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おいしそうなケーキです

「パパおたんじょうびおめでとう」の文字

そして“8”の数字がふたつ

 

これは入院されている患者さんのご主人の誕生日をお祝いするケーキです

 

サプライズで準備しました! とご家族

私たちもお祝いに参加です

お父さんの驚く写真をと頼まれました

 

ご夫婦仲良く顔をくっつけて写真におさまります

ご家族もごいっしょに

 

残念ながら「顔出しはご法度」ということで、ケーキだけの登場です

 

患者さんは何度も悪くなられては持ち直されるという状態を繰り返しています

でも、この日はいつにも増して特別の笑顔でした

 

カルテから最近のご主人の言葉を拾い上げてみました

 

「結婚記念日に家族から写真を撮ってもらってうれしかった。記念日に離れて過ごすことは人生で初めてのこと。家にいても話し相手がいなくて寂しい」

「これまでの生活色々とあったけど、二人で相談しながらやってきました」

「ママは前向きの性格で、そのことに救われました」

「自分も年を取り、できないことが増えて息子たちに頼りっぱなしです」

・・・ご家族間ではメールでやり取りをされているとのことでした

 

―家族関係をしっかりと築いてこられ、患者さんのことも大切にされていることがひしひしと伝わってきました

でも寂しさもポリポツリと話されました―(臨床心理士の記録から)

 

・・・病状が悪くなってきたときの面談にて

「富士山で言うと5合目というところでしょうか?」

 

「寝ていることが多くなって、息の仕方もしんどそうです」

・・・そばにいていただくだけでも安心されてますよ(Ns)

 

患者さん「お父さんが優しいの…」

 

「今日はしんどいらしい。食事もあまり食べてくれない。家族には食べないと衰弱するだけだって言ってるんです」

「大丈夫かな?…心配だけど帰ります」

 

・・・一緒に食事をされている

パンやケーキ、卵豆腐、お寿司、果物 などいつも持ってこられます

 

「いつも朗らかな女性がこんなにしんどそうだったらびっくりします」

 

・・・息子さんたちのこと、政治のこと、奥様とのなれ初めのこと、子育てのこと……Nsにいっぱい話をされました

 

カルテにはこのほかにもご主人のことがたくさん記録されています

奥様のことを大切にされ、仲良く過ごされてきたんだなあとうらやましく思いました

 

バースデイの写真をもういちど見ました

おふたりの笑顔

大切にしていきます

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あるときひとりの医師と話をすることがありました

その医師は「ぼくは患者さんから無理に『したいことはないですか?』と聞きだしたり、それをなんとか叶えようと一生懸命にこだわることには反対なんです。きっとこのままそっとしておいてほしいと願っている患者さんもいるはずなんです」と言われました

 

「希望」とそれを支える「援助」

私もずっと考え、ときには現実とぶつかりながら悩んできたことです

 

「急な入院になってしまって、自宅でやり残したことがあります。家族のためにどうしてもやり遂げたいのです」

「入院して痛みは楽になりました。歩ける間に○○さんのコンサートに行きたい」

「娘の出産が近いのです。初孫の顔をみるまではこの世とさよならはできません」

など、ほんとになんとか実現できたらなあと思うことを話されることがたくさんあります

このような方々の希望を叶えるお手伝いはぜひとも必要です

 

一方では何を聞いてもこのままでいいんですとおっしゃる患者さんがいます

残された時間はそう長くないのに本当にそれでいいのかしらとみんなは思いますが、誰が聞いてもいつも同じ答えが返ってくるだけ

さいごにはうっとうしそうな顔をされることもあります

 

最近読んだ本につぎのような文章がありました

勝手に引用させていただきます

 

“「無力でかわいそうな患者さんに、健康で力のある私たち医療者が何かできることをしてあげる」ことだけが希望を叶えることだと勘違いしてはいけません。「何かしたいこと」を考える余裕もなく、ただ今このときを生きることだけで精一杯の患者さんにとっては、とにかく目の前の苦痛がこれ以上悪くならず、「今」の時間を過ごせることが一番の希望という方もいるのです。何か新しいものを手に入れることや、やり残したことをやり遂げること、生きている時間を延ばすといった「手に入れる」系のことだけが希望を叶えることなのではなく、いまその人の手の中にある小さな希望が失われないようにすることだって、れっきとした「希望を叶えること」なのです” (西 智弘 医師)

 

重い文章です

 

