10年の記録に載せるため、4人の方に文章をお願いしました
それぞれの思いをいっぱい書いていただきました
最初は当時事務局を担っていただいたWさんです
1.開設に向けての準備
2015年春の開設に向けて、休止していた神戸協同病院の5階病棟を「緩和ケア病棟」として再開することが決まりその担当者として活動を始めました。ホスピスとも呼ばれていた「緩和ケア病棟」は、長田区にはなく神戸協同病院に出来れば、利便性もよく地域からの要望も高かったです。
兵庫県内の同じ民医連病院の「尼崎医療生協病院」や「東神戸病院」では、すでに「緩和ケア病棟」を開設しており、まずはそこへの見学から始まりました。
東神戸病院では、多床室での運営をしておりその経験から私たちに出来れば「個室での緩和ケア」を勧められたこともあり、全室個室を目標としました。また、尼崎医療生協病院では、臨床心理士がグリーフケアや、患者会の要を担っており当院でも心理士探しが始まりましたが、ちょうど元職員さんの娘が心理士をしているという情報があり採用となりました。(現在は退職されています)
2,ボランティアグループの組織
緩和ケア病棟は、一般の病棟とはやや異なっており「ボランティアグループ」が大きな役割を担うことが多いようです。いわゆる「病室」とは違い「最後の住居」のようなもので最後の時間を自分の好きなように過ごすことが出来ます。お酒を飲むことも出来るしみんなで集まり料理を作ることも出来ます。そんな折に大切な役割を果たすのが「ボランティア」です。
いつもは、コーヒーや紅茶、おしぼりの配膳などのボランティア活動を行っていますがイベント時には、患者さんと一緒に料理を作ったり歌を歌ったりと専門職の看護師とは違った役割を担います。
ボランティアは、チラシや機関誌「三つの輪」にて募集を行った所30名近くの方が集まりました。4回コースの「緩和ケアボランティア養成講座」を実施し、尼崎医療生協病院の臨床心理士さんの力も借りながらボランティアを養成していきました。集まったボランティアさんには、東神戸病院と尼崎医療生協病院の病棟見学にも行っていただき、すでにボランティア活動を行っている方々から貴重なアドバイスもいただきました。ほぼ、全員が養成講座を卒業しそのまま開設後のボランティア活動に入ってもらうことが出来たのです。
3,病棟開設に向けた病棟職員集め
緩和ケア病棟は、閉鎖していた病棟を再開して作るため職員集めも大きな仕事でした。緩和ケアに興味がある看護師さんを組合員さんや業者からの紹介で集めていきました。他の病院で緩和ケア業務についており、緩和ケアの認定資格を持った看護師さんも採用することが出来て、看護師不足の大変な中なんとか病棟を開設するまでに漕ぎつけましたが最初からベットのフルオープンは出来なかったのが残念なことでした。
4,緩和ケア病棟の設計図づくり
当院の緩和ケア病棟は、これまでの病棟の設計をガラッと変えて「全室個室」を目指して取り組みました。みんなが集まってイベントや団らんが出来る中央スペースや、ゆったりお風呂に入れるように大きなお風呂、患者さんの家族が泊まることが出来る畳の部屋などをどのように配置して患者さんがゆったりとくつろいで過ごせるか、みんな頭を悩ませながら取り組んだことが思い出されます。
緩和ケア病棟の個室には、それぞれ旅館のように名前を付けようということになり「三つの輪」で公募を行いたくさんの応募をいただきました。最終的には、長田区在住の組合員さんが考えた「花の名前」を全室につけることになりました。後日、絵手紙が得意な組合員さんがそれぞれの部屋の花を描かれお部屋の名前の隣に飾ることができました。
東神戸病院や尼崎医療生協病院では「ボランティアルーム」がありボランティアさんが集まってわいわいと賑やかに過ごせるスペースに恵まれていましたが、当院ではそこまでのスペースが取れずにボランティアさんには申し訳なかったと反省です。
5,緩和ケア病棟について学び広める取り組み
緩和ケア病棟とは、どんな病棟か?また、緩和ケアとは何か?まだまだ知らない組合員さんが多かったため大きな会場での「緩和ケア公開講座」を2回行ないました。1回目は、安保博文先生(現六甲病院院長)に講演をしていただきました。地域に7700枚のビラを配布し、神戸新聞にも1万2千部の折り込みをしたおかげで参加者は予想以上に多く新長田勤労市民センター大会議室に約350名が参加し立ち見が出るほどの好評でした。また、当院の「緩和ケア病棟」を紹介するためのパンフレットも作成し、大量に地域に配布を行い医療生協ならではの緩和ケアの魅力を伝えていきました。
2014年10月19日には組合員53名、職員77名の計130名が参加し協同病院周辺の組合員訪問を通じて新しく出来る「緩和ケア病棟」について宣伝を行っています。1,669名を訪問し587名と対話をすることが出来ました。師長室では、カレーの炊き出しも行い参加者に好評でした。
6.職員に向けた緩和ケア学習会
緩和ケア病棟は、職員にとっても新しい取り組みで職員向けの学習会も3回講座で行いました。1回目は、関本雅子先生(現かえでホームケアクリニック顧問)に「在宅での緩和ケアと薬の使い方」、2回目は、辻本浩先生(現神鋼記念病院)に「緩和ケアに必要なせん妄の知識と対処法」、3回目は、安保博文先生に「緩和ケアにたずさわる医療者の姿勢」という内容で、職員も新しい緩和ケア病棟開設に向けた準備をしていきました。
7.担当者として思うこと
これまで閉鎖されていた病棟をなんとか再開させたいという神戸協同病院の職員の思いと、緩和ケア病棟を長田の地に開設して欲しいという地域・組合員の要望がうまくかみ合って成功させることが出来たと思います。病棟職員の確保、緩和ケア病棟の設計、ボランティアの養成、地域への宣伝、出資金あつめなど課題や苦労は多かったのですが、地域と職員が力を合わせて取り組んだことでやりきることが出来たと思います。神戸医療生協の新たな病棟として、今後も末永く存続して欲しいと願っています。
