、積極的に関心を持っていただけてありがたいです