私たちの病棟では季節ごとに看護師さんが手作りの作品を窓に貼ったり、ナースステーションに並べたりしてくれています

                                            

今は5月

窓ガラスに鯉のぼりが泳いでいます

そしてナースステーションの窓口には

かわいい鯉たちが目を引きます

                                              

ちなみに鯉のぼりにはいろいろな起源があるようですが

私は「みなさんが苦痛なく穏やかに過ごせますように」 との思いをこめたいです

                                               

                                              

                                           

※追記

前回のブログをアップしてから4か月が経ってしまいました

この間いろんな事情で載せることができずにきています

でもこれからも少しずつ緩和ケア病棟の日常をお知らせできればと考えています

                                              

下町の緩和ケア病棟(105)・・・3年(?)ぶりのクリスマス

コロナ禍で開けなかった緩和ケア病棟のクリスマス会

看護師さんたちの努力で実現しました!

事前に患者さんやご家族にお知らせをしました

看護師さんのかわいい手作りのプレゼントと、栄養科のみなさんによるクリスマスケーキ

そして

ちょっと睡眠不足のサンタです

さあ元気を出して患者さんのもとへ出発です

一人ひとりに手渡しながら

ご家族といっしょに笑顔のショット

スタッフも一緒に写りました

個人情報があるので残念ながら患者さんとご家族の笑顔は載せられませんでしたが、みなさんから普段とはちがう驚きや喜びの顔を見せていただくことができました

私は・・・

トナカイになってくれた看護学生さんとともに・・・

また来年もできればいいですね~

感銘を受けたことば・・・ある小説から

最近読んだ小説に感銘を受けています

緩和ケア病棟で働く看護師さんを中心とした様々な出来事

患者さんやご家族と向き合いながら最期の時まで寄り添い、多くの死を見送ってきた

著者の言葉で語られる物語を通して、緩和ケア病棟ってこんなところだったなあと振り返ることができました

物語そのものは小説を読んでいただくこととして(ぜひ読んでいただきたいです)、心に響いた言葉のいくつかを紹介します

◆久々に開催された一般病棟で働く看護師さん向けの緩和ケアの学習会で話しました

「病院で行われる治療は基本的に完治をゴールにしているが、緩和ケア病棟は完治や根治を目指した治療は行わない。だからこそ、ここでの治療に正解はない。常にその時点での最善を考える必要があり、それだけになにをするにも不安はつきまとう」

「ありがとう、と感謝されることもあれば、力になれず悔しい思いをしたこともあります。看取りって優しくて穏やかなものだけじゃないんですね」

◆2年ごとに開かれる看護師さんたちの集まりーー看護総会でのあいさつでも引用しました

「医師に比べると看護師は集団で患者さんに接するから、個人が目立つことはそれほど多くない。だからこそ自分の一挙手一投足は看護師という職業そのものへの信頼にかかわってくる」

「一人で抱えきれない感情をチームで分担する。そうでなければ仕事としての看護は成立しない」

「一人きりでずっと続けられることなんてないんです。どこかでだれかに頼ったり、任せたりしないと」

◆さらに別のところで書いた文章でも引用しました

「私は、言葉にしたことだけがその人の本心じゃないと思っています。表に出したこと、裏に秘めたこと、その両方を合わせないと」

ほかにももっとたくさんの珠玉の言葉たちがありました 直接目にしていただければと思います

もう来なくていい!!

 

Aさんのことを話します

 

70歳代のAさん

一人暮らしでご家族とは疎遠となり、連絡先もわからない状況です

 

10年ほど前に癌がみつかり手術

その後胸に再発し腫瘍がだんだんと大きくなってきました

同時に痛みが強くなり、私の外来に紹介がありました

そこからのお付き合いです

 

これまでも痛みの訴えがあるごとに医療用麻薬が増量され、かなりの量を飲まれていました

日に日に強くなる痛み

それまでは痛くても頑張ると通院していました(残念なことにその理由はわからないままでした)が、とうとう入院を希望されました

 

医療用麻薬は自己判断で増やしたり減らしたりしていることがわかりました

理由をたずねると

「もともと薬はきらいだった」

「麻薬を使うと頭がおかしくなると思っていた」

「ふらつきがつよくなった」

などと話されます

今までの医療用麻薬の説明が不十分だったのか、Aさんの理解が追い付いていなかったのか…

慎重に薬の調整をしていくように方針を立てました

 

しかし入院されたその日のこと

急に退院すると言われるのです

「しっくりこない」と言います

Aさんが考えていたことと、入院後の方針が「しっくりこない」と言うのです

「自分はそこまで重症とは思っていなかった」とも

 

看護師さんを交えて話し合いを持ちました

「動ける間は病院に通いたい」

「たくさんの薬を飲むと体がもっと悪くなってしまうんじゃないか」

「前の病院では麻薬は強い薬なのでこれ以上は出せませんと言われたのに、それからも薬が増えてきた」

「今まで先生たちは何一つ(わかるように)言ってくれなかった」

「(入院して病状が進行していると説明を聞いて)今まで自分が我慢し、頑張ってきたことに何の意味があったのだろう」

・・・突然号泣されました

さらに

「医者には見放された」

「これ以上の治療は痛い目をするだけなのであとは好きなことをすればいいと言われた」

「入院すればいいことはわかるけど、制限のあるような生活で最期を過ごしたくない」

ふらつきが強く、トイレなど動くときにはナースコールをお願いしていました

そのことも束縛感となっていたようです

話を聴いていると矛盾した内容もあるのですが、たとえ一人暮らしでも自分の家で自由に過ごしたい、まだ入院する時期ではなかった、入院は自分にはもったいないように感じるという気持ちを吐露されました

