入院患者さんたちがご家族や友人など大切な人との面会が容易でないことをこの間何度か書いてきました
一方でSNSなど最新の手段を活用したコミュニケーションの努力が患者さんとご家族との間で、また医療者を通じて行われてきていることも今や医療現場では当たり前のことになっています
そのことで不安を和らげられた方々がたくさんいます
LINEは年齢を問わず、多くの人が使いこなせるようになりました
日常の重要なツールとなり、これなしでは生活が成り立たないこともままならずあります
―――SNSをめぐってこのようなことがありました
若い患者さんです
イレウスを合併され、食べたくても嘔吐をしてしまう状況でした
嘔吐を繰り返され徐々に体力が消耗してきました
患者さんの支えは、ご家族との電話やメール
友人たちとのLINEグループです
毎日のやり取りが励ましになっていました
病状が進行し疲労困憊となったある日話されました
「(友人たちに)緩和ケア病棟に入院していることを伝えているのに、食べることが苦痛なのに、『早く退院できるといいね』とか『みんなできれいにしておいしいものを食べに行こう』って言われ、そのたびに説明することに疲れました」
「メールやLINEの返信にエネルギーを使ってしまいます。私は1日のうち使える時間が少なく、大切な人と話をしたり、しておきたいことのために時間を温存して、そのほかの時間は体を休めたいんです」
「私のことを理解してくれている人はいいけれど、『がんばれ』とか『もっとがんばれる』と言われると、十分に頑張っているのにって苦しくなってしまう」
「もういいやって思ってしまうんです」
「だけどスマホをつい見てしまうし、そうすると返信をしなくちゃとも考えてしまうんです」
切実な訴えでした
患者さんのお話を聞き、ふたつのキーワードを思い浮かべました
ひとつは「いつでもつながれる」、もうひとつは「気軽に」です
想いを伝えたい人にいつでも伝えることができます
日常のたわいのない話ができます
ほんとうは直接会って顔を見ながら話をしたいことも
誠意をもって伝えたいことも
確かに伝わるのだろうかと気になりながら
気軽にメッセージを送れてしまいます
「指一本」で
つながっていたいのは
だれですか?
なにを伝えたいでしょうか?
先の患者さんの場合
コロナ禍がなければ
直接会っていただければ
様子が正しく伝わっていたでしょう
今は話をしたくない、会いたくないのであれば
「面会をお控えください」と
私たちからお伝えすることができたでしょう
コミュニケーションツールを利用して、会いたい人の顔が見える、話ができるという便利さは否定しません
病気の不安や恐怖を少しでも和らげることができる場面を何度も見てきました
でもメールやLINEが送信者の意図しない結果を生んでしまうこともあるようです
簡単には解決できないことが多く戸惑っている現状ですが
便利になった手段を有効に生かせる努力や工夫をしていきたいものです
今回の患者さんからはたくさんのことを学ばせてもらいました
・鎮静をどうとらえるのか
・苦痛があることを承知の上で、望むことを叶えるお手伝いをするということ
・「生きたい」と思えるような向き合い方をすること
など
それはまたの機会に……