持ち時間がわずかであることを告げること

しておきたいことは何かないですか と聞き出すこと

病状が悪化して入院してこられ、やっとコントロールができた患者さん

今から苦痛が強くなることが確実に予測される患者さん

やっとこの病院にたどり着いた患者さん

に、短いお付き合いの中でどこまでお話ができるのか……

 

縁があり緩和ケアの世界に飛び込んで、目の前に出現した悩みのひとつです

最大の悩みといってもいいくらいです

 

患者さんにとってみれば、言いたいことがあっても言い出せないことは少なくないでしょう

「こんなこといってもいいんだろうか」

「きっとむりだろうな」

「みんなにめいわくをかけるから」

「じぶんががまんすればいいんだ」

などなど、様々な思いがあることでしょう

 

あるスタッフは

「そのために緩和ケア病棟ではたっぷりと時間があるんだよ」

と言いました

ある人は

「とても話ができなくて…」

とも言っていました

 

何がよくて、何がわるいということではなく

こうするべきだ、こうしないといけない でもなくて

毎日、毎日考えながら、悩みながら、相談しながら、目の前の患者さんの人生とお付き合いしていくことだと今は思っています

「先生たちぜったいに来てよ!」

という声に甘えておじゃましました

とてもよく晴れた暑い一日でした

 

Aさんは初老の男性

私たちのところに来られたときには痛みのためにあまり動くことができませんでした

入院後しだいに痛みが落ち着き、座りたい、立ちたい、歩きたい…

の想いが強くなってきました

 

リハビリスタッフの出番です

毎日意欲的に頑張ります

 

Aさんはとてもさみしがり屋さん

面会のご家族が帰られるときには涙を流されます

病棟のスタッフの手を離しません

みんなからはとても大事にされていました

 

そんなある日のこと

ご家族から家でバーベキューをしたい!! とのご希望

大賛成です

 

Aさんから私たちにお誘いがあったのはそんないきさつがありました

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これがそのときのスナップ写真

食欲旺盛でした

 

照りつける太陽

バーベキューの火

(熱中症にならないかな)

みんな汗を流しながらもとてもいい笑顔です

 

お孫さんたちも全員集まり、なんとご家族総勢19人!

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…じつは私たちも参加させていただいたのです

 

奥様とツーショットで頬を寄せ合った写真もありますが、そこは個人情報

残念ですがここには掲載をひかえさせていただきます

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とっても仲のいいご家族でした

Aさんが病室でのひとりをさみしがられるものよくわかりました

 

うらやましいご一家です

もっともっとこのような機会がもてればいいですね

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病棟のベランダにひまわりの花が咲きました

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職員が苗を植え、ボランティアさんたちがせっせと水やりをしながらみんなで育ててくれました

「あっ、ひまわりが咲いたね!」

と患者さん

職員の顔もほころびます

お花の力っておおきいですね

むかしある先輩から教えてもらいました

ひまわりの花言葉は “わたしはあなただけをみつめる” だそうです

太陽のある方向を追いかけることからきたとのことです

梅雨の時期、ひまわりたちはどちらの方向を向くのでしょう?

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この写真を見るとあっちこっちを目指しているようです…

「心ここにあらずかな、自分のように…」などと勝手なことを思ってしまうのは、湿気と暑さで頭が参っているためでしょうか?

睡眠を十分にとって、しっかりと食べて、頑張ります

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医師二人体制となったおかげで念願の日本緩和医療学会学術大会(京都)に参加することができました

これまで自分が所属していた学会とは異なり、初めての分野の雰囲気に呑まれてしまったようです

参加者は8000人(!)と聞きました

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会場は京都の「北北東」の方向だそうです

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ロビーの案内図   広い会場が参加者でごった返していました

希望のセッションの席をとるのに一生懸命になりました

昼の“ランチョンセミナー”はあっという間に申し込みが終了(!)

2日目にはなんとか入り込めました

 

内容に関してはここで解説するまでもないと思います

どのシンポジウムも講演も発表も刺激的でした

 

当日は頭の中がいっぱいで帰りの電車はずっと寝ていましたが、数日後にはリアルに思い出します

 

とくにあるMSWさんの報告は圧巻でした

認知症のある終末期の癌患者さんを地域で支えた報告でした

参加者も座長もしばらく声を出せません

まわりの多くの人が目頭を押さえていました

 

とても感動的でしたので、後日発表された方に連絡を取らせていただきました

 

私たちはやっと1年が過ぎましたが、これから他の人たちに感動を伝えられるような実践や経験を重ねていきたいものです

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