「動けなくなればそのときには病院にきます」

と話され、心配なことはたくさんありましたが退院はやむを得ないと判断しました

 

「ちゃんと病院には通います」とあいさつされ、帰っていかれました

 

その後毎週きちんと通ってこられました

 

数か月がたったとき

「息が苦しい、食事がとれない、痛みがひどくなってきた」

と、自ら入院を希望され再入院となりました

「こんどは言うことを聞きます、約束します」と明言されました

 

入院して1週間がたちました

 

「Aさんが急に退院すると興奮しています」と看護師さんからのコール

感染予防のための面会制限のことが我慢ならなかったようです

いま退院すると今度は簡単に入院できるかわからないと話してもそれでもいいと言います

「家で死ぬから」と持ち物を次々とまとめ始めています

ご家族とは連絡がとれないので知人に来てもらいました

それでも決意は固いです

退院はやむなしと今回も判断しましたが

前回よりもいっそう病状は進行しており

家の中を歩くことも困難であることは間違いありません

帰っても病院には来てほしいとお願いしましたが、まったく聞く耳を持たれません

 

往診で対応することにしました

Aさんにその考えを伝えると

「来なくてもいい、ひとりで家で最期を迎える」と淡々と告げられました

 

――そんなことを言われてもほっておくことはできない

Aさんが嫌がっても押しかけて行こう

と決めました

 

往診に行くと告げた日の朝

Aさんから「来なくていい」と電話がかかってきました

看護師さんが生活状況をたずねると

家の中を這って動いている

食事は友人に買ってきてもらう

とのこと

 

拒否されても行くことにしました

 

マンションに到着

鍵がかかっています

外からAさんに電話をかけました

最初は拒否していたAさんでしたが、何度も開けてほしいと声をかけると

ついにマンションの鍵が開きました!

 

診察し、薬の確認を行い

また来ますと言うと

「もう来なくていい」との返事

でも

「玄関は開けておいてね」と言うと

「はい」と返ってきました

転倒されたことも聞き

「そのようなときには訪問看護師さんを読んでね」

「わかった」との返事

 

――ほんとは不安で胸がいっぱいなんだろうな

嫌がられても次も往診をしようと看護師さんと確認をしました

 

2回目の往診

さらに動けなくなってきています

入院はやっぱりいやと決意は固そうです

 

ある日Aさんから連絡

全身の痛みが増強、動けなくなりました

救急車で来院してもらいました

 

まったく動くことができず

食事もとれていないためずいぶんと痩せてしまいました

 

以前のAさんとは異なり

いよいよのときが近いと感じられました

 

それから数日後

Aさんは静かに旅立たれました

 

お付き合いの期間はあまり長くなかったAさんですが

たくさんのことを学ばせていただいたように思います

 

1) 興奮している患者さんと向き合うとこちらも興奮しがちになります

私の悪い癖です

もっと冷静にならなければといつも反省をしています

患者さんが口にしたことだけが本心ではなく、その陰に隠れていることも合わせて聴かないといけません

そして説得ではなく納得が大切で、その納得のしかたも人により様々です

こちらだけの解釈に陥らず患者さんが何を言おうとされているのか、その時にどんな感情を持たれているのか

しっかりと受け止める努力を重ねたいものです

2)「不安はまだ起きていないことに対して抱く感情であり、その人が想像力のあることの
証拠」という話をある本で目にしました

長年のAさんの病気との闘い、様々な思いをもってきたことでしょう

矛盾をはらんだ話がでることは避けられないのかもしれません

私も目の前の患者さんにこれから起こることへの不安が湧いてくることが少なくありません

想像力を持って臨まないといけないです

 

3)最悪のことを想定して対応を考えておくこと

投げ出したくなっても患者さんに最後まで付き合うこと

できればそのために行動すること

―ぜひ心に留めておきたいと思います

嫌がられることがあっても「押しかけの往診」をする……

予約日の受診がなければ電話をし、時には家を訪ねてみる……など

記念行事・・・その2

 

<その2>ひまわり診療所 30周年

 

―――ひまわり診療所創立30周年を迎えて   (開設:1993年12月1日)

30周年おめでとうございます。

診療所の職員、地域の組合員の皆様、30年にわたる努力と奮闘に感謝いたします。

私は20周年のときに書いた挨拶をもう一度振り返ってみました。

開設をめぐって思い出すのは、医師集団と組合員さんたちとが熱い話し合いを持ったことです。組合員が望む医療内容や医師体制の現状など率直に話し合ったことです。

その中から所長候補が決まり、大きく広がった組合員運動を基礎にひまわり診療所が開設されました

私たちの力不足や複雑な医療状況を反映して今はこの時のような話し合いがなかなか持てないことが残念です。

第46回臨時総代会で建設が決まり、「組合員の医療と健康、くらしのセンター」として位置づけられました。

骨密度健診などの保健予防活動や院所利用委員会が活発に行われました。

ひまわり診療所のホームページの所長先生のあいさつには「地域に根差した診療所としてプライマリケアを実践すべく、地域の方たちのかかりつけ医をめざす」と書かれてあります。

ネット上での評判からも「安心できる地域のかかりつけ医」として信頼を得ていることがうかがわれます。

スタート時の姿勢がしっかりと根付き、発展しているのではないでしょうか。

今神戸医療生協を取り巻く情勢は厳しいものがあります。

ひまわり診療所と地域の組合員が、医療・経営、そして組合員運動の牽引車としてますます発展されることを期待して、ごあいさつとさせていただきます。

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